ThinkPad X100eのディスクをSSDに換装する
ThinkPad X100eのハード的なカスタマイズとしては,このエントリの続き.今回は,搭載されているHDDをSSDに換装するという話である.体感速度は大きく変わり,また,『道具』として扱う際の慎重さも,大きく変化することになる.
予算と用途が許すのであれば,是非お勧めしたいカスタマイズである.
私の購入したX100eには,HDDとしてFUJITSU MJA2250BHが搭載されていた.なお,BIOS上では『FUJITSU』と出るが,富士通はHDD事業を東芝に譲渡したため,現在は東芝製のこのドライブということになる.5400rpmのドライブである.
5400rpmのドライブの利点としては,静音性や低消費電力,低発熱ということが挙げられるが,その一方で,7200rpmのドライブと比較して低速である.
例えば5400rpmのMJA2250BHと7200rpmのMHZ2250BKを比較すると,平均シーク時間が後者の方が2割ほど短い反面,リード/ライト (3.0Gb/s)時の消費電力は,前者が1.4Wなのに対し,後者は2.3Wとなっており,かなり異なる.
通常の処理で,待ち時間の最大の原因は,ディスクアクセスである.そのため,トータルでの処理速度の向上を計るためには,多少のCPUのパワーアップよりも,ディスクの高速化の方がはるかに利いてくる.
さらにX100eの場合はディスクのアクセスランプが無いため,ディスクアクセスで待ちがかかっている際のストレスは結構な物である(*).主観的な体感速度にも影響する.
(*)何もインジケータが無いよりも,アクセスランプがチカチカと点滅している方が,『必死に仕事をしとるんだし,しゃぁないか…しばらく待つか』と,いう気になる人は多いだろう.見えない所でハマっているにも関わらず,黙って必死にやっているのは良くない.ホウレンソウは基本だよ…って何の話だっけ?
そのようなわけで,
- 少しでもパフォーマンスを上げたい
- 多少の発熱増加やバッテリ稼働時間の低下は許せる
- 大容量のデータを持ち歩く
- 必要費用は1万前後で
という方には,7200rpmのドライブへの換装がお勧めである.
その一方で,
- パフォーマンスを激しく上げたい
- 低発熱,低消費電力も求めたい
- 容量の面では妥協しても良い
- 費用もある程度高額になっても良い
というユーザには,SSD(Solid State Drive)への換装がお勧めである.
SSDが一気に普及したのは,EeePC等のノートPCに搭載されてからであったと記憶しているが,当初は『プチフリ(*1)』に悩まされたり,ファームのバグでデータ消失や寿命の著しい低下の危険性があったり等,不安材料/不具合も多かった(*2).しかし最近の製品では不具合らしき話を聞かなくなって来たので,安定して来たと言って良いだろう.
(*1)出始めの頃のSSDでは,小さいブロックのデータを書き込む処理速度がとても遅かった.そして書き込みが完了するまでは,Windowsがフリーズした.結果,Windowsを使用していると間欠的に短時間のフリーズを繰り返すこととなり,『プチフリ』と呼ばれた.メインメモリ上に書き込みキャッシュを設けるユーティリティソフトを利用し,遅延書き込みを行うことによってプチフリを回避する等の対策が採られたが,根本的な解決とは言えない.
現在販売されているマトモなコントローラを搭載したSSDでは,プチフリは発生しないと言って良いだろう.どのようなコントローラが搭載されているかをチェックすることは重要である.
(*2)最近,mini9に搭載されているSSD(これがまた,盛大にプチフリを起こす…)の故障報告が頻繁に上がっているのが気掛かりである.発売時期から考えて,1年少しで壊れた人が続出していることになる.ただし,障害が発生した人ばかりが報告するため,それが大勢に見えてしまうという面も考慮する必要があるだろう.
何れにしても,バックアップは必須だ.HDDと異なり,故障前に異音がする等の予兆が無いため,大半は突然死となり,悲惨な状況になり易い.
