普段使い可能な手軽な万年筆で快適な筆記環境を手に入れる:PILOT キャップレス
一般的な万年筆がある意味『優雅』で,ある意味『手軽に使えない』理由の一つに,ネジ式のキャップの構造が挙げられます.
多くの万年筆では,ノック式ボールペンのように『使おう』と思ったときにカチッとやってペン先を出すことが出来ません.クルクルとキャップを回して外さなくてはならず,書き始める前に一手間かかります.更には,ペン先を晒した状態で長時間放置するとインクが乾いてしまうため,しばらく書かないときには再びキャップを…と,いうことをしなくてはいけません.単純に『日常使いの実用品』として見た場合,実に面倒くさい筆記用具と言えましょう.
ちなみに,このネジの回転数はメーカー/モデルによって異なり,セーラー万年筆は1回転以上回す必要がある一方で,ペリカンは1回転未満で済みます.サッと書き始めるときにこの違いは大きく,『何気にペリカンの方が使い易いと感じたのは回転数が少ないからか!!』と,はたと気が付いたことがあります.
#ネジの回転数,メーカーによってどのくらい差があるのだろうか…と,思って調べてみたらこのようなページを発見.素晴らしすぎて涙が出そうです.『LAMYアクセント』は半回転で済むのに,『英雄 H1001A』は5回転もさせないと使えないというのは強烈ですな.
そして今回紹介する『キャップレス万年筆』は,ノック式のボールペンのようにノックして書き出せ,そしてノックしてペン先を再び仕舞うことが出来ます.前述の万年筆の『使いにくい構造』を解決した,唯一無二の製品です.
この製品,ずっと前から気にはなっていましたが,数年前の打ち合わせの際に,社外の人が使っているのを見たのが唯一の目撃例.第一印象は『ほぉ,あれがキャップレスか.ちょっと使いにくそうかな』と,いうものでした.
思ったよりも太軸で持ちにくそうだったのと,クリップのあるキャップ(と,いう言い方が良いか分かりませんが.『キャップレス』ですし)側にニブが出る構造なので,ノック式のボールペンと逆方向なので見た目に違和感があったせいもあるでしょう.結局それから何年か,キャップレスの存在は頭の片隅から消え去っていました.
そんな事があったことすら忘れていたある日,『ほぼ日のキャップレス万年筆』が出るとの話を聞き,紹介ページを見てハートを打ち抜かれ,予約日当日までワクテカしながら待っていたにも関わらず,案の定打ち合わせが続いてブラウザを開いたときには完売の文字が….
こちらで紹介した超極細万年筆以来,新しい万年筆を調達していなかったために『自分へのご褒美』という大義名分の元に購入を考えていたのにこの始末です.
と,いうことで,Amazonでカチッ.キャプレスEFのマットブラックです.
# その後『ほぼ日のキャップレス万年筆』の最大500本とのことで追加生産が決まり,購入出来るようになりました.8/24現在,残り2本.
『ほぼ日のキャップレス万年筆』との違いは,ほぼ日の方はクリップがメタリックなシルバーなのに対し,マットブラックはクリップもマットブラックな点です.あとは当然だけど,『お言葉』がオリジナルには印刷されていない(重要).
で,届いたのはこの箱.万年筆が高級筆記用具だということを思い出させる神々しい化粧箱です.
『ほぼ日』の方は21,600円,オリジナルはAmazonで今日現在の価格で14,053円.オリジナルの方が安いとは言え,それでも1万円オーバー.学生の頃であれば勢いで購入出来なかったと思う…大人になるって素晴らしい!!(笑)
そして化粧箱の中にケース.心拍数が上がります.
パカッと開くと色々と山盛り.
本体の他にマニュアルや保証書,ブラックのインクカートリッジ等が入っていました.
一応マニュアルを読みましょうかね.読まなくても使えるとは思いますが,一応.
これを読んで知ったのだけど,『キャップレス』のシリーズには,回転式もあったんですね.
カートリッジインクのセットの仕方はこんな感じ.
さて,では早速本体を袋から出しましょう.
本体は鈍く輝くマットなブラックです.ラバーコーティングではないため,ペタペタしません.ツルツルではなく,スルスルです.加水分解恐怖症な身としては,実に良い感じです.
そして"PILOT JAPAN"の控えめでセンスの良い印刷.
ノブ側から見るとこんな感じ.このノブがポテッと飛び出た感じが野暮ったく見えるかもしれませんが,しばらく使っていると見慣れます.
