無音,ハイパフォーマンスなミニPCをLinuxサーバにする:CHUWI HeroBox(1)
皆様,今年の夏休み/盆休みは如何だったでしょうか.そして暑い中,お仕事を頑張っておられた方,お疲れ様でした.
私はというと本来の休みの半分くらいは仕事でバタバタしていましたが,それでも連続でゆっくり休めたのは久しぶり.本当は実家に帰省したかったのですが,コロナ禍かつ過去最大の第七波の真っ最中にというのはリスクが高いと考えて断念.都会住まいではないけど,普段あまり出歩いていないにも関わらずcocoalog.jp で見るとかなり感染した人とニアミスする頻度が増えているなぁと実感しています.早く6月の頃の水準にまで落ちてきて欲しいですね….
で,今回も『少し時間が取れると突発的に何事か発生し,空いた時間が吸い取られる』という法則が発動し,夏休みの宿題は家庭内サーバのリプレースと相成りました.ただ,結果的に素晴らしい環境が手に入ったので大満足です.得た環境の特徴を列挙すると,
- Windowsとして普通に使え,Linuxも苦労なくインストール出来る
- パフォーマンスも良好で,普通にサクサク使える
- オールインワンで小型軽量のミニPCに全てが詰まってる
- ポート類が豊富で外部拡張が可能
- M.2のSSDのほかに2.5inch HDD/SSDを追加でインストール可能
- ファンレスで静音ではなく無音
- 低消費電力でPoEでも使える
- 価格も安く,拡張しなければ約2万円でフルセット
です.
半月前まではリビングの片隅でブンブンとファンの音を鳴らしていたミニタワーのPCが無くなり,現在はテレビラック裏のワイヤーネットに一式がぶら下がっています.
そんなわけで,CHUWI HeroBoxを使用した家庭内Linuxサーバは中々に快適だったのでレビューしてみます.Officeくらいであればサクサク動くので,WindowsのままでデスクトップPCと使うのもアリかもです.
今年は身の回りのPCの更新時期のようで,一発目は12年選手(!!)のPhenomeII X6 1090T BEマシンが不調になったため,Ryzen5 5600Gベースのマシンにリプレースしました.あまり性能が求められることには使用していなかったため『安定して動けば良い』という感じの落ち着いたスペックにしました.しかしベンチマーク的には3~5倍の性能アップ.更にはストレージの SATA HDDをNVMe PCI Gen4x3 SSDへの変更したため,異世界転移したような快適さです.
その結果使用用途が多様になり,そして使用頻度もアップ.更には,(ジョブを流すために)ほぼ24時間つけっぱで動かしているのですが家の使用電力量が目に見えて下がりました.CPU単体の最大消費電力だけ見ても,130Wから44Wというように1/3になっています.数字で示すと約50kWh/monthほど使用電力量がコンスタントに下がりました.節電,節電♪
このほか,13年選手(!!)のExpress5800 S70FLも先日死にました.正確にはブートディスクが死んだのだけど,他にも色々とガタが来ていたため,ディスク交換をせずにリプレースすることにしました.
このマシン,ファンやディスク交換などのメンテを行いつつ家庭内サーバとして24時間&13年間ずっと稼働していました.用途としてはファイルサーバをはじめとした諸々のサービス,そして外部から家の中のネットワークにアクセスするためのVPNサーバ等を担っていました.日常的に使用していたので,無くなると辛い.そんなわけで,代替環境を急いで立ち上げることに.
前フリが長くなってしまいましたが,今回使用したHeroBoxの主なスペックを見るとこんな感じ.
- CPU:Celeron J4125 (4 core/4 thread 2GHz TDP 10W, バースト時2.7GHz)
- Mem: LPDDR4 8GB(4GB*2)
- Storage:M.2 SSD 256GB(Windows10インストール済.交換可能),2.5inch用空きベイ*1
- Port(Front): USB Type-C*1,USB 3.0*2,MicroSD
- Port(Rear): VGA(D-SUB),HDMI(4K/60Hz可),1GbE(RJ45) *1,USB2.0*2, HeadPhone
- Wireless:WiFi(802.11ac),bluetooth (4.2?)
- Size,Weight: 18.7 x 13.8 x 3.7 cm; 580 g
Express5800が壊れた直後は,ネットワーク周りをラズパイで…と,一瞬考えました.しかし汎用性や安定性,そして費用を考えると圧倒的にHeroBoxに軍配が上がります.なお,私が調達したときの価格はセール中で2万円を少し切っていましたが,現在('22/8) Amazonで4千円クーボン利用で21,500円也.相変わらずのお得感.
あとWindowsで使用する人は『えーっCeleron?』と,思うかもしれませんが,CPU性能的にはCore i5 4200Mと同等で,GraphicsはUHD Graphics 600です.そのためOffice系のアプリを使うには十分な一方で,3Dグリグリのゲームはキツイという感じ.欲を言うとメモリが16GBあれば完璧ですが,ディスクがSSD環境であればメモリ8GBでもまぁ問題ないでしょう.
と,いうことで,CHUWIのHeroBox開封の儀.
