バンドオブブラザーズの太平洋戦争版:The Pacific
映画,プライベートライアンで戦闘シーンをリアルに映像化したスピルバーグとトム・ハンクスですが,その後連続ドラマとしてバンド・オブ・ブラザーズを制作しました.
このドラマは,米国陸軍第101空挺師団第506パラシュート歩兵連隊第2大隊E中隊のヨーロッパ戦線での活躍を描いたノンフィクション.ノルマンディ上陸作戦,マーケットガーデン作戦,バルジの戦いといった,WWIIの戦史に興味がある人は誰でも知っている主要な作戦を一通り押さえており,プライベートライアン以上に緻密に描かれている戦闘シーンは,戦争映画ファンには感涙物の作品でした.
で,この二人が今度は太平洋戦線を舞台とした第1海兵師団の戦いを映像化するとのこと.これは期待するしかない.
気になるのは,米国の太平洋戦争を描いた映画では,日本は文化的にとんでもなく遅れていて,日本兵は極悪卑劣でアホで間抜けで人間ですらないような扱いを受けている物が多いこと.
ある意味,悪役インデアン達を一方的にバンバンと虐殺しまくる昔の西部劇映画を舞台を替えて焼き直したようなものが非常に多い.個人的に特に酷いと感じたのは,パールハーバー.事実のねつ造盛り沢山でホント酷かった.
色々と問題があり,日本の上映ではカットされたというシーンがあるという話ですが,当時たまたまカナダに居たので,無修正のものをそのままで映画館で今は嫁さんとなっている人と観ることが出来ました.いやぁ,映画の中での日本軍の悪鬼ぶり&間抜けぶりは実に酷かった.そして劇場で観ている人達の洗脳されぶりも実に酷かった.日本人が『パールハーバー』を北米で観るなよというツッコミもあるかもしれないが…
話戻してスピルバーグ&トム・ハンクス制作の太平洋戦線を舞台にしたドラマですが,映像としての期待が大きい反面,こういう部分の不安もあります.やはり今の米国の状況だと,ブロパガンダ的な戦争ドラマになる可能性もなきにしもあらず.オバマ大統領はアフガン増派を承認したし,そっち方面になるのか,はたまた文化人としての意地を通して反戦方面になるのか…
まぁ何はともあれ,この戦争ドラマ,The Pacificのトレーラーを観てみて下さい.
映像面では,バンド・オブ・ブラザーズ以上の物が期待できるかもしれません.
次にこのドラマには原作本がありますので,ストーリーは…ということで早速注文して読んでみました.内容はというと,第1海兵師団の1兵卒の目から見た,ペリリューの戦いと沖縄戦.
メリケンが喜びそうな,『俺はこんな英雄的な活躍をしたぜ』という記述の羅列をある程度覚悟して読み始めたのですが,良い方向に裏切られました.
実に凄い.これは凄い本だ.実にニュートラルに書かれているし,戦場に出てから次第に様々な感覚が麻痺してくる様子や,お上品な戦史的な本を読むだけでは窺い知れない一兵卒の置かれる過酷な状況等が,最前線に居なければ書けないであろう迫真の文章で綴られています.そして文章(訳も)も実にうまい.読み始めたら止まらない.次にどうなるのか気になり続け,寝る時間を削ってまでズルズルと読み続けてしまった.
そしてここに書かれているのは,ペリリューの戦いと沖縄戦.日本では戦闘の実態があまり認識されていないかもしれませんが(一方的に日本がやられたと認識されている感じが…),硫黄島の戦いに勝るとも劣らない大出血を米軍に強いた戦いでした.そしてこれら戦いは,戦力が圧倒的な米軍相手には不利となる水際防衛作戦や,安易なバンザイ突撃などのような無謀な作戦を採らず,粘り強く戦った戦いとしても有名です.
めちゃくちゃ期待出来そうです.
日本で観られるのはまだかなり先になりそうですが,このサイトをチェックしながら,その日を待とうと思います.
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コメント
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ご無沙汰しております。
たびたび訪問してはいますが、そのたびにコメントしそびれてしまい、
気づくと次の記事になっていたりしますが、多方面への触手の伸ばし
方(笑)と、文章の分かりやすさには、いつも感心させられます。
多方面に触手を伸ばすことに関しては、tadachi様と同様かと思います
が、多少、節操の無い私から見ると、「tadachi-net 出張所」は、少し
違う世界を分かりやすく教えてくれる、興味深い場所です。
ところで、コメントしそびれですが、立花宗茂についての本は、私も手に
しておりまして(笑)、今回の、戦争ものに対する認識も含めて、「教育」
について、考えさせられるものがあります。
歴史教育について、過去を伝承することは、非常に意義のあることだと
思いますが、現在のように一律教育に拘るのではなく、たとえば、自分
が住む町や、そこで活躍した「ゆかりのある人」を取り上げるような時間
があれば、少なくとも誰かは伝承を受けているので、それが途絶えるこ
とを防げると思うのです。
・・・私は、「江南町」という町で育ちましたが、どうして「こうなんまち」で
はなく、「えなみちょう」なのか、誰も知らないのです。
また、戦争に関しても、日本では、第2次大戦を中心に自国民を最低な
人達として教育しますが、海外に目を転じると、同盟国であったドイツで
すら、全てを悪とはせず、、ナチスとドイツを分けている部分も感じられ、
世界に目を転じれば、「大声を出した者の意見が正義となる」ような世
界がゴロゴロしていて、考えさせられます。
私は、日本の国旗についても、世界に並ぶものが無いほど優れたデザ
インだと思いますが、しかし、掲揚を強制されることはもちろん、こ
れに反対して掲揚時に起立しない教師にも、違和感を覚える人です。
そんな私、今回の衆議院議員選挙においては、民主党にも自民党にも
投票はせず、真ん中という名の打つべき手は無いものか、と寂しい
祭りを映し続けるテレビを横目に、溜息をついておりました。
あ、止まらなくなりそうなので、この辺で・・・。
投稿: traveler | 2009年9月 1日 (火) 01時28分
travelerさんこんばんは.
