Linuxの上でWindowsを動かしてリモートで使う
前回ちらっと触れた通り,今回はLinux上で仮想マシンとしてWindowsを動かす話に関して.
最近は仮想化がサービスのクラウド化実現の技術として採り上げられることが多いのですが,クラウドコンピューティングを行う人にしか仮想化によって得られるメリットが無いかというと,そうではありません.マシンを複数使用しており,『これ,1台にまとめられないかなぁ』なんて思ったことがある人であれば,試してみる価値有りです.
このページを読んでいる大抵の人はWindowsとLinuxの二刀流,もしくはさらにMac使いでもある方だと思うのですが,何かやろうとするときに複数台マシンを立ち上げて…というのは必要となるリソースの点で無駄が多かったりします.また,例えばWindowsマシンで終日ゴリゴリと動画エンコードをしている横で,Linuxサーバは負荷が限りなくゼロで遊んでいるというシチュエーションが発生するのは気分的にイヤな感じです.全体の利用効率を何とか上げたいと思うのは誰でも一緒だと思います.
私の場合,まさに後者のような状態が多く,Windows向けにしかリリースされていないソフトをバッチ的に終日動かして…みたいなことをよくやっています.『Linux用があれば,24時間運転しているLinuxマシン上で走らすのになぁ』なんて思いながら…
前置きが長くなりましたが,今回の主役もExpress 5800 S70/FLです.この上で仮想マシンをゴリゴリと動かすために,CPUはCore2Duo E8400 (3GHz dual core)に載せ替え,メモリも5GBにしています.そしてこの上で稼働しているOSはCentOS5.3で,普段は普通のLinuxサーバとして使用しています.
次に仮想化のためのソフトの選択ですが,昔は有償かつ種類も限られていましたが,今ではフリーのものが主流で,色々と選べるようになってきています.例えばWindows上で仮想マシンを動かすソフトとしてVirtualPCがあるのですが,これはMS製でありながら(笑)ダウンロードして無償で使用することが出来ます(*).Windowsマシン上でLinuxをちょっと動かしてみたい/使ってみたいというような場合には手軽な選択肢です.
(*)正確には,VirtualPCはConnectixから買収
で,Linuxの場合もいくつか選択肢があるのですが,XenかVMware Ssrver,またはVirtualBox使う人が多いでしょう.CentOS 5.3の場合はXenが即利用可能になっているので,これを利用している人が多いでしょう.
私もまずはXenから試してみました.
Xenで仮想マシンを作成する際には,まずは『準仮想化』または『完全仮想化』を選ぶ必要があります.
詳しい説明は省略しますが,複数のLinuxサーバを統合して1台で動かすような場合は『準仮想化』で良いのですが,今回のようにゲストOSとしてWindowsを動かす場合は,『完全仮想化』にしなければなりません.なお,『x86仮想化』に対応したCPUを使用していない場合,Xenで『完全仮想化』は出来ませんので,ご注意下さい(特にIntel CPUユーザ).

仮想化の方法を選択
諸々言われるがままに設定を行い,インストール用のCD/DVD-ROMなりISOイメージファイルを読み込ませると,OSのインストールシーケンスに入ります.次の画面は,Windows 7RCのインストール開始画面です.リンク先のMSのページからダウンロードしたISOイメージをそのまま読ませました.

Windows 7 RCのインストール開始画面
結論を先に書くと,Windows7 RC版はインストールを終了して再起動がかかった後でブルースクリーンになって起動しませんでした(前の版であればXenでも動いた筈なんだけど…).

Windows 7 RCをXenに入れたときのブルースクリーン画面
WindowsXP Proは問題なくインストール出来ましたが,パフォーマンスが今ひとつでした.また,Windowsが殆どアイドリングしているようなときでも,CPUを使い切っているような症状が出でていましたので,早々に使用するのを止めました(原因は調査していません).
Xenはその設計からして,準仮想化で動くOSであれば非常にパフォーマンスが良い筈なので,Linuxを仮想化するのには良いかもしれません.しかし,現在のXenでは,Windowsを動かすのはちょっと厳しいかもしれないなぁという印象を持ちました.
次に試したのはVMware Serverです.こちらはVMware Inc.から提供されている製品なのですが,利用者情報を登録することにより,Windows版,Linux版共に無償で利用可能です.有難いことです.
流石に仮想化ソフトの老舗の製品なだけあり,Windows7RCも問題なくインストールでき,パフォーマンスも良好でした.そしてVMware ServerはVMの管理をWebベースで行うようになっており,例えばWindowsからIEでSSLで繋ぐと以下のように稼働状況を見たり,設定を行うことが出来ます.一通りのことをネットワーク経由でリモートで出来るというのも非常に大きなアドバンテージです.
また,実際のゲストOSの画面は,VMware Remote Cosoleで開くようになっています.IEで内でコンソール画面を突くと自動的に起動し,別ウインドウで表示します.流石にVMware Workstation/Playerを使用してローカルで動かしているようなサクサク感はありませんが,かなり良い感じで動きます.

