Polaroid PoGo を使う(1)
日々の記録をする手帳や旅日記帳には,文字だけではなく,挿絵も入れたいところです.
絵が入ると,ビジュアル的に全く別物になります.読み直しのときに楽しく振り返ることが出来るほか,絵は情報量が多いだけではなく,文字を追うよりも多くの記憶を鮮明に蘇らせる切っ掛けにもなります.(簡単な図表でも良いので,書き込んでおくことを推奨.ロジカルな話の場合,数式だけでなく,グラフを描いておくと,パッと見で内容把握できることが多くて便利)
とは言え,絵心のある方々の手帳を拝見させて頂くたびに,『ほぉ』と,感嘆の声をあげてしまう一方で,いざ自分がやろうとすると…….『描く時間がない』とか,『後で描こうとスペースを空けておいたけどそのままになってる』とか,『そもそも絵が上手くない』なんて思ったりしてしまいます.
と,このような悩みを抱えている方に推奨したい方法は,写真を貼り込む方法です.そしてこの目的を達するための手段として,『ほぼ日手帳』ユーザに絶大な人気を誇るのが,今回紹介する『ポラロイドPoGo』です.今年も『ほぼ日のオンラインショップ』では,早速売り切れになりそうですな.
『ポラロイド』と言えば,あのインスタントカメラを連想される方が多いでしょう.そう,あの会社です.そして2001年と2008年に,2回の経営破綻を経験しました.詳しくはwikipediaを読んでいただくとして,その味のある写りには多くのファンがおり,復活を望む声も大きかった(See "THE IMPOSSIBLE PROJECT").そして現在はと言うと,Summit Grobal Groupが5年間の独占的生産・販売権を得て,徐々に復活し始めている所です.
日本でもサミット・グローバル・ジャパンが立ち上がり,本格的に活動を開始し始めています.
『ポラロイドPoGo』は,そんなポラロイド社の主力製品の一つで,
- バッテリ稼動可能な小型軽量のプリンタ
- デジカメやPC等が接続出来る
- 写真が印刷できる
という『モバイルプリンタ』と呼ばれるカテゴリの製品です(かつてはキングジムの『チャップリン』のようなPC用プリンタのカテゴリもありましたが,今回は写真印刷用の製品のみ採り挙げます).
このような商品で,現在入手可能な製品は,
辺りでしょうか.非常にニッチな市場のためか,販売台数はそれ程多くないようです.
そのためもあってか,FUJIFILMのpiviは後継機種が発表されること無く,2010年9月で生産中止と相成りました.画質に定評があったこともあり,非常に残念です.入手したい方は,流通在庫が切れないうちに,早めに購入した方が良いでしょう.フィルムの供給に関しては,製造メーカーが富士フィルムであることを考えると,少なくとも数年は問題ないでしょう.
そして残る2機種ですが,DELLのWasabiとポラロイドのPoGoは,エンジン的にはほぼ同じ製品と見て良いでしょう.フィルムも共通で,zinkという技術を使用しています.文具王のPoGoレビューに詳しい(実に素晴らしい!!)のですが,複数の層を持ったフィルムを,設定された温度で加熱することにより,任意の発色を得るという技術を使用しています.そのため,ポラロイド形式のフィルムのように,現像液の入ったポッドを内蔵する必要がなく(そう,あのポラロイドフィルム特有の白い広い余白には,この袋が内蔵されていたのです),また,フィルムの厚みを薄く出来るのです.そして印刷に際してインクを浸潤させるわけではないため耐水性があり,また,印刷後に印刷面を触っても問題ありません.
その一方で,『印刷品質』は今ひとつです.
超微細なインクドロップ制御が可能になり,超高品質で写真が印刷可能になっている,最近のインクジェットプリンターとは比較になりません.嫁さんの言葉を借りると,『すごく古い写真みたい』,よく言えば『味がある』発色の,解像感が無くて粒状感(的な感じのノイズ感)のある出力になります.また,メンテナンスも少々厄介で,クリーニングを適切に行わないと,すぐに筋入りの汚い出力になります.
最近流行りのトイデジカメや,パーティーグッズとして非常に重宝するチェキ等の出力を楽しめる方でなければ,この製品を使うのは困難かもしれません.いや,場合によっては,『コレ,壊れてる.初期不良じゃないか?』なんて思うかもしれません.そんなわけで,出力を見た後の『これ,いくらしたの?』の嫁さんの問いに対して,
正直な正確な金額を答えられませんでした….
では,『そんな品質の出力をする製品に意味があるのか?』の問に対してですが,
- 出先でバッテリ駆動で写真を印刷できる
- PCを介さなくても,PictBridge対応のデジカメと直接接続して印刷できる
- Bluetooth接続可能で,OPPプロファイル(名刺交換等に使用するために規定されたプロファイル)に対応したPCや携帯電話から利用可(ただしiPhoneはOPPに対応していないので接続不可)
- デジカメ内のオリジナルファイルは綺麗なままで残せるため,例えば家に帰ってから綺麗に印刷しなおすことも出来る.インスタントカメラのように,印刷出力以外は何も残せないということではない.
