2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

AdSense


AdSense


SNS

  • SNS

« 『おおかみこどもの雨と雪』を観た | トップページ | ポータブル・フォトプリンタを再評価する:Canon CP800 »

2012年8月 2日 (木)

読み出したら止めるの困難:ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり

一部では『神小説』とまで言われているようだけど,私はAmazonに執拗にオススメされるまで知りませんでした.

まぁ試しに1冊…と,買ってみたのが運の尽き.このところあまり自由になる時間が無いってのに貪るように読み始め,睡眠時間も削って全5巻を読了.

1巻あたり500P以上あるので,5巻で2500P以上.これは結構ヘビーなボリューム.でも,読んでいて『ちょっと飽きたな』なんて感覚が無く,最後までワクワクしながらページをめくって行ったら最後まで読み進めてしまったという感じ.

この小説は麻薬的な中毒性と常習性があるため,とても危険です.表紙の絵を見ると少し不安を感じるかも知れないけど,中身はエンターテイメントとして超一流.夏~秋にかけてちょっと読書の時間を作れそうな人には,諸手を挙げてオススメしたい.

特にミリタリ一般,ガンダム(ファースト),攻殻,地獄の黙示録,エイリアンetc,アニメやSF映画が好きな人向けのネタも散りばめられているので,読み始めたら即,魂を奪われてしまうでしょう.

粗筋はというと,ある日新宿に異世界と繋がるゲートが開き,そこから異世界の軍勢が攻めてくる.これを何とか鎮圧し,安全保障上の決断として,ゲートの向こうの限られた範囲に自衛隊を派遣.『特区』と呼ばれるゲートの向こうの異世界は,ドラゴンやエルフ,ドワーフ等が居るファンタジー世界.そしてヒト種は皇帝を立てた君主制の帝国を持ち,中世ヨーロッパのような文化・文明.

自衛隊は64式小銃や74式戦車,F4ファントム等の二線級の兵器を持ち込むが,文明レベルが違いすぎ,戦えば自衛隊のワンサイドゲーム.

しかし自衛隊は植民地化のために踏み込んだわけでは無く,支配地を広げるなんてことはしない.先の銀座の戦いの損害賠償を求めると共に,戦争を終結させることが(日本の)目的.しかし,特区の混乱した政治情勢や,天災とも言えるドラゴンの厄災に巻き込まれたりします.そして特区は手付かずの自然や資源の宝庫.当然ながら米中をはじめとする各国には様々な思惑があり…って要素が話を面白くします.

と、書くとちょっと堅そうな話に思われるかもしれませんが,実際には主人公の伊丹二尉をエルフやダークエルフ,そして魔道師,ゴスロリを着た神の眷属等,レディースが周りを固めてまるでヒロイックファンタジーのような展開(ドラクエで自分以外は全部女のパーティーを組んだような感じ).しかし,主人公は所謂アメリカンヒーロー的な感じでは無く,日本的ヒーローで,所謂ユル系.

この手の小説では,『作者が思いっ切り趣味に走った挙句に自己陶酔し,読者が置いて行かれる』パターンや,『無理して背伸びして自己顕示やメッセージ性のあるカタイ話ばかりになり,全然面白くない』パターンが懸念されるわけですが,『ゲート』に関しては全くこのような心配はありません.適度に考えさせられつつも,純粋に楽しめます.そのさじ加減が天才的にうまいです.

楽しみ方が似たような小説といえば,私は皇国の守護者を挙げますが,『ゲート』は既に完結しているので,安心して読み進められる点が一番大きなアドバンテージかも.

***

で,作品を少し引いた目で見てみると,自衛隊モノとしては,戦国自衛隊(絶版!?)という超名著があり, 続 戦国自衛隊戦国自衛隊1549という小説がが出ていました.そしてこれらは映画化もされており,戦国自衛隊(今度BDが出る!!千葉真一のカッコ良さをハイビジョンで見られる!!)や戦国自衛隊1549があります.

一連の作品は,何れも『自衛隊がタイムスリップし,戦国時代の日本で当時の武将相手に戦う』話と言うことが出来ます. これら作品の面白さはと言うと,

  • 近代兵器の圧倒的な戦力
  • 現地の武将や大名達との政治的な駆け引き
  • 兵站(補給)が無いことによる,戦力の先細り
  • 元居た時代へ戻りたい・戻れるのか?というハラハラした展開
  • 苦悩を抱えた自衛官達の反目や派閥争い,グループからの離脱など
  • 過去の歴史を変えてはならないという,暗黙の了解的なパラドックス

辺りに集約されるでしょう.

ところが『ゲート』では,これら要素が(先頭から2つを除くと)全く無いんです.

ゲートが開きっぱなしなので常に潤沢な補給を受けられ,そして自衛隊としての組織・規律が守られているために組織的におかしな事にならず,また,タイムパラドックスの心配も無いので変な制約も無い.そして一連の作品にあったような,『一時的には明るく爽快だが,常に終末感や先細り感を伴った暗い雰囲気』という物もありません.