今回私が選択したのは,CFD CSSD-SM128WJ3だ.コントローラとして定評のあるJMicronのJMF612が搭載されており,メモリチップはインテル製のMLCを搭載する.
SSDと言えばIntelのX25-Mが定番と言うか,鉄板と言うか,『これにしておけば間違いない』というポジションに居る.このような状況の中で,今回CSSD-SM128WJ3を選択した理由は,128GBという容量を確保したかったからだ.私の用途の場合,40GBでは足りないし,80GBでも心許ない.
さて,では実際の換装作業の説明に移ろう.
このようなパッケージに収められて販売されている.大体店頭価格は3万円弱.Amazonではコ
コ. 私はX100eを購入した際のポイントを利用した上で,少し |
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付属品は無く,SSDのみ. | |
S9eのディスク換装の際にも使用したガチャポンパッを使用し,USBでX100eに接続. 内蔵ドライブの内容のSSDへのコピーは,Acronis True Image Home 2009をX100eにインストールし,ディスククローンモードで行った.この方法でこれまで一度もトラブルに遭遇したことが無い.私の中では,最も安全確実なディスク移行方法である. なお,TrueImageは,ダウンロード版は5千円弱でオンライン販売されているので,そちらを選択しても良いだろう.海外では2010が販売されているので少し勿体無い感はあるが,クローンモードを使用するだけであれば,2009との大きな違いは無い. 内容のコピーが終わったら,SSDを取り出して内蔵ディスクと交換する. |
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裏蓋の開け方は,こちらを参照. バッテリ位置を上側にして裏蓋を開けた状態で,向かって左上にディスクが格納されている. |
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ディスク固定用のステーごと左にスライドさせ,コネクタから外す. | |
このように外れる. | |
ディスクはステーにネジ止めされているので,4箇所とも外す. | |
SSDをステーにネジ止めし, | |
ディスクが元あった場所にスライドして取り付ける. 後は元通り裏蓋を取り付けて完成. |
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元々の内蔵ディスクでのWindowsエクスペリエンス インデックスは左図の通り.ディスクのデータ転送速度は5.9であった. | |
SSDへの換装後,当該インデックスは6.9にアップした. | |
CrystalDiskInfoで確認するとこのような感じ. きちんとTRIMにも対応しているのが分かる.なお,グレーアウトしているAAMとは, |
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CrystalDiskMarkのベンチ結果は左の通り. X100eのディスクをIntelのX25-Mに換装された方の記事(涙が出るほど素晴らしい内容!!)のベンチ結果と比較すると,4Kのwriteのパフォーマンスが半分程になっているが,Readは何れもほぼ同等,WriteはSeq,512K共にかなり勝っているという結果になっている. なお,ベンチ結果はあくまでも参考程度値程度に考えて欲しい. |
換装後の体感速度はと言うと,別次元とも思える程の劇的な変化であった.
Windowsの起動速度は期待したほど変わらなかったものの,アプリの起動の速さは驚くほど短縮した.eclipseの起動など,仕事で使用しているデスクトップのCore 2 Quadマシンよりも遥かに快速だ.
しかし,私が最も有難く感じているのは,耐衝撃性の大幅な向上である.
加速度センサを利用したディスクのヘッド退避機構が搭載されていれば,衝撃に対する備えは万全というわけではない.私の周りにも,ディスクを救えなかった例がいくつか存在する.また,落下まで行かなくても,電源を入れたままで(衝撃や震動を加えないようにしながら)少し場所を移動する際の気の遣い方であるとか,スリープ移行後に完全に電源が落ちるまでは鞄に放り込めないであるとか,こういった細かな所でのストレスが大幅に減った.
欲を言えば,より大容量のSSDが廉価に購入できればさらに嬉しい.しかし,現状この価格で128GBの物が購入できたので,まぁ満足と言えば満足である.実に良い買い物であった.
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