駆逐艦 荒潮(プラモデル)を娘に作らせ,様子を見ながら色々と考えてみるテスト
プラモデルが男の子のホビーの筆頭であった頃は,ウォーターラインシリーズの製作に大いにハマっていました.日常的に駆逐艦を建造し,そしてまとまった小遣いがたまった時には大和 を…という感じであり,大和の方も何隻建造したか覚えていません.
もっとも,当時は他の友人同様,艦艇のプラモデルばかり作っていたわけではなく,ドイツの戦車であるとか(パンター やティーガーI ,ケーニヒスティーゲル ,37ミリ対戦車砲等は何組作ったことやら…),航空機(震電 やA-4 スカイホーク ,F-14 トムキャットも何機作ったことか…)等,陸海空満遍なく作っていました.
結局それらは作っては捨て,または.親に(殆どは知らないうちに)掃除と偽って捨てられというのを繰り返し,小中学校の頃に作った作品は,今は何一つ残っていません.そして大人になってから急に思い立って作り始めたりしたプラモデルも数個ありますが,最初の方で妙に凝り過ぎて止まっていたり,完成寸前で止まっていたりしている物が大半で,完成に至った物は少ない.
そんなわけで,こちらのエントリーではガンプラのグフカスタムについて書きましたし,また,最近ではバルキリーの製作記事をポストしたりしましたが,所謂『プラモデルらしいプラモデル』からは少し距離を置いていました(*).だってじっくりと腰を据えて作る時間が無いんだもん.
(*)ここで言う『プラモデルらしいプラモデル』とは,接着剤等を使用して組み上げる物で,所謂『パチ組み』と言われるように,パーツをパチパチとはめ込んでいくと完成するタイプでないプラモデルを指します.当然ながら,私が独断と偏見,主観によって独自に定義した言葉です.
が,『艦隊これくしょん』に子供達共々ハマり,勢いで帝國海軍艦艇熱が復活.そして当然のように,ウォーターラインのプラモデル製作に雪崩れ込むというパターンで今に至ります.
夏に帰省した際に最初の波が来たのですが,近くのプラモ屋に勇んで行ったら盆休みでショボーン.で,周りの人に開いているお店の情報提供を受けつつ(ネットの力ってありがたい!),アールクラフトが開いていたので数隻買い込んで作り始めました.しかし,実家には(昔揃えた筈なんだけど)道具類が残っておらず,そして塗料のストックも無し.そんなわけで,適当に作って適当な精度に完成という感じでした.
やはりガンプラは別として,塗装無しの素組みではそれなりの物しか出来ませんな.
そんなわけで,家に帰ってきた後で不足している塗料を補充しつつ,少しずつ買い込んだ艦船を夜なべして建造している今日この頃です.
この手のプラモデルでは,やはりキチンとした道具を使い,そして適度に塗装等してやると,全然見栄えが違います.そして完成した姿を見た時の達成感も素晴らしい.やはりプラモデルは,作る過程も楽しいけど,完成した物を飾って眺めるのも素晴らしく楽しいものです.
その一方で,(私の場合は)あまり製作に時間を取り過ぎると,途中でモチベーションが維持出来なくなって完成に至らないことがあることは,これまでの経験からして明らかです.そのため,1隻の作り始めから完成までは,短期決戦で一気に行うようにしています.塗装の乾燥待ちを除くと,ほぼ1日以内に完成させるようにしています.
短時間で完成するという意味では,やはり駆逐艦がベストなので,駆逐艦を中心に作り始めています.そんなある日,『私にもひとつくれ!』という娘の熱意ある強引な略奪に遭い,ストックの中から,荒潮が奪われて行きました.
と,いうことで,前振りが長くなりましたが,以下,荒潮を肴に色々と書きましょうかね.
この箱絵の勇姿が,実に男の子のハートを射止めます.
最近『上田毅八郎の箱絵アート集』 という書籍を購入して眺めているのですが,実にニマニマしてしまいます.画集的な物でニマニマしたのは,この本 のとき以来かなぁ.
あと余談ですが,上田毅八郎氏の経歴を今回初めて知り,その凄まじさに衝撃を受けました….
