書籍の電子化(3)
このエントリーの続き.書籍の電子化についての最後のエントリーです.
先のエントリーに書いた通り,とりあえずロールカッターと昔購入した旧機種のScanSnapで書籍の電子化を開始しました.しかしペースは上がらず,重送対応で労力が大きく,そしてカラースキャンの品質が悪過ぎるため,モノクロ(グレースケール)の書籍限定という感じでしか進められませんでした.
そこで当然の帰結としてScanSnap S1500を購入し,一連の問題の解決を図ることにしました.そして裁断機(PK-513L 26-106)も購入.
ScanSnap fi-4110EOX2のときはスキャン速度が遅いため,スキャンと平行して普通のカッターとロールカッターを併用して書籍をバラしていてもペース的には充分に間に合っていました.しかし,S1500は高速にスキャン可能なため,解体作業待ちが発生してしまいます.そんなわけで,解体のスピードアップと大型本の解体の効率化を計るために裁断機を購入しました.
結局『試させてもらった』環境をそのまま自宅にも構築したという感じになりました.
Amazonユーザは同志が多いようで,常に在庫アリ.発注翌日に一通り届き,実戦配備されました.
裁断機は特に梱包が大きいので,届くまでにスペースを作っておきましょう.
裁断機はアームが折りたたまれて収納されています.
注意書きをよく読んで.『んなアホな…』とか思っていましたが,気を付けないとこれはマジで怪我します.
部屋を片付けるために買った裁断機.部屋が片付かないと裁断機を室内に置けない.あぁ何たるジレンマ…
そのようなわけで,今は玄関に置いて作業しています.まぁ正月休みが終わるくらいまでには充分なスペースが出来るので,所定の場所に設置できそうではあります.
ちなみにPK-513Lは赤色LEDで裁断線を示することが出来ますが,私の所に届いたものは初期不良で,この部分が壊れていました.送り返すのも大変だし,単純な構造なので,そのうち自分で直そうと考えています.
あと,裁断機のアームは上げた状態でロックされるので,底面積もさることながら,収納場所は立体的にかなり必要になります.また,一応ロックはされているものの,刃の下に物が滑り込める空間は空きますので,小さな子供の居る家庭は,置き場所にも配慮が必要です.
これでA4版のカラー雑誌とかもガンガンスキャン出来ます.既刊のRealDesingや趣味の文具箱,ステーショナリーマガジンは,真っ先にスキャナに吸い込まれて行きました.
流石に万年筆インクの色のカタログ等,印刷所の人がカラーチャートとにらめっこしながらインクの配合を練ったような物に関しての正確性は保持されませんが,普通に楽しみながら読む分には充分過ぎる品質で取り込めています.
あと,この手のデザイン系の雑誌は,1冊の中で紙質や版型がコロコロと変わったり,中綴じで小冊子が入っている場合もあります.そういう部分は裁断後もページが糊で貼り付いていることが多いので,スキャン前にきちんと確認した方が良いでしょう.それとジャムの元なので,アンケート葉書を取り除くのも忘れずに.
裁断機を使用する際に特に注意する点は,『ステップラーで綴じてあるものを裁断しないこと』です.刃が一発でアウトになるほか,交換には1万オーバーの費用がかかりますので,くれぐれもご注意を.
2~3時間くらいの作業の後には,容易にこのくらいの紙の山が出来ます.それも片手間作業で.本気を出せば,この数倍は行けると思う.
これだけのページ数を読みながらスクラップするか否かを選別したとすると,一体どのくらいの時間が必要になるかを考えるとゾッとします.今回選択した,『中身を見ずに全部スキャンしておく』という作戦は,正しかったなとしみじみ思います.
スキャナと裁断機を購入してから2週間程の間に,200冊強の本が裁断され,スキャンされ,資源ごみに出されました.容量で言うと,カラーボックス1~2個分くらいかな.
この2週間の間に,出張に行ったり等もしていました.それにも関わらずこのペースでこなせていますので,休みの日に腰を据えて作業に励めば,あっと言う間に本棚の中は空っぽになって行くでしょう.今年の冬はまとまった休みが取れそうなので,少し気合を入れて作業を行おうかなぁと考えているところです.
