フリクションで書いた物を紙を傷めずに綺麗に消す(2):電池式イレーサー
前回は,電動イレーサーを少し加工してフリクションイレーサーを作りましたが,今回はもっと直接的に電池を使うタイプを紹介します.エレキット AP-170
です.
基本構造は単純な単四電池のスイッチなのですが,先端に付いている『ポリスイッチ』がキモです.ラバーで擦って消す場合はもちろんのこと,電動イレーサーで消す場合もラバーに回転運動を加える必要があり,結果的に紙に物理的にストレスがかかることは不可避でした.しかしこの製品(?)はそれが無いんです.
トランジスタラジオを製作したことがある世代にとって,『エレキット』は何度もお世話になったことがある懐かしいシリーズです.電子工作の登竜門という感じで,様々な難易度のキットを幅広く提供していました.
実用性と言うよりも,遊び感覚で楽しみながら半田ごてを握り,気が付くと電子工作沼に引きずり込まれている…という理工系ホイホイだったわけですが,今はどうなっているのでしょうか.
改めてメーカーのページを確認したところ,昔と変わらず,ワクワクするようなキットが揃っています.そして実用性も兼ね備えた完成度の高い物が充実しているのは,時代の要求でしょうか.
近年,ArduinoやRaspberry Pi
等のお陰で,本格的なハードの世界に踏み込む際の敷居が非常に低くなりました.そしてソフトがある程度組める人であれば,素晴らしく実用的な物も容易に開発可能になって来ています.そういう意味では,昔ながらの(失礼!)遊ぶための電子工作キットは苦戦を強いられているのかなぁなんて気もします.
この辺りの話しに少しでも興味が持てる人は,ハルロックを読みましょう.
この本の破壊力は実に凄まじく,会社にバイトで来ていた大学生(ソフトオンリーの理工系女史)に貸したところ,目をキラキラさせて『半田ごて買っちゃいましたー』とのこと.皆さんもこの本読んで,是非ハードの世界へいらっしゃいませ~.
でもまぁソフトと違い,同じ事を同じようにやれば同じように動くと言い切れない部分がありまして,論理的には動くはずなのにアナログが絡むとヤヤコシイことが起こったりして文字通りハードな状況もあるわけで,仕事絡みでトラブったときはアレです.
現在ロジアナやオシロやシグナルジェネレータやらが机の上を占拠してまして,昔からの知り合いから『まるでハード屋さんみたいだねぇ』なんて突っ込まれる今日この頃です.一応本職はソフト屋さんの筈なんだけどな….
閑話休題.
いきなりヘビーな話しになりかけましたが,今回紹介するエレキット AP-170も『電子工作キット』です.完成品ではありません.そのため,半田付けの必要があります.とは言え,数カ所シュシュッと付ければ終わりですし,熱に弱いパーツを使用している訳ではないので,よっぽど手先が不器用な人でなければ失敗することは無いでしょう.
え?半田ごても半田も持っていないって?ダイソーに行きましょう.これを作るだけであれば,ダイソーのコテで十分です.
『スイッチ付き単4×1電池ボックスキット』が正式名称です.電池式のフリクションイレーサーを目的として作られているわけではありません.
中身はこれだけ.電池ボックス,基板,マイクロスイッチ,そしてポリスイッチです.
『ポリスイッチ』は本来同梱されるべきパーツではないのですが,おまけで(?)付いて来るようになっているようです.
こんな感じのペラ一枚の説明書付きで.
で,こちらが本来の説明書.
基板の表面.シルク印刷に指示通りパーツを乗せ…
裏側に出た足を半田付けするだけで完成するようになっています.
これがキモの『ポリスイッチ』.
元々は一定以上の電流が流れるのを防ぐためのパーツです.自動回復するヒューズのよな物をイメージして下さい.電流を遮断するに至る際に発熱し,そして冷めると再び電流が流れます.
パーツの主目的は電流の遮断なのですが,これをフリクションインクを消す(熱で変化させて透明にする)ための発熱体として使用するということです.単なる発熱体のように,電流が流れ続けて温度が上がり続ける心配が無いという点も良いですね.
と,いうことで,1分もかからず完成.半田こてが暖まるのを待つ時間の方が長かったかも.
ポリスイッチの取り付け方が説明書と異なりますが,いいんです.
半田面.7箇所ちゃっちゃと付けるだけなので,とても簡単.
一応書いておくと,ポリスイッチの所は(後で調整しようと思って)中途半端に付けてます.まぁ構造が構造なので,イモハンだろうとテンプラだろうと普通に動くでしょう.
初心者の人は,見栄えをあまり気にせず作ってみて下さい.導通していればいいんです.気楽に行きましょう.
単四電池をセットすればすぐに使えます.
スイッチを押し,少し熱くなった後でフリクションで書いたところにポリスイッチを当てながらスライドさせれば,スルスルと消えていきます.ポリスイッチの滑りも良いので,実に使い易いです.
ただ,結構熱くなるので,火傷には注意.
これで『めでたし,めでたし』で終わるはずだったのですが…手帳に書いた文字を消した後,紙の裏側に触れた指先が結構な熱を感じたんです….そこで検証開始しました.
***
前回の最後にちらっと書いた,『致命的かも…』という部分について説明しましょう.
まず,WEEKSのトモエリバーに『表側』とフリクションで書きました.
裏側にはこんな感じで適当な物を描いておきます.
今回製作した電池式イレーサーで,『表側』と書いた文字を消します.
スイッチを入れて『スッ』と擦れば(撫でる感じ)簡単に消えます.細かな所も綺麗に消せますし,とても綺麗に消えるので実に使い勝手が良いです.しかし…
裏側に描いた物まで消えていました….
トモエリバーはとても薄いため.表側の熱が裏側にも伝導しやすいのでしょう.表を消した際に,裏側もフリクションが消える温度にまで上昇してしまったようです.
気になりまして,電動イレーサーも試してみました.
まずは表面に『表』と書きます.
裏面はこんな感じ.
電動イレーサーで『表』という文字を完全に消しました.
押し付けてゴリゴリ消している感じでは無く,軽く擦る感じで消したのですが…
今回製作したイレーサー程ではありませんが,裏側の一部も消えてしまいました.
トモエリバーでフリクションを使うのは諦めなあかんということなんだろうか….
と,いうことで,
- 紙を物理的に傷めない
- 力を入れずにスルスル消せる
- 綺麗に消すことが出来る
- カスが出ない
- 電池1本で良く,小型&経済的
と,良い点が盛りだくさんなわけですが,裏側まで消えてしまったらアカンでしょ….
そんなわけで,WEEKSに使うのはしばらく諦めることにし,フリクションインクが消える60度ギリギリを狙える(同梱されているポリスイッチに代わる)パーツを探している所です.
一応補足しておきますと,普通のノートに使われている用紙や情報カードの場合,余程じっくりと時間をかけて消さない(熱を与えない)限り,裏側まで完全に消えることはありません.なので,このような用紙で使用するための『綺麗にサクッと消せるフリクションイレーサーが欲しい』という方には打って付けな製品だと思います.
と,いうことで,情報カードフリークな方,そして半田ごてを握ったことが無い人も是非,エレキット AP-170を作って悦楽な世界へいらっしゃいませ~.
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