ポータブル・フォトプリンタを再評価する:Canon CP800
一昨年前にPolaroidのPoGoを紹介しましたが,その後のZink技術の発展に大きな期待をかけていたにも関わらず,Polariodから出た後継機は若干の画質の向上と共に,ペーパーを大判化.
個人的にはPoGoは『手軽な大きさ』と『シール印刷』という点に魅力を感じていたので,画質の改善は兎も角として,版の変更はマイナスでした.
このサイズであれば,もっとマトモな印刷品質で印字できるフォトプリンタがあるわけで…と,いうことで久しぶりにリサーチしてみると,このゾーンのラインナップが急速に萎んでいることを知って愕然.
以前はEPSONやCanonの他,富士フィルムもいくつか製品を出していたように思うのですが,現行商品と言えるのは,EPSON E-350W とCanon CP800 くらいになっていました.おまけにCP800は2010年年の発売ですので,2年もモデルチェンジしてません.そのうち終息するかも….
そんなわけで,少々日陰者っぽい扱いになっている感じがしないでもないのですが,『ポータブル・フォトプリンタ』って意外と便利なので,再評価を促すために少し紹介してみます.
まずは『ポータブル・フォトプリンタ』の定義ですが,
- 小型軽量なこと
- A4が印刷できず,L版の印刷が出来ること
- 写真印刷に特化していること
- メモリカードスロットがあり,PCレスで印刷できること
- 1万円前後の普及価格帯
等の条件を満たしたプリンタかなと思います.
この手の商品,元々は
- PCが使えない人向け(メカ音痴,高齢者向け)
- デジカメから手軽に印刷できるように
といった用途でプッシュして売られていたいたような覚えがあるのですが,EPSONは年賀状印刷という用途も取り込もうとしている様子.ただ,EPSON E-820のように,使い易くするために液晶やキーボードが付くのは良いとして,価格が5万弱もするのは『ちょっと違う方に進化してるんじゃ…』なんて思う部分もあります.
元々市場が大きくないので,周辺用途を開拓して別のゾーンの人達に訴求しないと全然売れない…ってことなのかなと想像しますけど.
で,話戻ってポータブル・フォトプリンタですが,私はタイトルの通り,Canon CP800(ブラック)を購入しました.決め手は値段とランニングコストの安さ.本体は9千円弱.
消耗品はKL-36IP.紙とインク込みの108枚分で2000円弱.1枚辺りのランニングコストは20円を切ります.
人によってはKGサイズが欲しいかもしれないけど,普段使いであればL版で十分じゃないかなと思います.私はむしろ一回り小さくても良いくらい.
本体と付属品.ACアダプタの巨大さが目立ちますな.出力(電圧・電流)を見ると,『仕方ないか…』と,思っていまいますが….
本体のサイズはこんな感じです.携帯性はPolaroid PoGoのように屋外に持ち出して使いたくなるようなサイズでは無いけど,拠点間を持ち運ぶのには余裕でセーフなサイズです.
純正キャリングケースは出ていないのですが,私はダイソーのハンドル付きのケースを使っています.本体とACアダプタ,そしてKL-36IPがうまい具合に入るので,一式を持ち運ぶ際に便利.
本体上部には液晶画面および操作系がまとめて配置されています.
手前側サイドには各種メモリカード用スロット,そして用紙トレー挿入用の口(トレーが刺さっていないときは蓋を出来る).
後ろ側はこのようになっています.下側の薄いスリットは,印刷時に用紙が往復するためのスリットです.印刷時には用紙トレーの手前側だけで無く,奥側にも用紙1枚分のスペースが必要になります.
蓋を開けるとこのようになっており,専用バッテリ を装着出来るようになっています.とは言えこのバッテリ,6千円近くする上に36枚ほどしか印刷できず,重さが268gもあります.
『ACが取れない所で若干数枚印刷する必要がある』という場合は購入するのも良いと思います.しかし,本格的に屋外でガシガシ使うためには,バッテリを複数本用意しないと厳しそうです.バッテリの充電時間が長いこともあり,止まり木充電も焼け石に水かと.
車で移動する場合は,シガーソケットからのAC変換アダプタを使う方が現実的かも.
USBポートはサイドにあります.当然PCから(かなり制限がありますが)プリンタとしても使用出来ます.ここにBluetoothドングルを刺せば,BTプリンタとしても利用できるようですが,私は試していません.
KL-36IPの中身.インクリボンが3本と,18枚ずつにパックされた用紙が合計108枚入っています.
一般のプリンタは,極端な消耗品商法にシフトしていますが,CP800では用紙込みで1枚20円のランニングコストに収まっています.この種の特殊規格商品としては,かなり良心的な印象.
インクリボンはサイドから取り付けます.
蓋をパカッと開け…
押し込んで…
カションとセット.
何気に昔の熱転写プリンタを思い出します.当時は高価なドットマトリクスプリンタが買えなくて,本体の安い熱転写プリンタを買ったものの,インクリボンが高くて『印刷の1ドットは血の1滴と思え!』の気持ちで印刷した覚えが.
カートリッジ1個あたりL版36枚(18枚ずつにパックされた用紙2パック分)を印刷出来る計算になります.枚数がフィルムカメラを思い出させます.
