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2020年4月14日 (火)

今このような状況だから読んでおきたい本:失敗の本質

4月と言えば新入社員,新入生,桜だ花見だ宴会だ,ちょっとバテてもゴールデンウィークの連休に突入出来るという感じで明るい春を満喫できるシーズンな筈だったのに,新型コロナ感染症の影響で想像を絶する状況になってしまったのは皆様ご存じの通り.そしてこれを読まれている方も,日々様々な影響を受けていることと思います.

既に巷には多くの情報が溢れかえっていますが,改めて情報を整理してみたいという方は,日本医事新報社の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察』を御一読下さい.とても分かりやすくまとめられており,読んでいると知識がスルスルと染み渡るのを感じます.

さて今回,タイトルの内容に関して少し書こうと思ったのは,滑稽な程に本書の内容が再現されているからです.『またか』という感じです.

 

失敗学から見る「お前は既に死んでいる」

この話は何度か書いた覚えがあるのだけど,世の中には『失敗学』というものがあります.

成功者が『オレはこのように成功した』のような成功談をし,それを聞いた人が同じように行動しても大抵は上手く行きません.その一方で,『こうしたら失敗した』は同じように行動すると大抵は失敗する.そのため,失敗の原因を究明し防止策を考え,その防止策を広めるという学問があります.それが『失敗学』.より広義に捉え,失敗の事例を集めて典型的なパターンを考え,そのパターンを回避することにより『失敗しないようにする』というアプローチもあります.

今のご時世では少々不謹慎な見出しですが,北斗の拳というマンガをご存じでしょうか.

マッドマックスのような世紀末世界が舞台で,北斗神拳の継承者,ケンシロウが秘孔(凄まじい効果を発揮する『ツボ』のようなものですな)を突くと,少し時間が経った後に極悪非道な敵が『ヒデブ』とか言って爆裂四散します.そして秘孔の効果が出るまでのタイムラグ中に,敵は『(突きが)痛くも痒くも無いぜ』的なことを言います.そしてそれに対してケンシロウが,『お前は既に(決死の秘孔を突いた後だから)死んでいる』と言うわけです.

例えが脱線気味,かつ,分かる人にしか分からないネタで恐縮です.要は不可避な結果となる原因を仕込まれていても,局所的な途中の推移からは結末が理解出来ない『人/場合』が『いる/ある』ということです.

日本の組織の典型的な失敗パターンを研究した報告や著書は沢山ありますが,おそらく一番有名なのは,『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』という書籍でしょう.

決してこの本は軍事・戦史本ではなく,組織における意思決定の過程を研究した書籍です.『太平洋戦争』という国家存亡をかけて闘った,間違いを犯せない意思決定を積み上げなければならない状況に於いて,日本の軍事組織は如何に考え,動き,そして失敗したかを研究しています.『良い悪い』やイデオロギーは抜きで,純粋に学術的な視点,すなわち事実を積み上げ,それに対して客観的な視点で論を組み立てている素晴らしい本です.ハードカバー,文庫,kindle…私はだいぶお布施しました.

現在の状況も,戦争に例えられています.世界規模でのウイルスとの戦争です.そして負けるわけにはいかない.しかし,日本の政治的な方針やスピード感には多くの人が疑問を呈している.最近は特に,東京都と政府の方針の違いに注目が集まっているように感じます.

そう言えば…と,いうことで読み返してみたのですが,前出の『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』は小池都知事の愛読書であり,そして帯に推薦文まで寄せていました.引用するとこんな感じ.

何をどうやって間違ったかっていうことは、

だいたい失敗に共通することで

要は「楽観主義」、「縦割り」、「兵力の逐次投入」

とかですね

  -- 東京都知事 小池百合子

これまでの経緯,そして今の状況も正にそんな感じ.

当初は『大丈夫』と言っていて,大丈夫でなくなってから慌てて対応したり,監督省庁によって向いている方向が異なるように見えたし,最初に強いアクションを起こさず,状況悪化に伴って少しずつ強い内容にして行っている.

先日,モーニングショーの録画を早送りで観ていたとき,国の休業要請に関して『携帯会社提供の人の移動データを見ながら(効果測定のために)2週間様子を見る』と田崎氏が言った際に,玉川氏が『ガダルカナルの失敗そのものですね』と指摘したのは正にこの話を意識したものかなと思ったりもしました(当該やり取りの記事はこの辺り.youtubeにもいくつか動画/音源が上がっています).

