ウォーターライン:秋月型駆逐艦を短時間で見栄え良く建造する
話の流れ的にはこのエントリーの続きで,ウォーターラインシリーズを楽しく作ってみようって趣旨です.
どうせ作るなら,飾っても見栄えする程度の完成度にしたいけど,あまりに凝り過ぎると時間も費用も手間も膨大なものになるため,バランスが重要.個人的には,駆逐艦1隻を2時間程度で完成させ,普通の人(*)に見せた時に,『おぉ,凄いやん』と言われる程度のクオリティを目指す感じ.
(*)モデラーに見せると,『あー,ここの処理はこんな感じにした方が-』と,とても熱心に有難いアドバイスの山を頂くことになるし,ミリヲタに見せると,『あー,この艦は艦橋の型がこれとは違うはずなんだけど…考証が甘いね.何故そうなったかというと,1945年に空襲で艦首切断し…』なんて話が始まり,私も乗っちゃうから,エンドレスで続くことになる(笑)
今回建造するのは,艦隊防空を担うために設計・建造された,私が愛して止まない秋月型を3隻ほど.やはり好きな物を作るのは気合が入ります.
まずはネームシップの秋月 .通商ではありません(笑)
中身はこんな感じ.昨今のプラモデルを知っていると,不安になる程パーツが少なく感じます.
一番右のディテールアップパーツを除くと,船体の他はほぼ2枚といった所.アオシマ製かつ古い金型(最近リニューアルしたものではないという意味)ということを考えると,完成度が今ひとつになる可能性大.
そこで今回用意したのは,ファインモールドのナノ・ドレッドシリーズのドレスアップパーツ.25mm連装/三連装機銃のパーツが数組入っており,それをオリジナルのパーツに代えて使うことにより,よりクオリティの高い艦に出来るという寸法です.
前回のエントリーの時も書きましたが,全体に手を入れるのではなく,この手の細かなパーツ,特に機銃や魚雷発射管等の兵装系をいじると,少ない労力で最大限の効果が得られます.
最近,更に新金型に移行したのだけど(モチロン買ったヨ!),旧版も超絶精巧な作りで定評があります.そして裏側にはこんな説明書き.これだと大きさがわかりませんね.
中身はこのような感じで,ランナーが4枚入っています.
一枚一枚にこのように超絶精巧に作られた機銃パーツが付いています.
大きさ比較のためにmicroUSB→Lightning変換アダプタを並べると,このサイズ.左が連装機銃で右が単装.まるで米粒に写経をしているかのような細かさです.
秋月は防空駆逐艦なので,高射砲と機銃が命.早速オリジナルのパーツではなく,ナノ・ドレッドのパーツを取り付けます.ただし,かなり高価なパーツになる(24基で千円オーバー)ので,節約のために秋月にのみ使用.
素組ですが,完成.2時間要りません.
しかし元々のプラスチックのカラーのままでは,なんとも言えないチープさが漂ってきます.まるで出来損ないの食玩のおまけのような雰囲気が….
そうです.色を塗らないとだめなんですよ.
そして旧海軍の軍艦は,どこに所属してるか(呉/横須賀/佐世保/舞鶴)によって,微妙に色が違います.どこの所属かは艦名で調べれば分かるのだけど,より詳しく知りたい人はこちらの素晴らしいページを参照してみてください.
で,これを再現するために,塗料を『これとこれをこの割合で…』なんて感じで混ぜるのは非常に手間.しかしGSIクレオスから,『日本海軍工廠標準色カラーセット 』というパッケージが出ていてですな…
呉,佐世保,舞鶴工廠のカラーがセットになって売られています.塗る色にも拘っている方は,これを使えば安心.
が,そこまで気にしないであろう殆どの人は『C32 軍艦色 (2) 』を使うだけで良いのではないかなと思います.
ただ,今回の目的は『簡単にかつ見栄え良く』なので,出来るだけ塗装の手間も減らしたい所です.本当は『エアスプレーを買うと綺麗に塗れる.初心者こそエアブラシを買うべき』って勧めるべきかもしれませんが,費用もクリーニングの手間もかかります.
そこで今回は敢えて『ラッカー』を推薦.1色600円弱で購入できるし,メンテナンスフリーなのが良いです.ただし広い範囲しか塗れないので,エアブラシの代替にはなりません.本格的にプラモデルをやる気持ちがあるのであれば,いきなりエアブラシを購入し,背水の陣で臨むのもアリかな.
なお,軍艦色(2)のラッカーは『Mr.カラースプレー 軍艦色 (2) S32 』です.そして通常の塗料と同じ色名であったとしても,若干色味が異なるので注意.ラッカーで塗った後,同じ色を筆塗りで使いたいときは,ラッカーを塗料皿にスプレーし,それを使うとよいでしょう.
下の写真はシュパーッとラッカーで全体を塗っただけの状態です.筆塗りだと手間も時間もかかる上にムラが出来たり等して汚くなることがあるのですが,ラッカーだと超短時間で綺麗に塗ることが出来ます.駆逐艦を塗るだけなら,30秒もかかりません.
で,素組みしただけの写真と比べても分かる通り,1色で塗装しただけでも重量感・存在感が大きくアップします.
で,秋月は少し置いておき,次は『涼月』.
こちらは少しランナーが増えているのですが,『涼月用』という感じではなく,同型艦のパーツ変更用の寄せ集めです.例えばこれは秋月用のパーツですが,
これは左半分が初月用,右半分が宵月用です.
