お湯が早く沸き,そして燃料も節約できるコンパクトなシングルバーナー: Primus EtaExpress
昨年のうちにポストしようと思いつつ,気がついたら1年経ってしまいました….
今回紹介するのは,EtaExpressというPrimus製のシングルバーナーです.フライパンやポットもセットになったコンパクトなソロ縦走/ツーリングに持って来いの製品なのですが,そのウリはコンパクトさだけではありません.熱効率が高く,短時間で水を沸騰させることの可能なポット.そして副次的に燃料消費も抑えられるというメリットもあります.
普通のバーナーの方が,汎用的で使い勝手が良さそうな感じもしますが(例えばここで紹介したものは安い割に実に使える),実際にはお湯が沸かせられれば用が足りることも多いわけです.そして食事に関しても,レトルトやココで紹介したようなアルファ米中心であれば,お湯だけで事足りてしまいます.そういう意味では,短時間でお湯が沸くというのは実に有用.
このジャンルの製品では,国内ではJETBOILが有名です.しかしEtaExpressは国内では正規ルートでは販売されていません.国内に出回っている物は,取り寄せなどして輸入した品です.でも,そこまでしてもコレを欲しがる人もいます.
私はというと,耐風性が高いのと,ゴトクの形状が一般的な点に惹かれました.ちなみに私はヤフオクで1万円弱で競り落としましたが,最後の15分はかなり熱い戦いになりました….
届いたのはコレ.箱もコンパクトです.
開封済みでしたが,未使用品です.あっちで購入した際の値札も付いていましたが,この金額で買ったとすると,間に入った人はあんまり儲かっていないような気が.
各国語でスペックが書かれていますが,国内未発売の製品なので,当然日本語の説明はありません.
一式はこのようなスタッフサックにすっぽりと入っています.
半分メッシュ状になっており,通気性があります.完全に水滴を拭き取らなくても乾燥させられるので便利.
内容物一式.結構ゴチャゴチャと入っています.
まずはパン.柄の部分が折りたためるようになっています.
表面加工がされており,焦げ付きにくくなっています.フライパンがあると料理のレパートリーが広がるので便利.
次にポット.容量1リットル+αの胴長の鍋のような感じです.こちらも柄が折り畳めるようになっています.が,ロック機構が無いのでちょっと使いにくいかな.
お湯の注ぎ口が付いてます.右利き専用だけど,このような配慮は実にうれしい.
そしてEtaExpressのポットの底面に付いているコレが肝.
下から見るとこのようになっています.中央にバーナーの炎が当たるわけですが,周りのフィンがポットの底面に添って逃げてしまおうとする熱を掴んで蓄えます.この仕組みにより,熱効率を上げるわけです.
そしてこれがJETBOILに対する一つのアドバンテージとも言える風防.
そして本体は更に小さな袋に収められています.
中身は折り畳まれてこのような形状になっています.
ODのガス缶は,500g,250g,150gと3種類のサイズがありますが,やはりコンパクトなEtaExpressには150g缶が似合います.実にコンパクトでかわいい.
並べるとこんな感じ.一見デカく見えるかもしれませんが,iPhone4のサイズと比べてみて下さい.
風防はこのようにガス缶に挟んで固定します.
本体はゴトクを広げてこのような形にセット.これで準備完了.
EtaExpressの利用形態はこのような形になります.
"EtaExpress"には,ストーブの方に風防を取り付けるタイプもあるようです.実際にWeb上でも散見するけれど,詳細は不明.メーカーのページでも見つけることが出来ませんでした.公開されている写真を見ると,風防の形状が少し違うだけのようにも見えます.
で,1リットルという容量は,微妙と言いますか絶妙と言いますか用途によって微妙に足りなかったりジャストフィットする容量.ソロなら問題無いんじゃないかな.
点火.詰まった穴も無く,轟々と音を立て,非常に綺麗に燃焼しています.
で,ここに取り出しましたるのはカートリッジスタビライザー2
.
ガス缶を乗せる台です.このように広げて使います.
多少凸凹した地面でも安定しておけたり(特に150g缶を使うときは必須でしょう),缶が直接地面/雪に触れないため,寒い時期の点火が容易になるというメリットがあります.1個持ってると便利かな.
150g缶に乗せるとこんな感じ.実力を秘めつつコンパクトにまとまったシステムに,頬ずりしたくなる程の愛着を感じます(^^;
ポットの中に一式収まるのですが,このように150gのガス缶も1つ入れることが出来ます.
本体を一番上に入れ…
パンで蓋をして収納完了.
***
では早速使ってみましょう.