最近は小ネタが多いので,汗顔の至りです.
さて,過去の伝承や教育の問題はかなり重い話だと思うのですが,身近な所から家庭内で初めるのが良いのかなという気もしています.身近な所の地名が歴史上のエピソードに繋がれば,教科書の中だけの話だった物が,急にリアルかつ身近に感じられるようなことってありますよね.
子供の頃,近くの公園にあった『大刀洗の池』の由来を知ったときは,ゾッとしましたが…
あと,自分の『姓』というのも,歴史の切り口としては良いかもしれません.
中学の時,歴史の先生が授業中に姓の話をされたときがありました.私は『足立』という姓なのですが,同姓のその先生は,『この姓は歴史ある物ではなくて,農民の姓で云々』という話をされていました.当時の私ははそれ程歴史に詳しくは無かったので,たしか尾張で前田利家が初めて倒した足軽大将(?)が足立某という名前だったような…という程度でした.
その後興味を持って調べてみると,足立の姓の祖は足立遠兼であって,平安末期の人物.武蔵国足立郡に移り住んだときに足立を名乗ったとのこと.これが東京の足立区や埼玉の北足立郡の名前に繋がります.そして遠兼の子の遠元は平時の乱で名前が記録されており,源義朝や頼朝らに仕え,吾妻鏡にも名前が出ている.ではその先祖はというと,藤原北家に繋がっている.藤原家の始祖と言うと,藤原鎌足で…ということになる.余談ですが,伊達政宗も藤原北家の流れだとのこと.歴史の本に繋がりまくりです.
と,こういうのを追ってみるのも興味深いし,楽しいですよね.この手の話をきちんと調査しようとしたら,文字通り1冊の本が出来る程で,『家族の源流 足立氏ものがたり』(絶版)という本も出ていました.
あ,でも,うちの家紋は三階松なので,この流れでは無い可能性が高いです.
…何の話でしたっけ.あ,そうそう.歴史の流れに戻すと,今のこの瞬間も時間が経てば歴史書の一ページになるんですよね.あまりそういう意識は普段しませんが.郵政選挙や今回の民主圧勝の話も,いずれ歴史の本に小さなエピソードとして綴られる日が来ると思います.
政治の話をあまり細かく書くと火の粉が降ってきそうなので程々にしておきますが,『どちらかと言う,とこちらの方が好ましい』という微妙な選択であっても,それを続けていれば,世の中は少しずつでも良くなっていくのではないかなと考えています.
歴史も同じですよね.1代,2代であればあまり大きな変化を感じないけど,5代くらい前になるとまるで別の時代.だけど,その中の一代一代はそれ程急激な変化があるわけではない(戦争のような例外はあるけど).それを考えると,やはり小さな変化の積み重ねかなと.それがある程度重なると大きな変化になるのかなと思います.
と,いうことで,長文コメントになりました(^^;
1つの記事にまとめた方が良かったかも(^^;
投稿: tadachi | 2009年9月 1日 (火) 23時20分
早速お返事いただき、ありがとうございます。
「姓」について、世界的に見ても米国に次ぐほどの多さで、米国が
移民の国であることを考えると、「どうして多くなったのか」関心を
抱きます。
残念ながら、私の姓は「大森」ですので、先祖を辿っても高揚感に
浸れるような人物には当たりませんが(笑)、知人には、「左奈田(さ
なだ)」「一家(いっか)」を始め、興味深い姓が多く、興味は尽きませ
ん(左奈田さん曰く、「真田の流れにあるも、徳川等の目を逃れ、一
族を絶やさないため、当て字を使ったことが由来」とかで、その信憑
性はともかく、うんちくを語れるのがウラヤマスィー)。
さて、政治についてですが「夜に書いたラブレター」は、翌朝、しっか
り見直して投函しなければなりませんね・・・。
自分では控え目にまとめたつもりが、右も左もない思想家になって
おりました(笑)。
・・・微妙な選択であっても、それを続けていれば、世の中は少しずつ
でも良くなっていくのではないかなと考えています・・・というくだり、
考えてみると、まったく仰る通りだと思いました。
今日は、朝まで待ってPCに向かっておりますので、大丈夫だと思い
ますが(笑)、お付き合い頂き、ありがとうございました。
投稿: traveler | 2009年9月 2日 (水) 04時41分
いえいえ,例えば大森氏頼の『大森教訓状』の話は,同姓の者として大いに誇って良いと思いますよ.
こういう歴史談義は,夜に飲みながらやると,大いに盛り上がっちゃったりしますよね.
社内の飲み会で始まると,上役の方々を中心として,万葉の昔の話にまでトリップします(^^;
投稿: tadachi | 2009年9月 2日 (水) 12時36分