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« 通称「シマコ」がストーカーして逮捕されてた件 | トップページ | マクロ可能な標準ズームを使う:SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM »

2012年6月13日 (水)

便利ズームレンズを買ってみた;TAMRON 18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD

デジイチの特徴の一つは,レンズを交換可能なこと.これは交換不可なデジカメと比較して,大きなアドバンテージになります.用途に合わせた適切なレンズを装着することにより,ベストなパフォーマンスを発揮することが可能になるからです.

画角』という面で見てみると,大抵のデジイチには,広角〜望遠までをカバーするために2本のレンズをセットにしたモデルが存在します.EOS KissX5の場合,『ダブルズームキット 』というのがそれ.広角の18mmから55mmまでの『標準ズームレンズ』と呼ばれるレンズのほかに,55mmから250mmまでの『望遠ズームレンズ』が付いてきます.

ギャップ無しで18mm〜250mmまでの範囲をカバー出来るほか,画質および価格面で,とてもお得感があります.

でも,『1本で18mm〜250mmまでカバーするレンズがあれば,別に2本に分ける必要ないんじゃ…』と考える人もいるでしょう.今回紹介するレンズは,正にそのようなレンズです.

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この手の広角〜望遠までをカバーするような焦点距離の幅の広いレンズのことを,『便利ズーム』なんて呼び方をします.この手のレンズを使用し,複数本(一般に2〜3本)に分けられている画角を1本のレンズにするメリットは,以下のようなものでしょう.

  • レンズ交換しなくて良い
  • 荷物が減る

前者はデジイチのメリットをスポイルする感がありますが,利用シチュエーションによってはむしろ好ましい場合があります.例えば頻繁に広角/望遠を切り替えて撮影する必要があったり,激しく埃が舞っている等レンズ交換が憚られるような所での撮影が考えられます.ハイアマチュア〜プロであれば,予めそれぞれの画角のレンズを装着したカメラを複数台首からぶら下げるシチュエーションです.

後者はすぐに納得出来ると思います.やはり旅行や登山等,荷物を少しでも減らしたいときにはレンズ1〜2本分の容量や重さも莫迦には出来ません.

そしてその一方,デメリットとしては,次のようなものが考えられます.

  • コストアップ
  • 画質の低下

折角ダブルズームキットを買ったのに,キットレンズでカバーしている画角と被る物に追加投資するという無駄感は確かにあります.また,レンズ1本になるからと言って,キットレンズで揃えるよりも安くなることはまずありません.とは言え,メリットに対して価格面で折り合いが付くのであれば,(十万もするレンズではありませんし)それ程大きな問題ではないでしょう.

しかし,2番目の問題は許容出来ない場合があるかもしれません.『広角と望遠を1本で』ということは,かなり光学的に無理があるようです.レンズが暗くなってしまったり,解像度が悪くなったり等,様々な部分に反動が来ます.金に糸目を付けなければある程度解決できるのかもしれませんが,完全無欠のデメリット無しというのはかなり厳しそうです.『便利ズーム』は『万能ズーム』じゃないんです.

と,言うことで,画質優先で綺麗に撮りたいということであれば,やはり複数本のレンズを運用するのが良いでしょう.キットレンズと言えども侮る無かれ.特にEF18-55mmは素晴らしい性能を持っています.

でもこれらデメリットを理解しつつも,敢えてメリット面を重視するような場合は,『便利ズームレンズ』は,大きな満足感を与えてくれるでしょう.

EOS KissX5で利用可能な便利ズームレンズとしては,

辺りが候補に挙がるでしょう.場合によっては,SIGMA 18-200mm F3.5-6.3IIDC OS HSM や,手振れ補正がないけど強烈に安いTAMRON AF 18-200mm F/3.5-6.3 XR Di II LD も候補に挙げられるかもしれません.『気軽に便利ズームを試してみたい』という意味では,最後に挙げたTAMRONの18-200mmが良いかもしれませんね.

何れも一長一短なのですが,私が最終的に3番目のTAMRONを選択した理由を挙げると,以下のような感じです(あくまで私の個人的な判断です),

  • 純正はキットレンズと比べ,望遠側で50mm程焦点距離が短くなるほか,AFがかなり遅いという評判
  • SIGMAは色味は大変好みだけど,各焦点距離におけるF値がTAMRONと比較して早くに暗くなる.こちらで詳しく解説されているけれど,TAMRONは238mmになって初めてF6.3の暗さになるのに対し,SIGMAは147mmでF6.3に落ちる.暗いとシャッター速度を稼げずに手振れを起こしやすくなるし,ISO感度を上げにくくなるために画質が相対的に低下する等,好ましくない.