駆逐艦のパッケージはこのサイズ.大抵のプラモデル屋では,こちら向きで棚に積んであります.巡洋艦,空母,戦艦になってくると次第にパッケージが大きくなるので,ストックという名の積みプラにも駆逐艦が最適(笑)
パッケージ裏側.塗装の仕方と塗料の型番が載っています.
中身はこんな感じ.この『荒潮』ですが,ハセガワ製のかなり古い金型の製品です.素晴らしくまとめられているこちらの情報を参照すると,1972年からリニューアルされていないようです.
ふ,古い….
荒潮については,こちらを参照のこと.他の駆逐艦と同様,馬車馬のように働き,そして壮絶な最期を遂げています.
なお,『あらしお』の名前は,海上自衛隊の潜水艦が二代に渡って引き継いでいます.
古い設計なため,今の目で見ると,パーツの作りがとてもチープな感じです.写真手前は三連装の25mm機銃.『何これ?棒が3本出てるみたいだけど…』という感じですな.
主砲や魚雷発射管もこんな感じ.現在の技術を用いれば精細なモールドも可能ですが,この頃のアオシマ製は,少し粗い木細工的な物を感じます.
そんな状態を一部解決する目的で,昔は無かったのですが,1994年からディテールアップパーツ(Wパーツ)が同梱されるようになりました.
最近の技術を使用してディテールをアップした,複数の艦で利用可能な共通のパーツが入っています.このパーツを使用することにより,本体のリニューアルが無くても,完成度をアップさせることが出来るという寸法です.
共通部品なので,駆逐艦には使用しないような水偵機等まで入っています.って言うか,晴嵐は伊400でしか使いませんって….
なお,この駆逐艦や軽巡洋艦用のセットは,『小型艦兵装セット』という名前で別売もされていています(上の写真はそのパッケージ).
オリジナルの50口径三年式12.7センチ砲はこんなんだったのに…
Wパーツでは,このように砲塔のモールドがグレードアップしてます.また,砲身の基部の構造が全然別物.
更には三連装25mm機銃はこんな感じだったものが…
こんな感じに.
依然として3つの弾倉が一つの板になっていたり,後日アップする予定の他社製品には完成度の面で大きく水をあけられていますが,オリジナルと比べると雲泥の差です.
更に魚雷発射管では凄まじい差があり…
『箱から棒が4本伸びてる』という風情だったものが,
しっかりした魚雷発射管になっています.
プラモデルの内容に関し,小学生の頃から気になっていたのは,『武装パーツがちゃちぃなぁ』という点.当時は素組みで塗装すらせずに完成させていたので,造形の出来が見栄えに直結するので尚更です.何だか箱から棒が伸びているだけで,『○cm三連装砲!』とか言われても,格好良くないですよね.
細かなモールドがビシッと入った精細な感じのパーツを使うと,全体的にグッと格好良くなります.
数年前から再び艦船プラモがブームになっているようなのですが(知らんかった…),ウォーターラインシリーズの艦艇も例外ではありません.リニューアルされて金型が一新され,現在の最新技術を使用した精細なパーツになったものもあります.しかし,店頭には依然古いままのモデルも売られているので,よく調べて購入しないと『あれっ?』ということになるかもしれないので注意.
個人的には,タミヤ製なら多少古いモデルでも全然OKですが,アオシマ製には要注意かも.
それにしても…昔は『こんなもんだよね』とか思っていたけれど,今改めて見ると,バリが酷いなぁ….
***
で,この後撮影後に娘に強奪されたわけです….
まぁ良い機会かなと思い,必要な道具一式も貸してやったのですが,次の写真のように完成.
完成後にラッカーで全体の塗装(軍艦色(2)を使用.エアブラシを購入したら際限なくのめり込むことが目に見えているので,自重してラッカーを使用)はしてやったのだけど,他は全部自分でやってました.所要時間は2-3時間くらいじゃないかな.
途中で飽きるかと思ってたのに,メチャクチャ集中かつ楽しみながら製作していたので,とても驚きました….
なお,リノリウム色の塗料が手持ちに無かったので,代わりにレッドブラウンで塗らせています.
ぱっと見,とても良い感じに出来てます.まぁ一部塗装がはみ出したり等,アレなのはご愛嬌ってことで.
うん.Wパーツで組み上げると,そこそこ良い感じになりますな.あと,やはり塗装すると全然見栄えが違う.
