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2021年7月26日 (月)

危うい状況を脱するための蜘蛛の糸&転ばぬ先の杖:『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』

すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』と『ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』という2冊の新書が人気です.ネット上では,夏に読む本/(もう過ぎてしまったけど)7月の4連休で読む本として2冊セットで購入されていた方が多いようですね.私はというと,kindleで予約していために連休初日の日付が変わったタイミングで自動配信.kindle様々です.

そして以前こちらにも書いた通り,電子版で読んでみて良かった本は,紙でも購入することが多いです.今回も1周目の読了後に前者の紙の本を買いに走りました.しかし私の普段行っている書店には店頭在庫が無く,27日に配本される予定だが在庫が少なくなってますとのことで,まだ入手出来ていません.更には,後者は在庫切れだそうで.うーん.人気ですね.kindleの新刊でのランキングでも,両書共に1ページ目の中盤くらい(10~20位)に入ってますし,紙の本を買えなかった方がkindleに流れているというのもあるのでしょうね.

それでは,レビューで書き切れなかったことや書けなかったことがあるので,本書の紹介がてらこちらに書きましょうかね.

始めに断っておきますが,本書はかなり骨太な本です.

眺めてワクワクするようなキラキラノートを作るための本ではありませんし,成功者が『ワシの成功の原動力になったノートの書き方を見せて進ぜよう,オヌシの成功のために』的な本でもありません.ライトなハウツー本ではありませんし,どちらかと言うと難儀な本(←褒め言葉)です.ただ,平易な文章で書かれているため,難解な本ではないです.

要は,簡単に読み進めることが出来るけど,読み込むためにはかなり自分で考えないといけないという意味です.楽しいよね,こういう書籍.

例えば,本書でも最近流行の『ハビットトラッカー』が採り上げられています.普通であれば,やり方を教えてサンプルの画面を示し,それでお仕舞い.まぁあまり深く考えなくても実際に使うとそれなりに成果も出る手軽なツールではありますが,本書の場合はそれでは終わりません.『結果が出せたらええやん』では終わらないんです.

この流れを意訳も含めて詳しく紹介すると,ハビットトラッカーは記録を残すために行うもので,それも一回行われる行為を管理する.そしてそれを束ねて可視化することにより,進捗感をもたらす.これがリマインダーにもなり,アクションを繰り返し行えるようになって習慣化する.そしてハビットトラッカーはログとも言える.ログを取る場合,どんな単位・粒度が良いのだろうか考えてみよう.そしてログが好ましく変化しているように感じられるようになったら,コントロール感も得られる.更には,進捗感もコントロール感も(見直しによる)フィードバックの結果だよね.じゃぁフィードバックは… のような感じで終わりがないんです.

これを無限地獄と捉えるか,永遠に終わらない思考の旅と考えるかは,人によるかも.私は後者で楽しめた(笑).その一方で,手っ取り早く結論が欲しい人には少々キツイかもしれません.倉下氏の以前の著作の,『Evernote豆技50選』と対極のポジショニング.商業的には,キャッチーでライトな方がウケるんでしょうけど,今回の初動を見ると結果も出でいるようなので,嬉しい限り.

なお一応誤解のないように書いておきますと,一つ一つの話は発散したり収束したりしつつ,それぞれの章でまとめられており,一応の着地点が用意されています.『一応の』と書いたのは,著者は読者がそこで立ち止まらずに自分で考えて更に思索を深めることを望んでいるのだろうな…と感じたから.

と,ここまで読んで,難しそうな本に思われたら申し訳ない.ちょっと腰が引けてしまった方は,著者の倉下氏のブログに目次が掲載されている目次を見てみて下さい.ピピッと来た方は買って読んでみて下さい.その直感は正解です.絶対に読めば役に立ちます.

あと個人的には,目次は(出版社の方が/方の許可を得てどなたかが)テキストで置かれた方が良いかもと思いました.検索エンジンにキーワードを拾ってもらえるようになるので,より多く&より長期間人の目に触れることになると思います.本書のタイトルからこのページを介して内容/目次に辿り着く人以上に,内容/目次のキーワードから本書に辿り着く人が居るような気がしますので…閑話休題.

それと本書を読む場合は,手元にメモ帳か何かを置きながら読む方が良いと思います.『これは良い指摘』とか『私はこう思うけど』的なメモを短い文やキーワードで読みながら書いていたのですが,読み終わったときに気が付いたら4千文字程に(驚愕).これに肉付けをしてブログに書こうものなら,誰も最後まで辿り着けないような凄まじい長文になりそうなので,やめときます(笑).まぁそれくらい刺激的だし受け身になれない書籍だということです.