じゃぁこの作品はどこにその面白さを出しているのかというと,

  • 戦えば圧倒的に勝つという絶対的な安心感/優越感.そして『悪い奴らを叩きのめせ!』(あるときはドラゴン退治)という爽快感
  • ファンタジー世界・中世ヨーロッパ的社会という,憧れを持つ世界の設定
  • 何故か結果的に主人公に思いを寄せることになる女の子達
  • 何事にもコミカルな明るい展開

辺りでしょうか.

一応全編を通して一つの大きなミッションがあるわけですが,それ以外にも様々なイベントが発生し,ミッションになり,そしてそれらをクリアしていくという構成です.そしてクリアの都度,様々なカタルシスが得られ,同時に様々な願望(※エロ以外)が満たされます.

しかし,単なる娯楽作品というわけではなく,著者からのメッセージもかなりあります.

  • 利己的/日和見な政治家に対する不信
  • 歪曲報道をするマスコミに対する不信
  • 自衛隊は何をやっても左巻きに叩かれる
  • 中国・ロシア・アメリカは信用おけないぜ

辺りはかなり明確に描写されていました.

とは言え,説教臭くクドクドと書かれるのでは無く,さらっと皮肉っぽく描かれて『にやり』とさせられたり,最後にボコボコにされるための配役にされたりといった感じであるため,娯楽作品としてのテンポの良さを損なってはいません.

繰り返しますが,ミリタリ・アニメ・SF映画好きの人はこの小説を読むべきです.MUSTです.試験に出ます.楽しめること請け合いです.そして読み終わった後,きっとこの本を紹介されたことを感謝し,別の友人に薦めたくなるでしょう.

まずは騙されたと思って1巻だけでも良いので,読んでみてください.

『これだけのボリュームの小説を読む時間はちょっと…』という人には,コミックも出始めたので,こちらもオススメしておきます.

個人的には,絵は小説版の表紙より,コミック版の作者の方が好み.ただし,まだコミックは完結してい点に注意.『先が読みたい~』となって,結局小説を読むことになるかも.ちなみにコミックでは,小説の1巻の丁度真ん中辺りまで話が進んでいます.

* * *

と,いうことで,陸自・空自と違い,全く活躍の場がなかった海自の作業帽の横に読了した5冊を積んでみた.作中では,これこれで描かれていたからいいやん…と,揶揄されていたけれど,何とかちょっとくらい海自の活躍の場があってもよかったんじゃないかな~.

あと,我ながら,これだけ集中的に大量のページ数を読破したのは久しぶりかも.いろいろな意味で満足です.

Gate

« 『おおかみこどもの雨と雪』を観た | トップページ | ポータブル・フォトプリンタを再評価する:Canon CP800 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

私も読みましたがあれは定期的に読み返したくなりますね

あと、最近外伝が発売されました。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88-%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E5%BD%BC%E3%81%AE%E5%9C%B0%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%81%E6%96%AF%E3%81%8F%E6%88%A6%E3%81%88%E3%82%8A-%E5%A4%96%E4%BC%9D%E5%8D%97%E6%B5%B7%E6%BC%82%E6%B5%81%E7%B7%A8-%E6%9F%B3%E5%86%85-%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%BF/dp/4434171291

実は私も外伝を購入し,正に読み始めた所です.
氷風のクルッカは先月読了したのですが,こちらは元ネタをどうアレンジするかに期待が大きかった分,思ったよりもちょっと…という感じでした.やはり「ゲート」をネバーエンディングストーリー化し,グイン・サーガかガラスの仮面かと言われるほど,書き続けて欲しいなぁと(^^
http://www.amazon.co.jp/o/asin/4434167316

カクテルを飲みながら読むことをお勧めする
ピニャコラーダ
http://www.misichan.com/cocktail/d/cocktail157.html
ゾルザル
http://www.cocktailtype.com/recipe/recipe_0168.html
ヴィフィータ
http://homepage3.nifty.com/jizake-miyamoto/1242.html

たぶん作者は酒飲みなんだなW

ちなみに健軍は熊本の地名
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%A5%E8%BB%8D%E7%A5%9E%E7%A4%BE

最近、途中でほっぽらかしていた涼宮ハルヒを
読んでいて気がついた
どこかで読んだシーンだと思ったんだ
ゲートの2巻炎龍編のP87~P89でのレレイとヤオがハーブティーを飲むシーンだが
レレイがヤオにティーを入れて勧めるときに
「飲んで」「飲んで」「・・・・・・それが現実」って言うやり取りは長門が自分のマンションに来たキョンに
お茶を勧めるシーンのパロディだよね?

実はハルヒは読んで&観てないので,話しに付いて行けずに置いてきぼり食ってる感じ orz

でも,私が分かる範囲でもあちこちにパロディが仕込まれていて,元ネタ知ってるとニヤリとする部分が多いので,話を聞くと『なるほどー』という感が.

特地の将来はこうなる
http://www.youtube.com/watch?v=cBlRbrB_Gnc&feature=player_embedded

この動画は面白いwww

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 『おおかみこどもの雨と雪』を観た | トップページ | ポータブル・フォトプリンタを再評価する:Canon CP800 »