Wパーツの25mm三連装機銃は,少しスケール感が違うかもです.
魚雷発射管のモールドも中々.
甲板のリノリウムの塗装がされてないのが気になるけど….まぁ予備知識が無い子供には仕方ないかな.
アップで舐めるように見るとかなり迫力があります.後は筆塗りのムラを何とかすれば,もっと良い感じに仕上がりそうな予感.
掃海具(パラベーン)もしっかり付いてますが…お,艦底がズレとる.
その後の娘はと言うと,うまく出来たことに味をしめ(自分的には会心の出来だった模様),今では小艦艇セット ,照月 ,木曽 も完成して机の上に飾られており,雪風が起工待ちです.
女の子の机の上ということを考えると,中々シュールな情景ではあります.嫁さんからは『ちょっとぉ.変な方向に洗脳するのはやめてよぉ…』的な目で見られている今日この頃です.
超初心者の子供でも,このくらいのクオリティにちゃちゃっと仕上げられますので,『接着剤を使うプラモデルは大変そう…』とか思う方におかれましても,是非一度チャレンジして欲しいなぁと思う次第でございます.
『データ』ではなく,『物』としての存在感ってやっぱり凄く良いですよ.
なお,組む際に多少手抜きをするにしても,塗装まで行うことを推奨します.(艦底以外を)組み上げた後でラッカーで塗り,一部を筆塗りするだけでも,随分見栄えが違います.
***
で,タイトルの話に急転直下するわけですが,今回は計らずも,全くの初心者にプラモデルを与え,作り上げていく過程を横から見守る立場/状態になりました.そして黙々と作る傍らでその姿を見守っていたわけですが,
- 初心者にはマニュアルが大切.『指示通りにやれば出来る』程度の必要十分な情報が載った,簡素で分かりやすい物が好ましい.親切/完全を期すあまり,余計な情報がゴチャゴチャ載ると逆効果
- 内容に関して熟知していなくても,手抜きをせずにマニュアル通りやればきちんと完成するという物が良い.考えさせる,もしくは,よく考えないと理解できないような指示・説明はダメ
- 図示が最強の情報伝達法.文章で説明するよりも直感的に理解出来るし,間違いにくい上に間違えたらすぐに分かる
- 行ったことが形として見え,かつ,次第に完成に近付いていることが実感出来る状態であると,最後まで緊張感を保ちつつモチベーションも維持できる
なんてことを考えてました.
何だか,新人教育をしなくてはならなくなった中間管理職向けのマニュアル本みたいな内容ですな.真面目な話,一般的にも通用しそうなこれらメソッドは,とても重要なエッセンスが入っているような気もします.
『取扱説明書』と書かれたドキュメントには,分かりにくくて使いにくい物が多い一方で,プラモデルの説明書等,子供向けのドキュメントは妙に分かりやすくて間違えにくい物が多い.『パッと見てスッと理解させる』ためのプレゼン用のスライドにも,色々と応用できそうなテクニックが詰まっていそうな印象があります.
そしてその一方で,
- 単純な作業でも,スキルが足りなかったり道具が足りないと失敗することがある(→ニッパを使わずにパーツを手で千切ったり,細かな所を塗るのに太い平筆を使って…ってことがあった)
- 失敗した時のやり直しは,最初から正しく行うよりも大きな労力とスキルが必要(→例えば塗装の最中に「ちょ,それ色違う」ってなったとき,重ね塗りすると色が混じってしまうため,別の色で綺麗に塗り直すのは至難の業)
- 設計図から逸脱したプラスαをしようとすると,途端に手間も費用もかかり,それに応じたスキルも必要となる
マニュアルから離れると失敗のリスクが高く,失敗した時のリカバリーも困難.そして更なる高みを望もうとすると,途端に高いスキル等が求められるってことですな.
これもタンジュ作業のルーチンワークから,クリエイティブな業務への昇華の話しと言い換えると,色々としっくり来る部分があります.
やってみせて,言って聞かせて,やらせてみて,
ほめてやらねば人は動かじ.
話し合い,耳を傾け,承認し,任せてやらねば人は育たず.
やっている,姿を感謝で見守って,信頼せねば,人は実らず.
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