そして『冬月』も建造.
秋月では組み上げた後でいきなり『軍艦色(2)』単色で塗ってしまったけど,少し余裕が出来たので,冬月はリノリウムの塗装をきちんと行ってから組み上げることにしました.甲板上のどの部分がリノリウムなのかは説明書の塗装指示を参照のこと.
全部組み上げてからでは筆塗りせざるを得なくなるので,まずはラッカーで船体にリノリウム色を塗り…
リノリウム部分にマスキングをして,その上から軍艦色をスプレー.
今回は,マスキングテープの他にMr.マスキングゾル改 をマスキングに使用しました.マスキングゾルは液体がビンに入っており,これを刷毛で塗って乾燥させるとマスキング層が完成です.細かな所を塗る際には実に重宝します.
そして乾燥した物はゴムのようになっているため,塗装後は次の写真のようにペリペリと『剥き』ます.
と,次の写真のように,鉄甲板とリノリウム貼りの部分が共に綺麗に塗装出来ました.ラッカーで塗装したため,ムラも無し.
ゾルの細かなカスがまだ残っていますが,実に良い感じ.筆塗りだとなかなかここまで綺麗に塗れません.
あと余談ですが,一部艦船では,同型艦と船体を同じ型で作っている関係で,ピンバイスを使用して穴を開ける必要があります.でも,普通の人はピンバイスなんて持ってませんよね.0.3mmとか0.5mm等の細い穴を開けるように指示されるので,ピンバイス と共に,極細ドリル刃セットも用意しておいた方が良いです.
話は前後しますが,こちらは『マスキングを少しでも省力化出来ないかなぁ』と思い,ゾルだけでマスキングをした例.一応船体は下地,リノリウム共に塗装した後だけど,砲塔等を乗せる前のこの段階でゾルを塗り,
構造物を一通り乗せた上で…
軍艦色を塗装.
後はペリペリとゾルを剥がして行きます.
と,こんな感じでリノリウム塗り分け版が完成.意外とボロボロになってしまって剥がすのが大変だったので,細かな部分以外はマスキングテープでやるのが楽かなぁと思いました.そんなわけで,作戦失敗.
と,いう感じで,三隻ともリノリウム部分も含めて塗装し,就役.ちなみに奥のは帝国海軍士官略帽.流石に帽子屋さんがきちんと作っているだけあって,土産物屋品質とは一線を画しています.オススメ.
かけた時間の割にうまく出来ました.スプレーを使うと,手間と時間をかなり節約できます.が,軍艦色で全部塗装後にリノリウム甲板を筆塗りした艦は,かなりムラになってますな….ちなみに3艦共に軍艦色を塗り分けているのですが,下の写真では分かりにくいですね.
ちなみに同型艦なのに三隻の機銃配置が異なるのは,戦訓を取り入れて適時改装が行われたせいです.年々航空機の脅威が益々増加するため,基本的に機会があればガンガン機銃が増設されています.
艦橋のアップ.結構良い感じに出来ました.
考証の話をすると,10cm連装砲の形状が実物と異なるのと,涼風は修理の際に生産容易な角張った艦橋に取り替えられいるはずなのに,何故か従来通りの丸っこい艦橋が据えられています.
そこそこ高価な1/350スケールモデルで緻密に作ろうと思っていてこの状態なら暴れたくなると思いますが,1/700かつ古いモデル対象なので,まぁ大らかな気持ちで接しましょう.どうしても気になる場合は,自分で直したり,価格は倍になりますが,ピットロード製 を購入するのが吉です.
***
で,次は墨入れの時間です.
手軽さという面ではガンプラ用の墨入れのためのペンがオススメなわけですが,もうちょっと『プラモデルを作ってる』という感覚を持ちたい所.でも,エナメル塗料を配合して自分で作るのは手間.
そんな折り,タミヤのスミ入れ塗料が出ました.まるでセメントのようなパッケージで,黒,グレー,ブラウン,ダークブラウンの4色が出ており,大抵の物に対応できます.
キャップの裏に刷毛が付いているので,セメントと同様にこんな感じでサッと流し込んで…
綿棒にエナメル溶剤 を浸して拭き取ります.こうすると凸の部分は塗料が除去されるけど,凹の部分に墨入れ塗料が残るという仕組み.そのため,隙間の部分が黒くなり,立体感が出てきます.
ここで少し補足すると,塗装は『ラッカー→アクリル塗料→エナメル塗料』の順で塗るのが定石です.このとき,アクリル塗料の上にエナメル塗料を塗ったとしても,色は混ざりません.また,エナメル溶剤で拭いたとしても,アクリル塗料が溶け出すこともありません.
拭き取りを少し工夫すると,副次的に汚し塗装っぽくもなります.
この作業にはタミヤの綿棒を使うと便利.毛羽立たないし,細かな所にも突っ込める.
全艦共に墨入れ+汚しをしてみました.
うん.ちょっと汚し過ぎのような感じがしないでも無いけど,ノッペリとした感じだったものが立体的になり,精巧感・重厚感が増した感じ.
と,いうことで,ダイソーで売られていたケースに入れてみるテスト(写真には写っていませんが,透明なアクリルの蓋付き).
飾り方・収納方法はいつも悩ましいですな.
それにしても…手を動かして物を作り上げていくってのは,とても楽しいっ.
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