本は放っておくと,経年変化でどんどん日焼けしたりボロボロになって行きます.アナログな味が楽しめる種類の本もあるわけですが,ディジタル化しても情報コンテンツとしての内容を維持できる物に関しては,少しでも早めにスキャンを開始した方が良いです.私も『もっと早くから始めてたらなぁ』なんて思うことしきりです.
AmazonのKindleをはじめ,電子ブックが海外では次第に普及し始めていますし,国内でも,出版社50社100誌が雑誌デジタル化の実験を開始しようとしています.この他,今は日本は取り残されていますが,Google Booksという流れもあります(*).
いずれは自分で電子化しなくても,電子データとして配布されるようになると思いますが,『そうなるまでに後何年/何十年待たないといけないんだ?』とか,『絶版本はどうなるんだ?』という不透明な点もありますので,将来的に無駄になる可能性があるとしても,やれる所から出来るだけのことをやっておけば,後悔は少ないんじゃないかなぁと思います.
(*)個人的には,今回のGoogleのやり方はどうかな…という所もあります.私の所には技術系の出版社からはお知らせが来ませんでしたが,講談社からは封書が届きました.小学館も著作権者にお知らせをしたみたいですね.
後,裁断機とスキャナで合計7万程出してまでやる価値はあるかという疑問に関しては,人によるとしか言えません.私のような本の虫の場合,膨大な蔵書を抱え込んでいる人が多いでしょうし,その保管スペースの維持に実質いくらくらいかかっているかを考えると,ある程度は納得できる答えが出るかもしれませんね.
とは言え,無尽蔵の空間と財力と時間が私に与えられるのであれば,全ての本は2組で購入し,1冊はスキャンし,1冊は保存していきたいなぁ….
以下,今回本格的に始めた際に気が付いた点や情報等を五月雨式に書いてみます.
ScanSnap S1500は,600dpiでも取り込めますが,600dpiで取り込むと非常に時間がかかります.貴重な写真集でもない限り,300dpiでも充分な品質を保持できますので,300dpiで高速にスキャンする方が良いでしょう.
ScanSnap S1500はCCD方式を採用しています.コンパクトなScanSnap S1300はCIS(Contact Image Sensor)方式を採用しています.スキャナの話になると,CCD方式とCIS方式のどちらが良いかという不毛な論争が巻き起こるのですが,結局用途によるんじゃないかなぁってのが私の感覚.今回のような書籍のスキャンでは,CISで充分なような気もしていましたが,CCDは焦点深度が深いので,特殊な凸凹したような印刷(デザイン系の本に多い)のスキャンのときにときに今回助けられているたかなという感じ.あと,色再現性もかなり良い感じ.
本を解体した際に糊が残っていると,CCDのガラス面に糊がこすり付けられ,筋状に残ることがあります.ガラス面に傷が行くことはないのですが,無水アルコールで拭いてやらないと綺麗に取れません.こういう状態になった場合,当然スキャン結果にも影響を与えますので,無水アルコールやエアブローを用意し,スキャン結果も適時確認しながら,定期的にクリーニングした方が良いでしょう.(私はあまり神経質になり過ぎない程度にやってます.スキャン結果に多少筋が付いていても読めれば良いや…程度)
S1500は重送検知の精度が神レベルな他,複数枚フィードしてのジャムの頻度も(裁断が綺麗に行われていれば)極めて少ないです.約3万5千円という価格は高く感じられるかもしれませんが,それに見合うだけの性能を持っています.
裁断機とロータリーカッターは両方とも用意しておいた方が良いでしょう.裁断機で切った後,糊が残っているページに関してはロータリーカッターで切り落として仕上げ…のような使い方をするととても便利です.言わば,相互補完の関係.ただ,どちらか一方を選ぶとしたら,私ならロータリーカッターかな.手間をかけることを厭わなければ,裁断機は不要です.