この番組は感情に訴える扇動的な傾向があるので少し冷静に見なければならないけど,為政者は『こうします・してます』ではなく,『なぜそうするのか』もセットで説明して理解を得ないといけないと思うんだけどな.布マスクの配布の件も,浅野氏個人のポスト(私はTwitterでRTされたものを読みました.元の投稿は削除されたようですが)を読んではじめて『なるほど』と,理解出来る部分もあったし.

あと,一応戦史に明るくない人のために解説すると,『ガダルカナル島の戦い』とは,太平洋戦争で日本が敗戦に至る転換点となったと言われている戦いです.

日本海軍がガダルカナル島に軍用の飛行場を建設し,アメリカとオーストラリアを分断しようと計画.開戦以来負け続きだった連合軍がそれを察知し,背水の陣で上陸作戦を敢行します.日本はこれを米軍の本格的な反攻作戦と認識せず,敵情不明であったこともあって楽観的に判断し,一木支隊をまずは投入して900名程で攻撃.そして全滅.その後日本は徐々に兵力を増強して2度の総攻撃等を仕掛けますが失敗.完全に飛行場を奪われたこともあって制空権も制海権も失っており,十分な補給も出来ずに武器弾薬だけでなく医薬品や食糧も不足.結果,餓死者続出.最終的に約3万名の兵員を投入し,戦死者が2万名.しかしそのうちの1万5千名は病死や餓死者と言われています.そして日本軍が島から撤退して終了.戦力を小出しに逐次投入するのではなく,早期に体制を整えて一気に対応していたら,これほど凄惨な結果にならなかったであろうと言われています.

PCR検査の偽陰性の率,そもそもの検査数,軽/無症状となる率,感染経路不明の感染者の増加などを考えると,クラスタの封じ込めに失敗していると考えられる現在,感染者の実数を正確に把握することは困難でしょう.ドイツの限定的な疫学的調査の速報ですが,PCR検査で判明していた感染率とその後の免疫調査結果では25倍の差があったという話もあります.実際の感染者数が検査結果陽性の人数よりもはるかに多いことが考えられる状況ですから,スピードの出ている暴走車と同じです.政治的な舵取りを一歩間違えたら被害甚大です.感染爆発,医療崩壊,経済危機等の取り返しが付かない道に進む可能性があります.改めて言うまで無いけど.

以上のように,既に感染を爆発的に広げる下地がある中で,今日の感染増加状況の結果の一部が2週間後に検査陽性人数として出るとしたら,もう選択の余地は無いじゃないですか.結果が出たときには既に遅いし,結果が出たということは,感染を広げる下地が二週間前よりも更に広くなっているってことですから.なので,『様子を見ながら』とか言いつつ段階的に厳しくしている現在の進め方は,正に『失敗の本質』で描かれている大本営にダブって見えます.

とは言え,物事は単純ではありません.国の政策は国民の直接的な健康や生命だけではなく,日本経済,そして現状の保証や終息後の回復のための財源の事も考えつつ行われているのは容易に想像が出来ます.また,大の虫を生かすために小の虫を殺すという厳しい選択もあるでしょう.ただ,これらに関しても,国民の健康や生命も含めた適切なプライオリティ付けと説明が欲しいところです.(『経済を停滞させ過ぎると自殺者が増える』という専門家の意見もありますし,そういうった話も含め,きちんと説明すべきだと思います)

いずれにしても,これまでの経緯,今の状況,これからの推移をしっかりと見て,次の選挙まで忘れずにいようと思います.政権担当能力がある政党が自民以外にどれだけあるのか…が悩ましいですが….

…で終わると,『政治家がー』とか,イデオロギー的な反発がある人が連呼している『あべがー』的な話で終わってしまうかもしれませんが,そうではありません.自身が何らかの組織の意思決定者の一人であったとしたら,『失敗の本質』に書かれているような失敗パターンを学び,そして繰り返さないようにするべきでしょう.私も他人事ではありません.色々と大変だったし,今も大変で,これからも…うーん.何とか乗り越えましょう.

観ておきたい映画や本

政治の…ではなく,自身の問題としての…という等身大の観点を書きかけていたのですが,長くなりましたのでポストを分けることにしました.

新型コロナ感染症が流行り始めてから,昔に観た映画を観直したり,本を読み直したりしています.その中から特に,『今こそ観るべきだ』と思ったものを列挙します.何れもお勧めです.

○映画(以下,Amazon Primeに入っていれば無料で観られます)

  • 医療崩壊とはどういう状態かというのを垣間見られる:感染列島
  • 死亡率が高いウイルスが世界中で流行ったら:復活の日

○ 本

とにかく外出を控え,人との接触を減らしましょう.その行動が二週間後の社会を守ります.

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