コンバット・レーション本あれこれ
『レーション・ワールドカップ』という本が先日発行された。
以前、こういうエントリーを書いたのだけど、比較的マイナーネタなのにも関わらず、このページは結構息が長く、コンスタントにアクセスがある。『戦闘糧食の三ツ星をさがせ!―ミリタリー・グルメ』の新装版が出たりもしているので、未だにレーションブームは熱いのかもしれない。
いや、戦闘糧食がセガのUFOキャッチャーの景品にすらなっているので、むしろ裾野を広げているといった感じかも知れない。
ということで、前回のエントリーを上奏した後に手にした本を3冊紹介してみようと思う。
まずは表題の『レーション・ワールドカップ』。これは比較的一般向けの部類に入ると思うのだけど、カラー写真が豊富で見ているだけで楽しいし、食欲がそそられる。この体裁は『世界のミリメシを実食する―兵士の給食・レーション』に近い感じ。ただし、『レーション・ワールドカップ』の方は、単にレーションの写真カタログになるのではなく、各国の簡単な説明と食文化に関しての解説もある。そういう意味では、背景情報も含めてレーションを掘り下げてみようという試みがなされていて面白い。そして自衛隊に関しては、陸・海・空全てに取材が行われている。この記事もなかなか楽しい。
この取材の記事で初めて知ったのだけど, 戦闘糧食のメニューでウマイと有名な,あの伝説の沢庵缶詰が廃止の可能性があるとのこと.なんでも生産していた会社が倒産したのが原因らしいのだけど,この缶詰で使われている太さ均一の大根の生産技術が,この会社にしかノウハウが無かったらしい.今,生産してくれる企業を探しているそうだが,廃止になる可能性があるとのこと.一度食べたかったなぁ…
そして私が今を遡ること数ヶ月前、書店で見付けて悩んだ末に購入したのが『写真で見る海軍糧食史』。 これは日本海軍、つまり幕末から太平洋戦争終結までの間の日本海軍の糧食や制度、各種機材やエピソードに関して解説された本。よくもここまでマイナーな話題を深く調査して…と、頭が下がる思いで一杯だ。
ところで『脚気』という病気をご存知だろうか。
これはビタミンB1不足で発症する病だということが今では明らかになっているのだけど、昔は原因がよく分からなかった。陸軍では色々なヤヤコシイ事情があって対策が遅れ、大勢の犠牲者を出したこともあったわけなんだけど、何故か西欧人には見られず、白米を食べている日本人によく見られるということは知られていた。そんなわけで、海軍では、西欧風の食事をする艦と日本食の艦とに分けて長期航海に出し、何が起きるかの実験を行ったことがある。その実験の結果等も本書に載っているのだが、生データを見たのは初めてだ…
これほどまでに多くの資料を収集するのは大変だっただろうなぁ…。藤田昌雄氏は凄いなぁ…と、ホントに感服しました。
そして巻末の方に、『海軍の話はあまり詳しくなくて…』のような記述があり、『んなあほな!』と思ったわけなんだけど、それと同時に『じゃぁ陸軍の話はどの本に…』と、非常に興味が沸いた。この緻密さで様々な調査を行っているのであれば、一般の人にとっては只の本かもしれないが、マニアにとっては垂涎の書物であろう。
しかし、見付けたときには絶版になっていた。それが『帝国陸軍戦場の衣食住―糧食を軸に解き明かす"知られざる陸軍"の全貌』という本。
悩んだ末に定価以上の大枚をはたいてマーケットプレイスで購入したのだけど、読んで納得。こりゃ凄い本だ。
内容の緻密さもさることながら、大型版のカラーページを生かして実際の献立を再現したりもしている。陸軍では1食2合の白米という規定だったそうだが、1合を1つにした握り飯のおいしそうなことと言ったら…。まるで『はじめ人間ギャートルズ』のマンモスの肉のようである。
これを読んで興味深かったのは、海軍では戦闘配食で握り飯を作る際には、収まりを良くしたり等するために、俵型にするとの記述が先の本にあった。その一方で陸軍では、ほぼ真ん丸に握られていたこと。行軍時の収まりの良さは陸軍の方が気にかけそうなのにである。
そして陸軍では食パンも日常的に出されていたという話を知って意外に感じたのだけど、『塗り物』としてパターとかではなくて、砂糖が出されることがあったというのは驚きであった。
正直、『帝国陸軍戦場の衣食』の内容の凄まじさを伝えるには、恐ろしいほどの行数の文章を書かないといけない。惜しむるべきは、既に絶版となってしまっていて、入手がやや難しいこと。おまけに中古で買うにしても、値段にプレミアが付いている。だがしかし、今ならまだ状態が非常に良好な本が手にはいるので、迷った人はすぐに行動することをお勧めする。
こういった非常に資料性の高い書籍は、細々とでも良いので、末長く刷り続けて欲しいなぁ。。。
ちょっと余談だけど、ミリタリー系にはまった場合の初期症状としては、スペックや兵装(主に攻撃用兵装)にまず目が行く。戦車等のマニアとして有名なパヤオもそんな話を著書の中に書いていた。
そしてその後、症状が悪化するに従って別の所に関心が向くようになるのだけど、その対象は人によって非常に細分化されているように思う。レーションはそういった中では、比較的メジャーな対象だと思われる。
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