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2014年3月12日 (水)

老舗が作る入門用万年筆の本気:セーラー万年筆 MY FIRST

先日…と,思ったら既に3か月も前で唖然としてしまうのだけど,PILOTが出した入門用万年筆,カクノに関するエントリーをポストしました.感想としては,入門用にふさわしい価格帯と下記味.そして手に取って使うのは勿論のこと,使わなくても所有したくなるデザイン.実にバランスが取れた鉄ペン万年筆でした.

日本国内メーカーは,これまでも多くの廉価な入門用万年筆を販売して来ました.そして様々なマーケッティングリサーチを行っているであろうことは想像に難くないので,似たような商品が各社から短期間に集中してリリースされるってことも珍しくありません.

そんなわけで,PILOTのカクノの後の凪を見ていると,『PILOTが出したけど,他のメーカーはこのタイミングで後追い的に新製品を投入しないって腹をくくっているのかなぁ』なんて思ったりしていました…が,今回沈黙を破り,万年筆の老舗メーカーがかなり本気な商品を投入してきましたヨといった感じ.セーラー万年筆の『MY FIRST』です.

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パッケージはこんな感じ.ちょっと申し訳ないけど,垢抜けない見た目.これが白でなく,黒いスポンジであったりするとちょっと雰囲気が変わるんですけどね….

実質50万円くらいの商品が専用ケースにはめ込まれ,ジュラルミンのスーツケースに収められると,あら不思議,250万でもバンバン売れます…ってのを目の当たりにしているので,やはりパッケージングって重要だなぁと実感しとります.

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入門用のセットの場合,本体とインク数本というのが定番だと思うのですが,MY FIRSTには『通常の万年筆のペン先』と『イラストや水墨画,筆文字が描ける 先を曲げてある特殊ペン先』の2種類が同梱されています.

この辺り,社名に『万年筆』を冠したメーカーの,『うちは他とは違うんだよ,他とは』(←ランバラル風に)といった感じの気合いを感じます.

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そして,初心者向けを意識しているであろう,『MY FIRST』という商品名.必要な物は一通りセットになっているため,他の物を買い足さなくても使えます.

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裏側に説明書.

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文章を読むと,PILOTのカクノよりも,かなり上の年齢層を狙っている感じです.いや,むしろ『万年筆って面白そうだけど,高くてメンテが面倒くさそうだから手を出してない』と思っている大人を狙っている感じ.

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裏側の説明書きだけではなく,中には折りたたんだ説明書が入っています.

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無味乾燥な『取扱説明書』というよりも,『万年筆の素晴らしさを如何に伝えようか』という熱意/意志/意図が滲み出してくるような小冊子である感じがします.

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カクノもそうでしたが,構造その他に関してもキッチリ細かく説明されています.舶来物ですと,『万年筆の使い方を知らない奴がオレを買うなよな』的な敷居の高いペンもあるわけですが,これは懇切丁寧です.正に日本人のおもてなしの心(*).

(*)例の『おもてなし』プレゼンですが,個人的にはあまり好きではありません.一番嫌だったのは,挨拶的に合掌したこと.『また合掌が日本での挨拶だと勘違いされるやんか』と,ちょっと困った目で見てました.

以前アメリカで,某教授に『彼は日本から来た~』ってご家族に紹介された際に,お子さんから合掌して挨拶されました.そのときは,『合掌は日本スタイルの挨拶ではない.合掌はタイランドとかインドでー』と,説明したのだけど,こういうのが1回だけではありませんでした.うちの嫁さんに聞いても,合掌は日本での挨拶だと勘違いしている外国人が結構多いのだとか.困ったもんだ….

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コンバーターもボトルインクもセットになっていませんが,その使い方も書かれています.明らかにステップアップを想定した書き方になっています.

これに更にジェントルインクのカタログと色見本が入っていれば,MY FIRST購入者の一部を,インク沼に引きずり込むことも可能かと(^^;

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セット品の使い方.

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メンテナンスの仕方.

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特殊ペン先の使い方.

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で,中身はコレ.昭和のスパイセットのようなパッケージ.

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軸,ペン先2種,インク3色(黒,青,赤)が入っています.

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軸はプラスティッキーで実にチープ.

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クリップもこんな感じ.小学生が使う玩具のペンに匹敵するチープさ.正直言って,もっと何とかならなかったのかなぁと….カクノの数段下を行っている感じがします.

おそらく一般の人の目から見た場合,ビジネスマンがペンケースからカクノを出すと『おっ』や『洒落てる』という感じでしょうけど,このMY FIRSTを出されると,『えっ』という感じかも.

中身が凄くても,外面で損してしまうのは実に残念.

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軸の断面は丸です.『掴みやすいように表面加工されている/六角形になっている』ということも無く,普通に丸い軸です.また,マットな塗装ではなく,テカテカ.この仕上げがプラスチック感を大きくし,チープ感を増長しているような気が.

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キャップ部.赤と黒という相性の良い組み合わせ

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キャップははめ込み式では無く,ねじ込み式です.

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まずは普通のペン先.セーラー万年室の『錨』のロゴが美しい.

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横から.ペン先は実にしっかりしています.

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そしてこれが特殊ペン先.

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横から見ると,先の部分の特殊な形状がよく分かります.

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では早速取り付けてみましょう.インクは青を選択.

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普通の青だと思ったら,とても明るい青.ホリゾンブルーとか瓶覗きと呼ばれる色に,少しターコイズブルーを混ぜた感じ.

で,書いてみた結果が以下の通り.今の私の経験値では,到底使いこなせません.残念.修行が足りません….

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一方普通のペン先は,実に普通に書けました.書き味はと言うとカリカリせず,それ程太くないのに,適度なスルスル感と言いますか,『万年筆らしい』ヌラヌラ感があります.

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と,いうことで,MY FIRSTは,老舗の王道的商品ではなく,変化球であると感じました.それも,人によってはデッドボールになりかねない程の.

その一方で,在り来たりな万年筆に飽きた人にとっては,好餌ではないかと思います.『特殊なペン先』として同梱されているペン先は,非常に希少なものです.このようなペン先を持った普通の万年筆を購入しようとしても,中々良い物が無いだけでなく,値段もかなり張ります.

そういう意味では,気軽に色々と試せるし,遊べるという意味で,このセットは文具マニアの琴線に触れるセットではないかと思います.

ただ惜しむらくは,やはり軸のチープさ.『人に見せびらかすから見栄えの良い物を』という感じでは無く,やはり愛着の湧くようなデザインの方が,常に身近に置く/携帯するようになり,結果,使用頻度が高まり,愛用品になるというスパイラルに入る可能性が高くなるわけです.

本来は入門用万年筆の筈が,大人にも大人気で広く使われているペリカーノJr のような万年筆もあるわけで,この方向性を目指しても良いのではと思ったりもします.

と,いうことで,おそらく軸にかけるコストを大幅に削ってでも,ペン先を2つ同梱したい.没個性な普通の万年筆セットしたくない…と,いった話で商品企画が進んだのではないかと思います.でも,次期製品の企画が既に進行中でしたら,多少コストアップしたとしても,是非,軸をもっとビシッとしたものに刷新して欲しいなぁと切に願っています.ないしは,互換性を持った軸だけ別売りとか.

そして『特殊なペン先』に関してですが,セットに同梱されているのは実に良いと思います.使えば使うほど手に馴染み,かつ,面白くなりそうなので,今しばらく修行してみようと思います.

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