背中に視線を感じつつ,500g缶を付けてベランダでクッキング.まずはパンにオリーブオイルを引いて…
目玉焼き.
両面焼き or 水を投入&蓋をして蒸すってことをしても良いけど,オリーブオイルを多めにし,オイルで煮る感じに調理にすると簡単にうまく焼けます.
そしてこちらのエントリーで紹介した,フォールディングトースターで食パンを焼きます.火&遠赤外線で焼くと美味いんだ,これがまた.
このトースターですが,Amazonでも2型を扱い始めた
ようです.
お約束のラピュタパンの完成.美味いぜ~.
注意点は,EtaExpressのバーナーは中央に火力集中するタイプなので,このように中央が焦げやすい点.通常のクッカーであれば特に問題にならないけど,食材を直接火にかけて調理する場合は注意.
***
次にEtaExpressのアドバンテージである,熱効率/燃料の消費量について実験してみました.実験は,『500mlの水を沸騰させるのに必要な燃料を計測する』という方法で行いました.
まずは使用前のガス缶の重量.544.5g也.
500mlの水を入れて点火.
ここでちょっとEtaExpressユーザ向けのTIPSです.
この写真のように,バーナーを風防に対して少し回転させて固定すると,点火や火力調節が行いやすくなります.でも,風防の切欠きがかなりずれるのがちょっとアレかな.
火にかけて30秒しないうちにボコボコと気泡が上がってきます.
1分半程でグラグラと沸騰します.早っ.
ガス缶の重量は538.5gになっていましたので,6gのガスを消費したことになります.
次に比較実験.一般的なシングルバーナーとして,コチラで紹介したCAPTAIN STAG M-7900
を使用し,500mlの水を沸騰させてみましょう.
クッカーはコチラで紹介したsnow peak トレック1400 SCS-009を使用しました.
ポットの熱効率を見るためには,バーナーを同じにしてポットを一般的なクッカーに変更した実験をした方が適切です.しかし今回は,『EtaExpress と 他のシステムの比較』という目的でこのような実験を行っています.
完全に沸騰するまでには,3分30秒かかりました.多少火力調整をしましたが,それでもEtaExpressの倍以上の時間がかかっています.
ガスの消費量ですが,18gでした.EtaExpressの3倍です.凄まじい差が出ました.
と,このように,通常のシステムの半分以下の時間かつ1/3の燃料で同量の水を沸騰させることが出来ました.これは凄い.
特に燃料消費量の低さは予想以上でした.これまでガス缶が3本必要だった旅程が1本で足りる計算になるし,250g缶が必要だった所を150g缶で補って余りあるということになります.行動期間を伸ばしたり,荷物を減らす際には実に有効なツールと言えそうです.
この他,耐風性も特筆に値します.通常のバーナーでは吹き消されてしまうほどの風があっても,何とか堪えていました.
と,このような素晴らしい製品ですが,国内正規ルートでは扱いが無いのが残念なところ.ただ,冒頭に書いた通り,オークションにはコンスタントに出品されているほか,最近は楽天で扱う店が出始めたようです.
『JETBOILではなくてPrimusの方が欲しい!』という方は,チェックしてみて下さい.
最後にこの製品で(殆ど唯一の)デメリットに感じた点を書いておくと,火力調整の困難さがあります.単純に湯を沸かすような用途では問題にならないのですが,料理をする際には問題になります.
構造上,ポット本体に蓄熱されてしまうため,ガスの火力を落としても,即,内容物への熱の供給が十分に低下するわけではありません.そのようなわけで,『吹きこぼれそう!』となって火力を絞っても,収まるまでにラグがあり,吹きこぼれた後に沸騰が収まることも.
特にポット一杯に水を入れて調理する場合はご注意を.
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コメント
コメントではご無沙汰しております。
書き始めるとクドくなりがちなので遠慮して、普段は「見てるだけ~」の私ですが(笑)、更新を楽しみにしています。
今年に入ってから、自分でもブログやFBを始めて感じることですが、紹介したいモノがあっても、写真を撮りながら作業するって意外と大変なんですよね(笑)。
モノ系の記事は特に楽しみにしていますが、記事の構成なども、とても分かりやすくて参考になります。
長くなりそうですので、この辺で失礼します・・・。
投稿: traveler | 2012年8月12日 (日) 13時16分
コメントありがとうございます.
ネタのストックがたまる一方で,アウトプットがなかなか出来ない状況ですが,徐々にでもアップしていくようにします.特に文具系は寝かしている間に旬を過ぎてしまってお蔵入りになることもあり,辛いところです…
投稿: tadachi | 2012年8月13日 (月) 23時20分