彼女を守る51の方法
単行本が完結してから読もうと待ち望んでいたのだが,今年の夏に最終巻である第5巻が出たので大人買い.そして一気に読んだ.
『彼女を守る51の方法』は,東京を直下型のマグニチュード8の地震が襲ったという状況下で,いかにサバイバルするかを描いたマンガ.
主人公は東京お台場に会社説明会に来ていた大学生と,同じくお台場に,たまたまコンサートに来ていた元同級生の女の子.『彼女を守る』とか『51の方法』とか書かれているけれど,実は内容にはあまり関係ない.特に「51」の方は(最後まで読んでから苦笑いして欲しい).本書は,地震発生後に東京で起きるであろう状況や,安全を確保する&命を長らえるための対処方法に関して真面目にまとめられたものである.
都市型の大きな地震と言えば,やはり思い出されるのは阪神・淡路大震災.当日,私が住んでいた京都でも相当な揺れが相当長く続いた.そしてその年の終わり頃,IP Meeting 95参加のために神戸国際会議場に行ったのだが,復興が急速に進んではいたものの,痛々しい爪痕があちこちに残っていたのが印象的であった.やはりブラウン管を通さずに見た現場は生々しかった.
終了後,辛うじて倒壊を免れた楽器店でギターを買って帰ったのだが,あのお店はその後どのようになっているだろうか…
で,本書では,神戸等で発生した様々な事例や対処方法等に関しても,ストーリー中および解説ページで採り上げている.書かれている内容は,即役に立つ物から知識的なことまで様々である.また,社会不安状態が続き,無秩序・無統制状態になった場合に発生する犯罪に関しても目をそらさずに描かれている.報道されているのを目にすることが無かった,阪神・淡路大震災における性犯罪に関しても.現場に入っていたボランティアまで被害に遭っていたとは…
そのようななわけで,本書はライト感覚な冒険活劇的なものとは違う.ましてや恋愛物でもない.また,何らかの対策を社会的に訴えるために描かれた作品でもない.地震に遭遇した一人の人間というの目線で描かれているので,作中で苦しみ,もがく主人公達を,『そのとき』に遭遇した自分に置き換えて読むことも可能かもしれない.
最後のまとめ方がちょっと駆け足っぽかった(本当は全10巻くらいのボリュームが欲しかったのでは?)のが残念だが,読み始めた手が止らなかった.
さいとう たかを氏のサバイバルほど本格的なサバイバル物ではないけれど,もっと等身大かつ現実的に直面しそうな話として,身近な感覚で読めた本であった.
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