用紙はこの専用トレーを使用して給紙します.
用紙を入れたままで透明のフラップが閉じ/開き,それぞれ持ち運び用と給紙用の2形態になります.
本体にセットするとこんな感じ.印刷時には縦方向にかなり場所を取ります.
ACを繋いで電源を入れると,液晶に灯が点ります.
液晶はこのようにチルトします.そしてPCレスで一通りの作業が出来るようになっており,印刷の設定も日付印刷,自動写真補正,赤目補正,美肌,明るさ補正,日付スタイル,レイアウト(1/2/4/8面配置/インデックス等),フチなし 等々,様々な設定をすることが出来ます.
では早速印刷してみましょう.
デジカメで撮影した画像を納めたSDメモリカードをスロットに挿入.
このような感じで,プレビュー画面で内容を確認出来ます.そして印刷する写真を選びます.
印刷を選択すると,少し待ち時間があって…
印刷がスタートします.
印刷時,色を乗せた用紙が手前に『にゅう~』っと出てきて,その後吸い込まれて次の色の印刷が開始され…という往復運動をします.途中,プリンタの向こう側にも紙が飛び出るので設置場所に注意.
イエロー,マゼンダ,シアン,オーバーコートといった具合に4往復します.それぞれ約10秒くらい.
次第に仕上がっていく印刷中の様子を見ていると,何気に楽しい(^^
その間,液晶画面には進捗状態が表示されます.
で,印刷が終わると,用紙トレーの上に吐き出されます.印刷時間は1枚約40秒くらい.
用紙にはサイド部分に白い部分がりますが,ここはミシン目に沿って取り除くことが出来,ふち無しになります.
この印刷例では上下左右が黒い額縁状になっていますが,これは印刷する画像の画素数および縦横比に依存するようです.EOS Kissx5ではなく,PowerShot S90で撮影した写真を印刷したところ,きれいに端まで使った印刷になりました.
4UP設定ではこのように印刷されます.
流石にミシン目が自動で入るわけではないので,はさみ/カッター等を使用し,自分で切り出す必要があります.
ダイスキンに貼り込むとこんな感じ.2P,4Pは綺麗に収まりますが…
一見1Pが横幅ピッタリサイズに見えますが,微妙にはみ出しています.A6サイズのノートであれば,問題ないのですが,スリムタイプの場合は注意が必要です.
気になる印刷品質ですが,発色が実に美しいです.そして印刷方式が昇華式ということもあり,粒状感が出ないのも良いです.実際の解像度はそれ程高くないのですが,解像感が高く感じられます.そしてオーバーコートされるため,耐久性も高い.
ラボで安いプリントに出すくらいであれば,これで印刷した方が遙かに良いでしょう.
スタンドアロンで使うことも出来ますが,ドライバをダウンロード&インストールすることにより,Win/Macからも利用することが出来ます(*).
Macでしか試していませんが,カレンダー印刷等の付加機能が使える反面,少々バギーです.2up印刷をしたところ,単なる縮小印刷になり,用紙1枚に対して1つずつ,合計2枚印刷されるという結果に.うーん.
(*)2012/8現在,Windows7までとMacOSX 10.7までに対応.果たしてWindows8やMountain Lionには対応するのだろうか….まぁ対応しなくても,最悪一度SDメモリに書き出してCP800に突っ込んでやれば使えないことは無いけど.
* * *
同僚に頼まれてデモしたところ,その同僚も即,購入に至りました.そのくらい『用途に合えば』購入を決意させる製品です.そのようなわけで,写真を印刷することが多い方,もしくは『手軽に写真印刷をしたい』というユーザを抱えている人は購入を検討しても良いと思います.
また,夏のお盆の時期,家族を連れて帰省したり親戚が集まったりする機会が多いと思います.そんなときにも,このプリンタは大活躍することでしょう.
やはり『後で印刷して送るからね~』ってのは結構面倒です.目の前で『コレとコレが欲しい』と指示してもらい,その場で印刷して手渡しできるのはメチャクチャ楽です(流石に何十枚もとなると厳しいですが).
また,流石に『飲み会の盛り上げ便利グッズ』と言えるチェキ程の手軽さは無いのですが,その代わり,画質をはじめとする品質は圧倒的にこちらの方が上です.おまけにオリジナルはデジタルデータで残しておける(普通のデジカメが使える)ので,トータルでの使い勝手的にはこちらの方が良いでしょう.
ただ難点は,購入検討をしているユーザ限定ですが,今のうちに買っておかないと生産終了などで入手出来なくなる可能性があること.
消耗品の入手性は若干気になるところではありますが,店頭入手が困難でも,大抵は通販であれば購入できます.そして本体さえ購入できてしまえば,日本のメーカーは消耗品を実に良心的と言えるほどの長期間期間販売し続けてくれるので,実用上はあまり心配ないでしょう.
と,いうことで,自分が使っている姿を想像できた場合は,早めにゲットして使い始めるが吉です.
[2012/08/06追記]SELPHY CP900 が発表になりました.発売日は9月上旬とのこと.CP800との主な違いは,WiFi経由の印刷が可能になったこと.WinやMacからだけでなく,iPhoneをはじめとするスマホからも無線で印刷可能とのこと.新機種が出たので,これであと2年は戦えそう(^^
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