ScanSnap S1500には,Windows用のFI-S1500とMac用のFI-S1500Mがあります.カラーリングとバンドルソフトの違いです.詳しくはこのページを参照してください.私はWindows用のFI-S1500を購入し,会社ではWin,家ではMacBookPro(OS X 10.6 のSnow leopard)に接続して使用しています.共にWin,Mac用のドライバが同梱されているため,どちらを購入してもどちらのプラットフォームでも使えます.ただし,AcrobatのみはWin用はWin版しかバンドルされていません.Macのみで使用し,PDF化もしたい場合はMac用を買いましょう.あと細かな点ですが,Mac用のドライバでは,ScanSnapの消耗品カウンタ(今何枚スキャンしたかがハードウエア側に記録されている)から数字を取得できません.
取り込み時のオプションに,『白紙は削除する』というオプションがありますが,これは外しておいた方が良いでしょう.ページ数が狂うからです.あと,『原稿の傾きを自動調整する』というオプションがありますが,特にデザイン系の書籍の場合はレイアウトが凝っているページで誤認識してしまう場合があります.頻発するようであれば外しておいた方が良いかもしれません.
何十万ページものスキャンをこなせるかという点を心配されるかたもおられるかと思いますが,PFUから,消耗品であるパッドユニットとピックアップローラーがオンライン販売されています.交換の目安は,それぞれ5万枚と10万枚です.大量のスキャンを行う予定がある場合は,ストックしておくと安心でしょう.特に年末年始のように会社(PFU)が長期の休みに入る前には,早めに確保しておいた方が良いかも.
[2009/12/20夜 追記] 電子化した書籍の読み方を別エントリに作成
« 書籍の電子化(2) | トップページ | 電子化した書籍の読み方 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- スマホと併用したい便利ツール:DIME 2023年 5 月号付録の5インチ電子メモパッド付き計算機(2023.03.25)
- 必要な文具一式を美しく収納&持ち運べる素晴らしい付録のポーチ:ロルバーン20周年記念ブック(Rollbahn 20th ANNIVERSARY BOOK)(2021.12.22)
- 危うい状況を脱するための蜘蛛の糸&転ばぬ先の杖:『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』(2021.07.26)
- 読んで/見て欲しい本2冊:『おりたたみ自転車始めました』と『マンガでわかる日本料理の常識』(2021.05.28)
- 小物の整理とか文房具の収納とかテレワーク中の仕事セットの家庭内移動に最適:ZUAN LOVE! 「図案スケッチブック」インテリアトートBOOK(2020.11.22)
「PC」カテゴリの記事
- 小型で1万mAh,30W出力可能なモバイルバッテリで出張セットのアップデート:CIO SMARTCOBY PRO-30W(2023.08.31)
- 家の中のネットワークを2.5GbEに置き換えて快適・高速化を試してみる&HeroBoxをNAS化(2022.09.20)
- 家のサーバやNW環境を停電に強い構成にするためにPoE化を考える:CHUWI HeroBox(2)(2022.08.29)
- 無音,ハイパフォーマンスなミニPCをLinuxサーバにする:CHUWI HeroBox(1)(2022.08.16)
- 在宅勤務で便利に使える省スペースキーボード:ELECOM TK-FDM105TXBK と TK-FDM109TXBK(2020.04.30)
「mac」カテゴリの記事
- 傑作QY8の後継Bluetoothイヤホン.使い易さに目からウロコが落ちるけど,イヤホンは耳から落ちません:QCY QY11(2016.04.26)
- キンキンに澄み切った高音:BluetoothスピーカーTHERMOS VECLOS(2016.03.29)
- 小型Bluetoothスピーカーを色々試す(4):音の比較(2015.12.14)
- 小型Bluetoothスピーカーを色々試す(3):Anker ポケットサイズBluetoothスピーカー(2015.12.07)
- 小型Bluetoothスピーカーを色々試す(1):無印良品ダイヤル式Bluetoothスピーカー(2015.12.03)
裁断した書籍を購入したいというお申し出を頂いておりますが,これまでスキャンした分は既に資源ゴミとして処分した後です。
また、容積的にも重量的にもかなりの物になりますので,送付の手間を考えると,かなり厳しい物があります.そのようなわけで,大変申し訳ないのですが,ご希望に添うことは出来ません.
このような申し出を受けて思ったのですが,電子化を行われる方がかなり増えてきているようですので,裁断済み書籍が,今後は古本の流通の一形態として市民権を得られるようになるかもしれませんね.
投稿: tadachi | 2010年3月22日 (月) 19時26分