そのようなわけで,TAMRONはどちらかと言うと消去法で最後まで残った感じですが,これはこれで実に素晴らしいレンズです.メーカーページを見て,その良さを知って下さい.

と,いうことで,最終的に購入したのはTAMRON 18-270mmF3.5-6.3 Di2 VC PZD B008Eとレンズ保護用のKenko 62S PRO1D プロテクター

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箱のアップ.

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数々の受賞記録.素晴らしい.

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箱を開けるときのこの瞬間.毎回そうですが,実にワクワクさせられます.

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レンズ本体と花形レンズフードが入っています.

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そしてKenko 62S PRO1D プロテクター.やはりレンズ保護のために,必ず付けておきたいものです.

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使用開始前に,このような形でレンズに装着.

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操作系はオーソドックスな感じ.ズームの回転方向が純正と逆なのを除くと,手ぶれ補正(VC)のON/OFF,オート/マニュアルフォーカスのSWが純正と同じような配置で付いています.

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便利ズームでよく付いているのは,このLOCK機構.

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このようにロックすることにより,下方向に向けた際にレンズの自重でビヨーンと伸びてしまう,所謂『自重落ち』を防ぐことが出来ます.

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フードを付けるとこんな感じ.広角~望遠までサポートするため,スッポリと覆うという形ではありません.

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ボディに装着.バランスが良いし,ゴールドのリングも映えますな.

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正面から見るとこんな感じ.『大口径』ではないのですが,純正よりも一回り大きいので,少しだけ迫力があります.

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上からSIGMA 30mm,Canon 18-55mm,Canon 55-250mm,TAMRON 18-270mm.キットレンズの丁度中間サイズです.かなりコンパクトに収まっているのが分かります.

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それぞれにフードを付け,実際の撮影形態にするとこんな感じ.

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最大望遠にするとこんな感じ.流石に端が270mmあるだけあって,伸びしろは非常に長いです.

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ボディに付けた際の広角端状態.

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にゅーんと伸ばして望遠端.ちょーっとバランスが悪い感じですね.でも,レンズヘビーで重量が大きく偏って撮影困難になる…と,いうことは無いのでご安心を.

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問題は収納…と,思っていましたが,手持ちのドライボックスに一通り収まりました.何とかセーフ.

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では,このレンズを持ち出して,実際に撮影してみましょうかね.

以下は空自の奈良基地祭(H24)の様子.まずはF1.このようなアングルの際には,広角が必須です.

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そして『最後の有人戦闘機』と言われたF-104.山崎豊子の不毛地帯に出てきた機体です.

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ナイキ-J.デカイですな.

と,いうことで,広角バッチリです.樽型収差が結構出るという話でしたが,被写体がこのような感じだと殆ど目立ちません.目立ったとしても,後処理で補正する方向で.

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で,次は望遠側.270mmでフライパスするF-2とT-4.

少しもやっとした雲がある天気でしたが,かなり良い状態で撮れました.本当はF-15も来て欲しかったな&もっと低空飛んで欲しかったなというのはありますが…

まぁ何れにしても,コンデジでこのレベルの撮影は無理です.周りに居たコンデジな人達は,点にしか映らない機体を見て『これ(コンデジ)じゃ無理』と愚痴てました.

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F-2をトリミングして少し補正するとこんな感じ.画像をクリックして拡大表示シてみてください.ランディングギアのかなり細かな部分まで写っているのが分かります.

望遠側の解像度にはあまり期待してなかったのですが,かなり良い印象.

Th_f2

ちなみに18mmと270mmはどのくらい画角が違うかといいますと,以下のような感じ.
まずは18mm.全体がバチッと写せます.

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そして同じ位置からゲート部分をズームして270mmで撮るとこんな感じ.18mmでは判読出来なかったゲートの文字がしっかり確認できます.

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使用感としては,『便利ズームは便利』の一言に尽きます.『オッ』と思った時に『サッ』と任意の画角で撮れるのは激しく便利です.『もうちょっと寄りたい!』とか『もう少し引きたい!』のようなことが発生し,レンズ交換のためにシャッターチャンスを逃すなんてこともありませんでした.

また,このときは子供を二人連れて行ったのですが,目を離すと勝手に興味の向く所へ走って行く&周りは激しい人混みということで,とても悠長にレンズ交換なんてするヒマはありませんでした.グラウンド周りは少々埃っぽいこともあり,環境要因的にも非常に助かりました.