化粧箱はともて綺麗かつシッカリしていて,5~7万円のPCが入っていても違和感がない感じ.また,箱のPreloaded OSの欄にWindowsだけでなくLinuxもあることから,監視/FA用にLinuxモデルがあるのかも.
ではいざ,御開帳.
全部組み上がった状態の本体,ACアダプタ,マニュアル,Product Inspection Report(製品検査報告書),VESA固定用のステートネジが入っています.つまりマウスとキーボーぢ,それとモニタを用意すれば,普通にWindowsを使い始めることが出来ます.
VESAマウント用のステーとネジ.
本体裏側に引っ掛ける用の穴が空いており…
こんな感じにステーを付けて固定します.本体が軽いので,強度的に固定はこれで十分です.
そしてマニュアルは多言語表記.日本語もあります.
マニュアル抜粋1.
マニュアル抜粋2.
マニュアル抜粋3.分解・ストレージの取り付け方法について.
マニュアル抜粋4.
ACアダプタはかなり小型です.
ACアダプタのプラグは可倒式.PC本体が小型軽量のため,モバイル/ポータブルPC的に持ち運びを考慮されているのかも.
入力100~240Vのワールドワイド対応,そして出力は12Vの3Aで36W.
デスクトップPCとしてみたらメチャクチャ消費電力が小さいけど,ノートPCとして見たとしても小さい方(バッテリチャージに回る電力が不要なので有利だけど).
本体のアップ.樹脂製で,僅かに中央部分が凸になっています.そして四周にはグルリと放熱用の穴が空いています.
フロント側.右から電源ボタン,microUSBのスロット,USB3.0のポート*2,Type-C*1.
最近はスマホをはじめとする様々な機器がType-Cになりつつありますし,Type-Cがあると嬉しい人が多いのでは.
両サイドには何もありません.
そしてリア側には右からヘッドホン端子,USB2.0*2,1GbEのポート,HDMI(4K/60Hz対応),VGA,電源コネクタ,リセットボタンです.VGAとHDMIを併用してのデュアルモニタ出力も可.VGAよりもDP等の端子のほうがイマドキで便利だけど,少し古いシステムやFA用等はVGAの物がまだ現役で多いので,意図的にVGAを積んでる感じかな.
分解してストレージを取り付ける
多くの人はここでモニタ・キーボード・マウス・ACアダプタを接続して電源を入れ,そのままWindows10を立ち上げてセットアップに進むと思います.しかし私は『Linuxを入れたいんだ!それもストレージを交換+増設して!』ということで,一度も通電せずに分解に進みます(初期不良を引く可能性もあるので,良い子は真似しないように).
まずは本体裏側のQCのシールを外して…
隠しネジを露出させます.
裏蓋は6箇所のネジを外せば取り外せます.
裏蓋を外すと2.5inchディスク用の空きベイがコンニチワ.
ディスクを増設するのであれば分解はここまででOKです.SATAのコネクタも露出していますので,SSDやHDDをスライドしてはめ込むだけです.SSDであれば軽い&振動に強いので,両サイドのステーにネジ止めすら必要ないでしょう.
私は元々入っている256GBのM.2 SSDも交換するため,更に分解を進めます.
この状態で4箇所のネジを外します.
するとカポッと隠しベイを兼ねる蓋が上に抜けます.SATAのコネクタを破損しないように外してください.
マザーボードが露出します.
本当はこちら側にM.2スロットがあれば良かったのですが,反対側のようです.
コネクタ横にあるネジを4箇所外し…
マザーボードを少しズラします.
筐体にアンテナが取り付けられており,その基盤からの配線がマザーボードに接続されているため,この配線を切らないように慎重に持ち上げて基盤をひっくり返して下さい.
マザーボードの大部分を埋め尽くす巨大なアルミ製ヒートシンクが出てきました.これはデカい.あと,謳い文句通りファンレスであることも確認できました.ノートPC用のTDP 10WのCPUであれば,この巨大なヒートシンクと自然対流で放熱の問題ないのでしょう.
あと,メモリも増設できるのかな…と,思ったけれど,この感じだとメモリスロットは無く,基盤にチップ直付けな感じですな.ヒートシンクを外すのは手間なので開腹はここまで.あと,目当てのM.2スロットは下の写真で言うとヒートシンク左側にあります.
22年8月に調達したこの個体の製造は21年12月の模様.
コネクタのアースはこんな感じで導電テープでヒートシンクにも接続されてます.
さて,お目当てのM.2 SSD.NetacのM.2 2280サイズの256GBです.NVMeではなくSATA.
M2のネジを回して外します.
外れました…が…ん?
スペーサーまで一緒に付いてきてしまったようです.
スペーサーとネジをバラしておきます.
そして今回M.2 SSD交換用に用意したのは,WDのWDS200T1R0B.SATA接続の2TB(写真下側)です.本当はRedでなくBlueのWDS200T2B0Bをと思っていたのだけど,品切れ&マケプレだとあまり値段が変わらないのでRedを選択しました.
