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2019年6月 4日 (火)

本とは何かとか本について考える人の話を聞いて考える本:かーそる 2019年5月号

前号から2年近く経っており,『次号はまだかな…』の時期が過ぎて『もしかしたら出ないのかも…』と,思いつつあった頃も過ぎていましたが(笑),先日刊行されました.執筆陣は多忙な方々ですので,難産だったご様子.そして本号のテーマは『本をみつめる』.

Amazonの方にはレビューを書いたのだけど何日経っても反映されないので,ボリュームを増やしてこちらにアップしましょうかね.

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まず初めての方は,創刊号から追った方が良いかもです.多彩かつ多才な執筆陣が,お題をネタに思索を巡らしたエッセイを集めた本…と言いますか,最近よく聞く言い方で言うとアンソロジー的な本です.『知的生産のー』が前面に出過ぎた書籍は固過ぎるものが多いし,かと言ってビジネス書的な本は,(ある意味当たり前かつ,ありきたりな内容であることが多い)予定調和的な着地点に落とし込むための耳障りの良い文書の羅列だったりします.そんな中,この本は市井の学者/文筆家の手による同人誌的な雰囲気があり,良い意味で読みやすいし楽しめます.そして身になり役にも立ちます.

さて,今号のお題は『本をみつめる』です.執筆陣が一定の方向を向いていて,そこに向けてロジックないしはストーリーを紡いでいくというスタイルではありません.これまでと同様,『お題をネタに,思い思いの話を書かせて頂きます』のような構成です.とは言え,まとまりが無く発散するような忙しい本かというとそうでもなく,根底に流れる大河の存在感はあり,安心して読め,そして読んでいて心地良い.

音楽で例えると,普通の本は『執筆陣が多少のアレンジを加えながら,同じ楽譜を同じ楽器で演奏している』という感覚になることが多いわけです.そして以前も書いた覚えがあるけど,導入から終わりまでのストーリーが予め出来ていて,そこから演者の演奏が大きくはみ出さないようになっており,最後にビシッと綺麗に終わるという感じ.

でも『か~そる』はかなり違うんですね.

同じく音楽で例えると,執筆陣が全員違う楽器,違う楽譜を奏でている感じ.ある人は小鳥の囀りのような心地よい『ぴぃー』だし,ある人は体を揺さぶるような骨太な『ぶぉー』って感じの音色.なので一つ一つの話は全く違った印象を受けるし,読んでいて得られるものも異なる.でも指揮者が振る指揮棒によって,『本』というお題で終始一貫したメロディが出来,そして各話が重なることで絶妙なハーモニーを奏でていることが分かります.全体を通してみると,『あっ,オーケストラの演奏だった』という感じなんです.なので,一つの話を読み終わった瞬間に『これの話は完結』ということではありません.別の方の話を読みながら,『先程の話と混ざると面白そう』とか,『先程読んだ話をこちらの話に役立てると…』とか考えながら読めるし,より深く楽しめます.各話が独立した話なのだけど,先に『大河』と表現したこの根底の重なり具合が絶妙です.

あと,『本は人なり、人は本なり』という言葉が本書の冒頭に出てきますが,これとは別に『本棚を見れば、その人が分かる(You can know a man by the books he keeps in his library)』という格言があります.これは『その人がどんな本を読んで来たかを知れば,その人がどんな趣味を持っており,何を楽しく感じるか,そしてどのような知識のバックグランドを持っていて,どのように考えるかが分かる.その人の内面,つまりどんな人か分かる』ということであろうと私は理解しています.同様に,『机の上を見れば…』という格言もあったように思うけど,ブーメランが深く突き刺さりそうな気がするのでやめておきます(笑)

で,『本棚を見れば…』は確かに的を射ているなと思うことが多く,本棚に並んだ書籍の背表紙は,ときには持ち主よりも饒舌に持ち主について語りかけてくることがあります.でも,『本』について持ち主が持ち主自らの口で語ったらどうでしょうか.きっと本が持つ情報以上の様々なことに触れることが出来るでしょう.それらを倉下忠憲,Tak.,るう,いっき,Go Fujita,Hibiki Kurosawa,彩郎 (敬称略)という豪華な執筆陣が自ら進んで語って下さるのです.エッセイを読んで楽しむほかに,表現方法や考え方等様々なものを得ることが出来るわけです.なんて贅沢な本なんでしょうか.

***

あ,そうそう.本書の中で『オートミール』は不味いという話が出てきますが,確かに水で煮て粥のようにすると凄まじく不味く感じます.スーパーで見付けて嬉々として買って帰り,小説に出て来た美味しそうに食している描写が脳内を駆け巡り,高鳴る鼓動を抑えつつ ひとくち口に入れたときの…落差と…言ったら….

でも,その後美味しい食べ方を知りました.

ボウル型の皿にオートミールを入れ,そこに牛乳をヒタヒタにするくらい入れ,レンジで2~3分チンして少し多めに塩を振ると(初めての人は味見しながら調節してみて)とても美味しく食せます.塩味を付けたほんのり甘いホットミルクに,やや歯応えのあるプレーンな厚いコーンフレークを入れたような味と食感.私はこれが大好きで,今ではコストコでクエーカーの巨大な袋を定期的に買っています.学生時代に部屋に缶詰になったときは,朝昼晩全部これでもOKという感じでした.

ただ,人によって味の合う合わないが激しいようなので(うちの子供達は合わないみたい),試食してみたい方はスーパーで小さめのオートミールの箱を買って試すのが吉です.あと,食物繊維やミネラルが凄まじく豊富なので『健康食』と言われるけど,カロリーや脂質は精米と同等かやや多めなので,ガツガツ食べたらダイエット食にはならないのでご用心.

あと,飯ネタついでに『精霊の守人』.本書でも何度か書名が出てきていますが,小説の中で出てきた料理に関して『バルサの食卓』という本が出版されておりまして,まぁ何と言いますか,空腹時に読むと飯テロかつ時間があるときに読むと調理指南本です.小説を読んだことがある人であれば,実際に調理して食せば美味しさが何倍にもブーストされることでしょう.

それやや脱線ですが,アニメタに,著者の花村ヤソと神山健治(『攻殻機動隊SAC』とか『東のエデン』とか『精霊の守人』の監督・脚本)の特別対談が載っていました.アニメ業界の興味深い話のほかに,しっかりと表現しようとすると大変なジャンルのマンガに愛弟子(?)が手を出したことに対し,『だから料理漫画がいいんですよ。絶対味が分からないんだから.なんで描く前に相談しなかったんだ…』という下りがあって,クリエイター的にはそういう視点もあるのだなぁと,料理漫画が百花繚乱な状態の昨今を思ったのでした.

と,いうことで,最後に食べ物ネタ繋がりで,1つの格言をまとめの代わりとして紹介しましょうかね.

『熟慮を重ねることによってのみ,読まれたものは,真に読者のものになる.食べ物は食べることによってではなく,消化によって我々を養うのである』(ショーペン・ハウエル).倉下氏のパートにも書かれていますが,書物は漫然と読むだけでは勿体ないです.

それにしても,未読の方が本書を読んだときのインパクトを損ねないようにと思い,内容に踏み込んだ話を避けつつ書いているのですが,内容にほぼ触れずに感想を書くのって難しいですねぇ.

と,いうことで,『かーそる 2019年5月号』オススメです.

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