懐かしさと口惜しさと優しさの狭間:映画 ラストレター
映画に限らず,お涙頂戴物のストーリーってパターンがあるじゃないですか.
大抵は大切なものを失う.それも恋人であったり夫/妻であったり子供であったりのバリエーションはあるけど,最愛の人を失うのが定番.単に離れる『愛別離苦』ではなく,事故や病気でのインパクトのある死別が主流.あとはストーリーの幹に枝葉を付けるために『いかに失う者が主人公にとって愛情の対象であったか』を描き込んで感情移入を誘い,そして失ったときに激情を引き出す.そして如何に大切な存在であったかを誰かに語らせて更に追い打ちをかける.場合によっては,失った後から『こんな物が出てきました』とばかりに愛情の深さを知るエピソードを追加したりしながら.そしていきなり失う場合もあれば,分かっている終末がジワジワと近付いてきていることを感じさせ,徐々に感情を高ぶらせて最後に畳みかける場合もある.
なんて書いているとあまりにも単純だけど,実際に感極まるパターンって誰でも同じなんですよ.実際,大抵の人は『過去の悲しい出来事は?』と問われたら,仲の良かった人や愛する人との別れでしょうしね.
そして今回紹介する『Last Letter』(公式)なんですが,昨年劇場で予告を観たときに,『これは良い映画だ.観なきゃ』って直感があったんですよ.そして封切りを楽しみにしてました.何と言ってもその映像美,そして演技派の女優・俳優陣.私はあまり監督では観る映画を選ばないのですが,私の好きな邦画の一つである『Love Letter』の岩井俊二監督の作品の場合はちょっと違います.
そして何よりも感じたのは,単なる『愛する者を失った喪失感』がメインテーマではないなという感覚です.
仕事の合間を縫って18日に観てきたのですが,その予感は正しかった.邦画の底力を感じる実に素晴らしい作品でした.そして前述のような単純な話を表面的に追った話ではなくて,もっと複数の感情が複雑に絡み合った味わい深い作品でした.タイトルに挙げたような,懐かしさと口惜しさ,そして優しさ etc…etc….
良い作品なのでもっと多くの人に観てもらいたいという気持ちを込め,公式で公開されている以上のネタバレを避けながら少し紹介してみます.
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