- 全然使い物にならないという程酷い品質ではない
- 出力用紙が薄く,裏側がシールになっているため,手帳などに貼り込むのに便利
辺りがあるので,一定の需要があるのだと思います.
バッテリさえ持てば,zink(=Zero Ink)の名前の通り,フォトペーパーが尽きるまで印刷可能です.ただし,フォトペーパー1枚あたり30円台の,やや割高と言えるコストがかかる他,PoGoの場合は,15枚程印刷するとバッテリが干上がりますが(バッテリは交換可能).
では次に,PoGoとWasabiとの違いについて比較してみると,次のような感じです.
それにしても,最近は変わった名称の製品が多いですなぁ…zinkは味のある発色なので,本当はWasabiではなく,Wabisabiとか付けたかったのに間違えたのかなぁ…
PoGo | Wasabi | |
ケース | アルミ製 | 樹脂製 |
価格 | 1万円弱 | 5千円弱~8千円弱 (たまにキャンペーン有り?) |
対応フォーマット | JPEG | JPEG, PNG, GIF |
接続性 | トラブルを聞かない | トラブルが非常に多いようだ |
Wasabiに関しては,このような素晴らしいページを読んだこともあり,最後まで悩みましたが,トラブルが少ない(であろう)PoGoを選ぶことにしました.Wasabiは交換用バッテリも廉価に入手できるのが魅力的でったのですが…(多分,PoGoと互換だと思う).それと『最後に転送した写真をもう1枚印刷』ボタンの存在も便利そう….
そしてPoGoの価格に関してですが,実はアメリカでは,$46程で売られています.定価も$49.99.今の円高を考えると,諸々一緒に購入するものがあり,送料が無視できるレベルになるのであれば,通販を利用するのも一計だと思います.
ただし,日本向けはACアダプタが小型なタイプに変更されているほか,マニュアルや保証書などの同梱物が異なりますので,サポートも考えると,国内で購入するのが無難でしょう.
ちなみに『PoGoの黒』と言っても,CZJ-10011B
とCZJ-10011BB
の2種類があります.私は両者間の違いを調査し切れなかったのですが,前者は発売日が2010/2/26,後者は2008/11/20であったこと,JANコード等を考慮して,前者を購入しました.販売価格は多少変動していますが,約千円程差があります.そしてたまに価格の逆転現象が発生するときがあります.
ポラロイドらしいカラフルな箱.
保証書には,『サミット・グローバル・ジャパン』と書かれています.
内容物一式.左は大きさ比較用の『ほぼ日手帳』.本体は文庫本よりも一回り小さいサイズ.その一方で,ACアダプタのデカさが目立ちます.これで小型のタイプだなんて…米国ではどんなサイズのものが同梱されているんだろう.
ACアダプタは,100V~240Vのワールドワイド対応のもの.定格は9V3Aです.
ZINKフォトペーパーが10枚付いてきます.
質感は素晴らしいの一言.手触りも最高.
携帯型ガジェットはかくあるべき.
本体横には電源ボタン,インジケータランプ2つ,デジカメ接続用のUSBポート有り.
反対側には,ACアダプタ接続用の電源端子.
フォトペーパーが排出されるスリッドはこの部分.
反対側に,フォトペーパーを補給時に跳ね上げるカバーのラッチボタン.
電源ボタン以外に操作ボタンが無いという潔さ.そしてステータス表示は,前述の2つのLEDのコンビネーションで行ないます.
バッテリはケースをスライドさせた部分に収納されています.7.4V 450mAhの物.
バッテリに貼られている,『そのまま捨てたらアカンよ』のシール.
zinkフォルムを開けると,10枚1組のセットが出てきます.写真中の一番右はキャリブレーション・クリーニング用の"ZINK Smartsheet".一番左はフォトペーパーのオモテ面,それ以外は裏面をこちらに向けて撮影しています.フォトペーパーセット時は,青いシートのバーコードを下側にして一番下に入れ,フォトペーパーはオモテ面を上にして積み上げます.
パカっとカバーを跳ね上げ,
フォトペーパーをセットします.
10枚一組でセットするように説明されていますが,容量的にはさらに多くの枚数を収納可能です.ただし,クリーニングは定期的に行わないといけないので(詳しくは次のエントリーにて開設予定),入るからと言ってフォトペーパーのみを沢山押し込むのは厳禁です.
カバーを閉めると,電源が入っていない状態でも自動的にシートがロードされ,写真のように排出されます.そのため,購入直後にフォトペーパーを充填する際には,ACアダプタを接続して充電&電力を供給しながら行う必要があります.
ローラーの付近には埃が溜まりやすく,印刷品質に大きな影響を与える場合があります.フォトペーパーセット前に,ブロアー等で吹き飛ばしておくのが良いでしょう.
* * *
次回は,
- 実際の印刷品質に関して
- 使用するフォトペーパーによって品質が変わるのか
等について解説する予定です.
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