VMware Remote ConsoleでゲストOSとして動いているWindows7RC画面を表示
そのようなわけで,私はVMware ServerにWindowsXP Proを入れ,常用することにしました.(Windows7はテスト用.調子が良ければ移行するかも)
ただし,その利用はVMware Remote Consoleを使わずに,MS謹製のリモートデスクトップを使用して接続するようにしています.理由はこちらの方がパフォーマンスが良いのと,再生音声もクライアントPCで聞くことが出来るからです.とは言え,動画の試聴するのはちょっとキツイ印象.詳しくは後述しますが,グラフィカルな処理を多用するソフトは厳しいです.
と,いうことで,ランニングマシンとしてWindowsを使用するための快適な環境が出来ました.これでWindowsマシンを夜中に動かし続ける機会は激減することになると思います.
その他情報:
使用するLinuxディストリビューションをCentOSにした理由の一つに,諸々のソフトのインストールや設定が楽になるという理由を挙げていたわけですが,VMware Serverのインストールに際しても,様々な恩恵を受けました.
インストールの手順は以下のような感じでした.
- 起動kernelをXenでないものにする(私は2.6.18-128.1.10.el5.centos.plusPAEにしています)
- VMware Serverのrpmファイルをインストールし,rpmコマンドでインストール
- 『/usr/bin/vmware-config.pl』を実行.殆どyesで答え,NAT変換の所だけ,直接接続すると答える
- Windowsを入れた場合は,『/usr/lib/vmware/isoimages/windows.iso』にwindows用のVMware Toolsインストール用ISOが展開されるので,ゲストOSでCD-ROMドライブにISOイメージのままマウントしてインストールする(freebsdやlinux,solaris用等のVMware Toolsもこのディレクトリにイメージファイルがあります)
ちなみにVMのWindowsXP Proにリモートデスクトップで接続し,そこで走らせたベンチ結果は以下の通りでした.ランキングのページで見ると,画面周り以外は良好な結果でした(ただし,ディスク関係の結果はキャッシュのせいで正確に計測出来ていないと思われる).数字の上でも,ランニングマシンとして申し分ないパフォーマンスが出ている感じです.
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CrystalMark 2004R3 [0.9.126.452] (C) 2001-2008 hiyohiyo
Crystal Dew World [http://crystalmark.info/]
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CrystalMark Result
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Display Mode : 1024 x 768 16bit (Normal)
CrystalMark : 102926
[ ALU ] 29096
Fibonacci : 10720
Napierian : 7657
Eratosthenes : 3606
QuickSort : 7091
[ FPU ] 30257
MikoFPU : 2825
RandMeanSS : 18117
FFT : 4827
Mandelbrot : 4466
[ MEM ] 14107
Read : 5990.64 MB/s ( 5990)
Write : 1873.12 MB/s ( 1873)
Read/Write : 1942.69 MB/s ( 1942)
Cache : 42806.92 MB/s ( 4280)
[ HDD ] 26224
Read : 526.07 MB/s ( 8130)
Write : 37.08 MB/s ( 1483)
RandomRead512K : 390.26 MB/s ( 7451)
RandomWrite512K : 39.03 MB/s ( 1561)
RandomRead 64K : 294.96 MB/s ( 6949)
RandomWrite 64K : 16.26 MB/s ( 650)
[ GDI ] 724
Text : 159
Square : 101
Circle : 289
BitBlt : 175
[ D2D ] 1839
Sprite 10 : 1685.46 FPS ( 168)
Sprite 100 : 161.04 FPS ( 161)
Sprite 500 : 15.88 FPS ( 79)
Sprite 1000 : 11.51 FPS ( 115)
Sprite 5000 : 8.86 FPS ( 443)
Sprite 10000 : 8.73 FPS ( 873)
[ OGL ] 679
Scene 1 Score : 642
Lines (x1000) : ( 68343)
Scene 1 CPUs : ( 16)
Scene 2 Score : 37
Polygons(x1000) : ( 277)
Scene 2 CPUs : ( 1)
この上でさらにMacOS Xが動いた夢を見るのも良いかなぁなんて思う今日この頃….VMWare ESXi も機会を見付けて試してみたいなぁ.
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