ペン先側から見るとこんな感じ.
やや軸が太く見えるかもしれませんが,フリクション3よりもやや細いくらい.
クリップはこんな感じ.
そしてペン先は主軸の端にある開口部の奥に収納されています.
中央のネジを外してバラすと3パーツに分割されます.
ペン先は非常に細く,まるで丸ペンのようです.
鉛筆の保護キャップのような金属製のキャップを外し,中のダミーカートリッジ(透明のパーツ)を外します.
ブルーブラックをセットしようとも思いましたが,今回はブルーインクをチョイス.
こちらは5本入りタイプ.
こちらで紹介した鉄ペン万年筆のカクノがヒットしているせいか,普通の文房店でも青・黒・赤以外のカラーインクも購入しやすくなりました.使うシーンを選ぶと思いますが,グリーンやバイオレット,ブラウンとかをセットしても楽しめそうです.
インクカートリッジはこの方向で….
このように奥まで刺します.
そして金属製のキャップで蓋をして…
凸の位置を合わせて…
主軸にセット.
再び軸をねじ込んでインクのセット完了.
ペン先の収納時,ノブはこの長さです.
ノブに適度な力をかけないとノック出来ないので,ペンケースの中で気が付いたらノックされていて大惨事…ということにはなりにくいでしょう.また,クリップの位置からも分かる通り,通常のペン挿しに収納した場合,ペン先が上に来てノブが下方向になりますので,鞄の中でのインク漏れのような事故も起きにくいでしょう.
そして押し込むとこの長さになります.
ペン先はこのように出てきます.
ペン先の出る際の位置,方向は常にこの状態.なので,クリップを親指と人差し指で摘まむように筆記すれば,常に適切な方向で使うことが出来ます.
気になる開口部ですが,単純に穴が空いていてペン先が丸見えという構造にはなっていません.バネ式の蓋でペン先が保護されています.
あ,写真の後ろに映り込んでいる物は気にしないで下さい.またそのうちにレビューします.
ノブを押し込んでいくと,このようにバネが押されて開きます(写真では分かりにくいと思うけど).
そして開いた部分からスルスルっとペン先が出てきます
そしてこの位置でペン先が固定されます.
ペン先が周りに触れることはないので,繰り返しノックすることによって擦れてペン先が破損することは無いでしょう.耐久性で気になるのは,蓋として動くバネの部分かな.とは言え,通常の利用で数年でへたってしまうとは思えないので,まぁあまり気にすることは無いでしょう.
ペンは書いてみてナンボ.
線は日本メーカーのEFらしく,細めです.そしてペン先は柔らかく,どの方向に筆を運んでも掠れることも引っ掛かることもなくスルスルと綺麗に書けます.この書き味は好みかも.
まとめ
と,いうことで,『ほぼ日モデル』を購入出来なかったことから衝動的にポチってしまったのですが,今は普段使いのペンとして活躍中です.ノック式の万年筆がこれ程使い易かったとは….もっと早くに購入しておけば良かったです.UEFとの使い分けが難しいけど.
あくまでも個人的な印象ですが,ペン先は柔らかくて適度な弾力があり,書き味はサラサラ.そして軸の重心位置や重量の具合が良いため,筆圧をかけなくてもスルスルと楽に書けます.インクフローも丁度良く,ドバドバ出てヌラヌラし過ぎることも無く,サッと勢いよく線を引いたときに掠れることもありません.
いやぁ~実に素晴らしい.
あと細かい点ですが,1週間程度放置した後でもインクが乾燥すること無く,普通に書けました.開口部があるので心配していたのですが,『うっかり放置』をしても多少は大丈夫そうです.ただ,『万年筆は毎日1文字でも書いてインクを流しましょう』が常識なので,長期間放置は非推奨.あと,水分の蒸発とかインクフローとかの関係で気になっていたインクの持ちですが,思ったよりも持ちます.毎日結構な量の字を書きますが,『あ,もうインクが無い』なんて感じになったことはありません.むしろ,『他の万年筆ならそろそろ切れてる筈なのに,まだこんなにインクが残ってる』という感じ.ガシガシとヘビーに使えそうです.
『万年筆は書きやすいけど普段使いに向かない』なんて思っている方,是非『PILOTキャップレス』を一度使ってみて下さい.あまりの使い易さに手放せなくなります.オススメですヨ.
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