サイエンティスト的な魂を持ったヒトのための手帳:ブルーバックス科学手帳
『科学』というものに初めて触れた記憶というのは,おそらく多くの人の場合は小学校の理科の実験ではないでしょうか.薬品を混ぜると化学反応を起こし…とか,実験の時間はワクワクしっぱなしでしたよね.
そこで『目の前で起きる全ての現象は様々な物理法則の元に成されており…』という点に興味を持ったり,『全ての事象は数式の解を求めることにより解き明かすことが出来るのだ!!』的な所に突っ走っていったり,もっと素朴に『世の中の森羅万象を知りたい』と思った・考えた人が,『科学者』と呼ばれる方向に突き進むわけです.本職でなくても,少なくとも『魂』は.
あと,幼少の頃に読んだ書籍が切っ掛けとなって科学の道に進む人もいます.そして私の周りの『科学者』というカテゴリに入るであろう多くの人が子供の頃から読んでいたのが,講談社のブルーバックスシリーズ.青い背表紙で『科学をあなたのポケットに』をキャッチコピーとして1963年から発刊されています.既にシリーズは2千冊を超えているのだとか.凄い.
かく言う私もこのシリーズが好きで,最初に購入したのは『ゲームの理論入門―チェスから核戦略まで』という本.たしか中学の頃に読み,その内容(考え方,判断の仕方)は自身の血肉になったことを実感出来ました.そしてその後,このシリーズの執筆者陣の末席を汚すことになり,読者に向けて科学を語ることになろうとは当時思いも寄らなかったけど.
ちなみにブルーバックスの『発刊のことば』には,このような事が書かれています.
科学をあなたのポケットに
二十世紀最大の特色は、それが科学時代であるということです。科学は日に日に進歩を続け、止まるところを知りません。ひと昔前の夢物語もどんどん現実化しており、今やわれわれの生活の全てが、科学によってゆり動かされているといっても過言ではないでしょう。
そのような背景を考えれば、学者や学生はもちろん、産業人も、セールスマンも、ジャーナリストも、家庭の主婦も、みんなが科学を知らなければ、時代の流れに逆らうことになるでしょう。
ブルーバックス発刊の意義と必然性はそこにあります。このシリーズは、読む人に科学的に物を考える習慣と、科学的に物を見る目を養っていただくことを最大の目標にしています。そのためには、単に原理や法則の解説に終始するのでなくて、政治や経済など、社会科学や人文科学にも関連させて、広い視野から問題を追求していきます。科学はむずかしいという先入観を改める表現と構成、それも類書にないブルーバックスの特色であると信じます。
野間省一の言葉です.文中の『科学的に物を考える習慣と、科学的に物を見る目』という言葉が,梅棹忠夫の『知的生産の技術』の根底に流れているエッセンスと相通じるものを感じます.
しかし『科学』と言いますか,『数学』や『物理』等は試験勉強向けの理論的な座学中心になって来ると,途端に興味を失う人が多いんですよね.昨晩娘の勉強に付き合わされたときに,『この数式をグラフ化すると,こんなエレガントなものになるのだ~』的な説明をしても全く感動されなくて驚愕しました…閑話休題.
と,いうことで,前振りが長くなりましたが『ブルバーックス科学手帳2019』の紹介です.
ブルーバックスらしく,ブルーを基調としたカラーデザインになっています.
『その日にまつわる 科学の出来事を毎日掲載。数学や物理の公式を、毎週ひとつずつ紹介』とあります.そこだけ読むと,ご当地手帳や,最近流行の趣味手帳的なイメージです….
でも,この手帳の神髄は,『科学の基礎知識をまとめた資料ページ』にあります(後述)
表紙はカバーオンカバーのビニールカバーに包まれており,リバーシブルです.上の写真のようなコテコテした説明が書かれた表紙が嫌な場合は,ひっくり返して挟み直しましょう.青基調の横ストライプの落ち着いた表紙になります.
このページのレイアウト,『ブルーバックスだなぁ』という気分になりますよね.
手帳はまずはカレンダーから.
紙はややクリーム色です.印刷の色は黒と青基調です.普通のカレンダーだと土曜が青色で日祝祭日は赤色のパターンが多いのですが,この手帳では赤色は使われていません.
ビビットな色が使われていないため,眺めていてクールで柔らかな感じがします.
そしてイヤープランナー.
2018年12月~2019年12月までの月曜始まりのマンスリーブロックと続きます.
2020年3月まであると,手帳の切り替え間近の時期に便利になるのだけどな…と,少し不満あり.
マンスリーブロック左側には前月と翌月のカレンダー.
下側にはメモ欄.
六曜等の印刷は無く,新月,半月,満月の日のみに月齢が書かれています.
そして暦関連業種の方は色々と大変だと思われる来年の12月のページですが,このように印刷されています.