 

で,そのメモの中で1つだけここに書き残しておきたいなと思ったのは,認知心理学的な実験をして検証すると,興味深い結果になるのではということ.例えば忘却させる期間,マルチ/デュアルタスク,タスクの数を要因として,被験者に様々なプライオリティのタスクをランダムに多数与えて負荷をかけ,リストを作る場合と作らない場合でどのくらいの差が出るか検証するとリストの劇的な有効性が示されるのではないかなと言うこと.

仮説としては,負荷がワーキングメモリの容量と比べてある程度大きい場合,または忘却してしまうようなスパンの負荷が含まれている場合,圧倒的にリストを作った方がパフォーマンスが良い(抜けが少なく,かつ,タスクスイッチの負荷も軽く,短時間で多くの処理が終わる)よねという結果になると思う.経験的には皆そう思っていると思うけど,統制した実験をして有意差を示して科学的に証明し,色々と積み上げることが大事なんですよ.既に誰かが実験していて既に報告しているかもしれないけれどね.

と,そんな実験計画をイメージしつつ,もし倉下氏が心理学的な切り口で梅棹氏の『知的生産の技術』の発展させ,大学で教鞭を執りながら若い人達を洗脳教育するような状況が実現したら良いな…と,(私も)思った.

***

そしてここからは,タイトルに関連付く若干教訓的な話.

私もそういう人がいることは何となく分かっていたけど,思ったよりも遙かに多いのだということに衝撃を受けたことがあります.何にショックを受けたかというと,記録をほぼ全く取らずに仕事をする人がいること.言い換えると,ほぼ全てを記憶に頼って日々生活し,仕事をこなしている人達です.

仕事の進め方と能力は完全には対応しません.そのため,記録を取らずに仕事を進める人でも能力が非常に高い人がおり,更には一定の割合で記憶力が高く,そして人並み以上に成果を出せる人がいます.しかし記憶を頼りに日々生きている人は非常に危うくて,処理しなければならない量が自身のキャパを瞬間的にでもオーバーフローした瞬間に全て破綻したり,加齢などで記憶力が衰えてくると仕事の抜けや漏れが非常に激しくなって失敗が多くなる.更にはこんな状況に陥った際に,能力が高く仕事が出来る人ほど『俺はもっと出来る筈だ』ということで現実とのギャップに苦悩する.

これら問題は『記録を取る』や『タスクリストを作る』で簡単に回避出来ることが多いのですが,そういった習慣がない人から見たら『何をどうやって解決すれば良いか分からない』と,パニックになったりもします.目の前で何度そんなシチュエーションを見てきたことか….小さな所では,クリティカルな状況に陥る可能性がある作業をする場合,箇条書きでもよいので,予め『手順書』を作っておきましょうね.パニクると,『○になったら△すれば良い』といった記憶が全部飛びます.

で,あなたが管理職で,結果を出しているからということで,安心して部下に仕事を任せていたとします.しかし,そこには大きな落とし穴があります.結果や成果だけでなく,部下の仕事のやり方・進め方も見ないと危険です.更には,仕事が出来る人には仕事が集まるし,成果を出せる人は次第に責任の重い仕事を引き受けるようになりつつ年齢も役職も上がっていくわけです.そんな中,急に『あ!』なんてことになったら,取り返しの付かないことになったりするわけです.まぁある程度偉くなっていたら,組織や下の人が支えるのでしょうけれども.

私の周りで起きた深刻な例では,優秀な方なのですが『そんな(タスクリストを作って仕事をするなんて)教育を受けて来ていないから分からない』とまで言われました.そのときは,直感的・簡単に使えて導入しやすいtodoistを使ってもらうことによって初期消火出来ました.そして個人単位ではなく,関係者でtodoistのプロジェクトを共有することにより,抜けや漏れ,ハマっていることが無いか等をお互いに見られるような構造にしました.あとは習慣化して仕組みとしてうまく回ってくれたら良いなと思っていますが,今の所上手く行っているみたいです.

と,いうことで,『俺はノートなんて取らなくても,自分の頭の中だけで完璧に管理出来てるし仕事も出来るし』なんて思っている人がいたら,いつかとんでもなく深い落とし穴にはまるかもしれないことを忘れないで下さい.その危険性に気付いていないとしたら,非常に危うい状態です.そんな方には,『ノート(=記録)』ということを包括的に考える本書は特効薬になるかもしれません.蜘蛛の糸を掴むかどうかは,読み手次第だとは思いますが….

と,いうことで,最後は少し重い話になりましたが,『ノート』や『記録』にあまり関心を持っていない人にこそ,本書を読んで欲しいと切に願っています.『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』,転ばぬ先の杖としても,本気でオススメです.

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