夜に静かに劇場で観たい映画:『聲の形』
私の周りでは,先日エントリーをポストした『君の名は。』よりも,こちらを本命視している人が多かったわけです.原作は『このマンガがすごい!』で2015年のオトコ編で一位を取っています.最近は少々宣伝色が強くなって来ている『このマンガがすごい!』ですが,他はともかく,この一位というランキングは誰もが納得が行ったことでしょう.
私はコミック派で,1巻から追い続けていました.しかし1巻はイジメの嫌な話が続くので,読むのが苦痛でした.正直,二巻以降は購入を躊躇しました.でも1巻はプロローグ,前章,前フリでした.二巻からの神がかった展開は…名作としか評価出来ないでしょう.
なお,kindle版であれば,期間限定とかそんなシミッタレた設定ではなく,現在0円で1巻が読めます.まだ原作を読んでいないのであれば幸いです.映画を観た後で読み始めましょう.7巻で完結していますので,連載中で次号/新巻の発売を悶々としながら待つことなく,最後の1ページまで心を震わせながら読み進めることが出来ます.
と,いうことで,個人的には原作に対する思い入れが非常に強やったので,映画化は正直言って期待半分,不安半分でした.今回はしばらく様子見をしようかと思っていたのですが,以下のロングPVを観た後で初日に見に行くことを決意し,昨日観てきた次第です.これは原作に対する思い入れがある人も映画館で観るべき映画です.
『君の名は。』が手に汗握って胸が熱くなる映画だとすると,『聲の形』はポカポカと心が温かくなるカイロのような映画でした.では内容的にゆるいかというとそうではなくて,低温火傷注意で涙腺受傷注意な映画でした.
映画のストーリーの流れとしては,抑揚が少なく淡々と流れる感じです.でもつまらないという感じではなく,寒い冬に温かい布団にくるまって,『もうちょっとこのままで…』と,暖を取っている感じ.そして終盤に急にブワッと話が展開するので,その激しい高低差のためにやられてしまう感じ.
雰囲気的な話をネタバレ無しでまとめると,こんな感じ.
- 映像化することにより得られるものが多い.例えば手話の動きとか,聴覚障害者の発音(個人的には少し不満だけど,健常者が演じるには限界が…)とか
- 伝えたいけど伝わらないディスコミュニケーションによるもどかしさや悲しさがストレートに伝わってきた.そして最後に心が温かくなる
- 場面場面の感情を音楽で誘導するのではなく,音楽はストーリを邪魔しない添え物的存在で控え目(失礼!).このせいもあって,すこく滑らかに淡々と話が進んでいく印象
- 映像もきれい.だけど,シャキッとキラキラした『ハイビジョン/4Kです』的風景ではなく,心象風景的な感じ
- やはり原作を忠実に映像化するには尺が短か過ぎの感がある.そしてエピソードは一部オリジナル.でも,話を違和感なく繋げ,原作の線を破壊せずにうまく話が紡がれている
正直,原作を読んでいると先の展開が分かったりするわけですが,それでつまらなくなるわけではなく,より深く楽しめる部分が多かった.そしてある意味,逆に楽しめなくなることも.
まだ始まったばかりで全然泣けるシーンではないのに,(この後に結びつく話を連想してか)すすり泣く声が聞こえてきたときは,『あぁ,貴殿/貴女は原作読んでますね』と思いました.こっちはハンカチを右手に掴んで耐えているというのに!!泣くの早い,早いよ,スレッガーさん!!!
でも,原作読む前に映画を観た方が感動とインパクトは大きいように思うので,『予習してから…』と,コミックを買い込んで来ている人には,『観てから読みなさい』と,アドバイスしておきます.
実際,劇中に何箇所か小ネタがあったのだけど,劇場内の爆笑の大きさから見ても,原作未読で来ている人が1/3以上はいる感じでした.隣に座った高校生くらいのお兄ちゃんもおそらく原作未読だと思うのだけど,終盤にメガネ外したと思ったら,一緒に来ていた友人の目も気にせずに嗚咽しはじめました.私も原作読んでなかったら危なかったかもしれない.
それにしても,花火のシーンは実に幻想的で綺麗でした.そして舞台挨拶で話題にされていたけど,お茶を入れたコップに花火の音の波紋が広がるシーンはとてもグッと来るものがありました….
非常に贅沢な願望を実現できるとしたら,映画館を貸し切りにして,深夜に一人で周りを気にせず観たいなぁという感じの映画でした.レイトショーは比較的席が空いているようなので,貸し切りはともかく,2回目として行こうかなぁなんて思ってます.まだ前売り券を使ってないし.
心を静かに動かされる映画でした.オススメです.
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