***

以下,もう少し突っ込んだ話.

まず明るさに関してですが,望遠端がF6.5なのでかなり暗いです.キットレンズの55-250mmはF5.6なので,出来ればこのくらい頑張って欲しいところ.手ぶれ補正があるとは言え,画質的にもシャッタースピード的にも明るいに越したことはありません.

次に解像度.このページで純正の18-55mmとTAMRON 18-270mmの比較が出来ますが,かなり負けてます.キットレンズ侮りがたしということと,便利ズームの限界(SIGMAも同様の傾向)を感じます.

# 定量的に検証できていないのですが一応書いておくと,同じ焦点距離でも,キットレンズよりも画角的に寄れていないようです.そのため,270mmにした場合でも,キットレンズの250mmよりも少々引いて撮った感じに写ります.

そして色味ですが,少々マゼンダかかってる感じです.個人的な主観で言うと,Canonはそのままスッキリ再現し,SIGMAは少し青味かかった感じ.そして個人的には,シャープかつ空気感があるからSIGMAが好み.でも,TAMRONの方が柔らかくて温かみがある感じで好きという人も多いです.まぁこの辺りはデジタルデータの強味を生かし,RAW(またはRAW+JPEG)で撮った後で補正すればどうにでもなるので,あまり大きな問題ではないかも.

(一般的な意味での)レンズの味ということになるとやはり個人の趣向が大きいので,PHOTOHITOでレンズを選び,サンプルを何枚も見て傾向を知るのが良いかなと思います.この辺りは数値に出ないけれど,かなり重要です.

特にTAMRONのこのレンズの場合,ボケ味に関して好き嫌いがハッキリ別れる感じ.私も正直言ってあまり好みではないのだけど,ボケがちょっと騒々しいと言いますか,ザワザワした感じになります.そういう点でもSIGMAの方が好みです.うーん.SIGMA 30mm F1.4 EX DCが(単焦点だけど)神レンズ過ぎるので,比較するのは酷かもしれないですな.

なお,デジイチで撮影した写真が素晴らしく見える一つの要素は『ボケ』だと思うのですが,必ずしもF値が小さくなくてもボカすことが出来ます.例えば以下の写真は,近くの物を焦点距離270mmで撮影したもの.F値は6.5ですが,ズームすることにより,このような感じに背景をボカすことが出来ます.

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構図も画角も異なるので,あくまで参考までにという感じだけど,SIGMA 30mm F1.4 EX DCだとこんな感じになります.このレンズは寄れないので辛い…

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最後にVC(手ぶれ補正)とオートフォーカスについて.
VCは非常に強力で,効いているのがファイルダーを覗いていてよく分かります.普通の(?)手ぶれ補正の場合,OFFにして初めて『あ,効いてたんだ』と分かる感じですが,VCはブルブルしていた絵が『カチッ』と静止するので,効果の程がよく分かります.これは本当に凄い.

そしてオートフォーカスは,速度がちょっと遅いかなという程度で,それ程大きな問題はありません.しかし,極稀に(?),まるでコンデジのコントラスト検出方式のAFで迷った時のように,凄まじく迷うときがあります.先の基地祭でも,F-2がロールして直上に来た瞬間にこのような状態に陥りやがりまして,一番良いシャッターチャンスを逃しました.それまでが順調だったために信頼し過ぎたのが不味かったようです.MFにしておけば良かった….

***

一般に,便利ズームを使うと,写真の腕が上がらないと言われています.適当に撮ってもそこそこ綺麗な写真になるからという理由であり,構図等々あまり考えないようになってしまうからのようです.確かに単焦点だと,構図を決めるために寄ったり離れたりや,どこを中心に持ってこよう…あ,あれが入らない…なんて試行錯誤しながら撮ることが多いので,色々と勉強になる感じがします.レンズ交換必須な場合も同じかな.『あぁ,このアングルで広角レンズに替えて撮るといいかも…』等考えたりする.

でも逆に言うと,『肩肘張らずに撮りましょうよ』派のワタシ的には,むしろ願ったりかなったりです.あまり難しく考えず,写真を撮ることを楽しみましょうよ(^^

まぁ色々と長所もあれば短所もあるレンズですが,個人的にはかなり満足度の高い買い物でした.当初は『キットレンズと単焦点レンズがあればそれでOK』と思っていた私に,新たな扉を開いてくれました.そしてこの事が,その後のレンズ沼の入り口になろうとは知る由もなかったのでした…

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