手帳機能のメインはレフト式.見開きで1週間,左側が日付が印刷されているスケジュール用,右側はメモ用です.
月曜の部分に日出と日没の時間が書かれており,科学の出来事があった日はその内容が簡潔に書かれています.
時刻の数字は印刷されておらず,15個のガイドとなるドットがあるのみです.8時スタートなら24時まで使えます.
この業種の人は(?)活動時間がまちまちだと思われるので,朝型も夜型も対応出来るという意味では良い感じかも.また,必ずしも時間軸として使ってスケジュールを書き込まなければならないわけでは無いので,使いたいように使いましょう.
そして左側ページ右上にはカレンダー.右側ページの上には(写真では切れてしまっているけど1週間毎に1つの公式が書かれています)
右側ページは方眼メモで,右下にはブルーバックスのマスコットが座っています.
栞はメタリックな青とシルバーの2本.
で,この後がこの『ブルーバックス科学手帳』の神髄とも言える資料ページ集.その分量なんと60ページ.物理・科学編,天文・宇宙編,地学編,生物学編,数学公式集,単位・物理定数,単位換算表,付録と続きます.
一般の手帳の便覧の豪華版程度と思っていると度肝を抜かれます.
いくつかのページを抜粋して紹介してみましょうか.
例えば周期表.この表を見ると,暗記のための歌が脳内をリフレインする人は多いでしょう(笑)
ヒト染色体の遺伝子地図
数学公式集
ノーベル賞受賞者一覧
この他,読むとワクワク/へぇ~と納得するページが多々ありますが,それらは購入してからのお楽しみということで.科学全般のダイジェスト・よく使うものの資料集的な感じかな.
そして最後に参考文献リストがあり,横罫のメモが続き,最後のページは個人情報を書けるページがあって終わりです.
このほか公式ページには,ダウンロードして印刷可能なカバーがいくつか載っています.
まとめ
アナログで筆記することによる効果が知られ始め,効率化・利便性を求めて全てがデジタル化されそうになっていた部分が,最近はアナログも併用という流れになって来ています.その揺り返しの流れの1つとして,アナログ筆記の手帳の重要性にも注目が集まっています.
単なるスケジュール管理という内容であればデジタルの世界に便利なツールが満ち溢れています.しかし『+α』の役割を求める人の間では,デジタルだけでは難しい部分をアナログでというようになりつつあります.
具体的には,『記録する,管理する』ではなく,手帳に『書き出して考えてみる』という作業に関してはアナログの方が適していると考えている人が多いようです.私も経験的にその考えに同意です.
少し前の研究になりますが,授業のノート取りはデジタルで行うよりも手書きで行う方が理解度が高かったという報告があります(詳しくはこちらのページ参照.素晴らしくまとめられています).
この流れで手帳やメモ,スケジュール管理に関し,デジタル記録とアナログ筆記を比較した心理実験を行った報告は無いかな…と,探していたら,全く異なった内容だけど興味深い報告を見付けました(自発的な筆記行動と心身の健康との関係,紀ら 2014).ネットにデジタルで書く場合と,日記帳やスケジュール帳などにアナログで書く場合の心身の健康への影響の違いを調査した報告です.引用されている文献も併せて読むと,『書くことにより身体的健康度が高くなり,抑うつや不安の度合いが低下する』と言えそうです.
手帳に関して言うと,『忙しい!大変だ!』と,モヤモヤして悩むよりも,手帳に書き出して確認し,そして不満や不安があったらその言葉もそこに書くことによって精神衛生上好ましい状態になると言っても良さそうです.アナログ手帳だとメモ的な言葉を近くの余白にササッと書けるけど,デジタル手帳だと…感情記入用カラムの追加とか,柔軟性に欠ける&本質的でない方向に走りそう.
なんてことを考ながら,ブルーバックスの発刊の言葉にあった『科学的に物を考える習慣と、科学的に物を見る目』が少しは身についたかなと思った今日この頃です.
かなり脱線したまとめになりましたが,
- 書くことは大事.考える・理解する上でも精神衛生上でも
- ブルーバックス科学手帳は普通の手帳として普通に使える.使いにくいイロモノ手帳ではない
- 資料編はとても役立つし面白い
と,いうことで,『ブルーバックス科学手帳2019』オススメです.
実物を見てみたいなという方は,お近くの書店に行ってみて下さい.先週の時点ですが,東京駅一番街内の三省堂にも何冊か置かれていました.
それにしても,更に読み物的な面で充実した『資料編』が欲しいなぁなんて思ってしまいます.とは言え,手帳の1cmの厚さでこれ以上詰め込むのは無理.理科年表を手元に置いておくのも良いけれど,『科学』を俯瞰したブルーバックスらしいまとめ方のやや薄目の本が手帳の別冊で欲しいな….
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