myloのハード構成を見て思ったこと
一昨日前にこんなエントリーを書いたのだけど,昨日,mylo(com-2)の分解&インタビュー記事 がPC watchにアップされたので早速読んでみた.
初代mylo(com-1)の分解記事ココとかココに載っていた写真と比較すると,随分とブラッシュアップが進んだ印象を受ける.そしてインタビューによると,音楽の再生(デコードとか)は従来はハードでやっていたが,com-2ではCPUで行うようにしたそうだ.
そして私が特に注目したのは,CPUが「i.MX21(ARM926EJ-S(だよね?)) /266MHz」から,「i.MX31L(ARM1136JF-S) /532MHz」に変更になっていること.『ARM系』と一括りにされるけど,コアの型番で機能も性能も全然違う場合がある.もう少し詳しく俯瞰したい人は,『ARMアーキテクチャ』を参照のこと.
実は mylo(com-2) が届く前から1つ不満に思っていることがあって,それは動画再生に関することなんだ.
今回,CPUが高速化されたということも踏まえて読んで欲しいんだけど,mylo(com-2)で再生可能な動画は以下の通り.
内蔵メモリやメモリースティックに保存した動画/楽曲ファイルの再生や静止画表示が可能。動画は新たにWMV、MPEG-4 AVC/H.264 Baseline Profileに対応したほか、従来同様、メモリースティックビデオフォーマットのMPEG-4も利用できる。
解像度/ビットレートは、最大320×240ドット/768kbpsまで対応。DRM付きWMVファイルの再生には対応していない。
引用元:http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080219/sony1.htm
mylo(com-1)は液晶解像度が320x240なので,別にQVGAサイズの物しか再生出来なくても特に実害は無いように思う.でも,com-2はWVGAになったことだし,VGAサイズのものが再生出来ても良いんではないかなと思うんだ.一応QVGAの動画を拡大して表示するモードはあるみたいだけど,昔あった『14型テレビを21型に拡大するレンズ』を見るようで,それはちょっと悲しい.
CPUパワーが足りないのかと思ったけれど,この辺りの解説を読むと,何とかなりそうな気もするんだけれども.
それにしても(ベクタ浮動小数点)コプロセッサの存在は偉大だと思う.
今,私の机の上には某開発ボードが乗っていて,JTAG-ICEのケーブルが引き出されている.私のタスクは,PCで動かしていた某信号処理のプログラムを,この環境で実用的な速度・性能で動くようにチューンするものだった.この元となるプログラムは浮動小数点演算を使いまくりだし,メモリは潤沢に使用するし…と,いう,所謂PC(Windows/*inux)用のプログラム.これをARM9コアのCPUで動くようにしなくちゃならなかった.それもコプロの類は付いてないし,クロックは150MHz程度.その他にも色々と制約有り.
固定小数点化や算術関数を代替関数に置き換え,コストの高い処理はテーブル参照式にしたり,ニュートン法等を使って近似計算,アルゴリズムも根本的に見直してARM向きの方法に変更したりetc.当初は周りに『実用的な速度で動かすのは無理だよね~』と,いう空気が漂っていたんだけれど,処理時間は当初の数十分の1にまで短縮出来,何とか『まぁ許せるかな』レベルにはなった.私一人の力で出来たわけではないんだけれども,こういう達成感が得られた瞬間ってうれしいよね.疲れも吹っ飛ぶ.
# 余談だけど,情報系の学生さん,この手のアルゴリズムや数学的な手法は,『何のために勉強すんねん』とか思わずに,真剣に習得してみてください.いつか凄く役立つときが来ます.いや,きっと来る,いや,来るんじゃないかな.
本職の組込屋さんにとっては『そんなの基本だろ!』と言われるような手法しか使ってないし,携帯の開発で鍛えられているギークにかかったら,コードを見るなり頭に赤い角が生え,さらに3倍は余裕で早くなるように書き換えられそうではあるけれど,ARM9もナカナカやるなという実感を得た.
と,長々書いてしまったけれど,この仕事をしているときに切実に感じたのは,『あぁ,コプロ欲しい』ということ.一応DSPも併用したのだけど,諸々問題があって,完全な解決策にはならなかった.そのようなわけで,浮動小数点演算がサクサク出来たらこんな苦労しなくて済んだし,今よりも遙かに高速に処理出来るようになっていた筈だ.
そんなわけで,ARM11が乗っているのに,QVGAの再生しか出来ない/しないのには,何か深遠な理由があるのだろうか…と,思ってしまった次第.
* * *
まぁそれはそれとして,SONYとしては,ユーザにはmyloを骨までしゃぶって欲しくないようだ.
中身がLinuxなので、ユーザーによるアプリケーション(Linux上のバイナリアプリケーション)の組み込みなどの可能性を尋ねてみたが、「現時点ではそういう予定はない」(企画田中氏)とのこと。myloは、なるべく簡単にWebアクセスやコミュニケーションを楽しんでもらえることをコンセプトにしているため、複雑さはできるだけ排除しているとのことだ。ある意味、「家電的」なPDAということもできるだろう。なので、筆者のようなユーザーよりは、もっと一般的なユーザー向けの機器といえる。
引用元: http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0226/pda75.htm
無論,ターゲットがHP100LX/HP200LX の世界とは違うとは言え,少々悲しいものがある.
* * *
今日,発注中のmyloのステータスをもう一度確認してみたところ,ほぼ一通り『2008-02-29入荷の予定』になっていた.だけど,『COMP-FLS1』(液晶保護シート)のみ,『お取り寄せ中』になっていた.
これが届かないせいで発送が遅れたら泣きますよ,マジで.頼む,届いてくれ~.週末に遊ばせてくれ.
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と,いうことでmylo(com-2)が届いているので早速レビューをと思ったけど, [続きを読む]
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