ファイルを抱え込まずに軽作業をするだけであれば,元々取り付けられていた256GBでも問題ないと思います.ただ,ちょっとしたファイルサーバ/メディアサーバ的に使うのであれば,ストレージの大きさは大きければ大きいほど良いです.バックアップの問題やコストの問題との問題とのトレードオフにもなるけど,私の場合は在宅作業にも使うので大きめに.
SSDの値下がりが足踏み状態で悩ましいのですが,普通の作業のみの人でも1TBくらいはあった方が長期的に快適に使えるんじゃないかな.
で,先程外れてしまったスペーサーを取り付け…
新しいM.2 SSDをスロットに挿して…
ネジ止めして取り付け完了.
後は分解と逆の手順で組み上げていきます.
ついでに(笑),余っていた2.5inch 2TB SSDを空きベイに取り付け.
ちなみにこのベイですが,8mmくらいの厚さまでのドライブなら取り付けできそうです.そのため,WD製の2.5inch HDD 4TB (価格的には,WD純正USBドライブを殻割りして取り出したほうが良さそう)は厚みが15mmのため取り付け不可.コスト容量比的にはHDDの方がまだ圧倒的にアドバージがあるので残念.
裏蓋の6箇所のネジを取り付けて完成.
Linuxのインストール
次にLinuxのインストールですが,今回はubuntuをインストールすることにしました.
以前であればCentOS一択でしたが,亡くなっちゃったので.心の声を正直に書くと,『ちょっと,勘弁してくれよ』という感じ.『同じLinuxじゃん』と,言う人も居ると思うけど,RedHat系とubuntuは管理ファイルの位置などが全く異なっていて,管理系のお作法がぜんぜん違ったりするので環境が変わると様々なオペレーションでかなり混乱します.
まぁ今更言っても仕方ないんですけどね.RedHat系でフリーであったCentOSは人気のあったディストリビューションなので,私以外にも頭を抱えてしまった人は多いんじゃないかな.
あとubuntuにした理由は,'22年5月調査でLinuxディストリビューション中のシェアが34%と最も高かったし将来性に不安は少ないだろうということ(それにしても,この調査でOtherが39%って凄いね).それとWindows上でubuntuを使い始めたから.
『Windows上でubuntuを使い始めたから』を補足すると,wsl(Windows Subsystem for Linux)がすごく使いやすく進化してて,windows上のコマンドプロンプト(PowerShell)でMS謹製のwsl2をインストールすると,ubuntuをサクッとインストールできて仮想環境が簡単に作れます.そしてext3等の従来Windowsで直接マウントできなかったパーティションも,wsl2環境のubuntuからマウント出来,そしてNASをnfsマウントも出来るため,これまで使っていたLinuxBoxで使用していたHDDからのデータのサルベージに大活躍でした.emacsを立ち上げたらコンソールモードもX-windowモードも立ち上げられるし…ホント,良い時代になったものです…閑話休題.
で,ubuntuのインストール方法ですが,USBメモリを用意してwindows環境で以下の作業をします.
- 日本語Remixのダウンロードサイトから最新版のisoイメージをダウンロード(私はubuntu-ja-22.04-desktop-amd64.isoを使用)
- rufusをダウンロードして実行し,上記イメージファイルを選択してインストール用のブータブルUSBメモリを作成する
後は作成したUSBメモリをHeroBoxに接続して電源を入れ,諸々質問に答えてインストールを進めるだけ.desktopをインストールするとGUIベースの『Windowsのような』環境が自動的に立ち上がるようになりますが,私はサーバ用途で使用するためにGUIが不要なので,CUIで起動するように設定変更.次のようにプロンプトが出る状態にしてインストール完了.
まとめ
想像以上にアッサリと諸々進み過ぎ怖くなるほどでした.昔であれば『○○のデバイスが認識されない!!』のような事が日常茶飯事だったLinuxのインストールも,NICも含めて全てのデバイスが普通に認識されて使える状態になりました.
先日Intel のGen11以降のCPUベースのマシンにWin10/11をインストールようとしたときの方がハマりまくった…のは別の話ですな(Intel RSTドライバとかVDMドライバとかの話).
あと,ネット上では『HeroBoxのM.2は1TBまで,空きベイのSSDは2TBまで』という情報もあったけど,M.2で2TBがきちんと認識されて使えています.
そんなわけで,Linux立ち上げまでアッサリ進みましたが,この後設定について少しだけ記事を書こうと思います.ご興味をお持ちの方はもう少しお付き合いのほどを.
それにしても,TBオーダーのファイルサーバ・メディアサーバ兼VPN等のNWサービスを兼ねたサーバを格安で構築でき,そして24時間無音でテレビラックの裏側のワイヤーネットにぶら下がって動き続けられるというのは良い時代になったものです.冒頭にも書きましたが,リビングの片隅でブンブンとファンの音を鳴らしていたミニタワーのPCが無くなり,ファンレスのHeroBoxが動いているのみになりました.夜寝る際に部屋の電気を消すと,リビングには静寂が訪れるようになりました.とても新鮮な感覚です….
と,いうことで,CHUWI HeroBox 超オススメです.
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