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2007年11月16日 (金)

日本は勝てる戦争になぜ負けたのか

 別の書籍を購入した際に,Amazonにお薦めされた.

 早速レビューを見てみると,高得点な上に内容に関しての評判も良いので購入してみた.タイトルがとても刺激的であるし,レビューのタイトルも振るっている.「戦争観が一八〇度、かわってしまった」や「もっと大勢の人に読まれていい本」とある.

 さて,どんな話が展開するのであろうか.ワクワクしながらページをめくってみた…

 …のだが,1/4程読んだ段階で思いっきりズコーッと来てしまった.

 せっかく買ったのだし,『こういう見方・話もあるのだ』というサンプルとして頑張って最後まで読もうとしたのだけど,後半1/4は斜め読み以下になってしまった.すみません.これ以上は勘弁してください.精神の平静を保てません.おかしくなりそうです.

 気を取り直し,本書の主張をいくつかピックアップすると,以下のようになります.なお,以下は私の解釈です.著者は主にもっと別のことを訴えたかったのかもしれません.

  • 先の大戦で,日本軍は連合軍に圧倒的な物量差等で負けたのではない.うまくやれば勝てた.
  • 現場の兵は精強で強かったが,司令官が採った戦略や作戦,戦争方針がまずくて負けたのだ
  • 敗戦の原因の一つは,腐敗する官僚組織/制度のせいだ.この問題は現在も続いている.
  • そして最も大きな問題は,指導層が政治的・思想的な意図の元に,わざと日本が負けるように仕向けていたからだ.敗戦革命を目指していた.
  • 海軍の永野,米内,山本,井上は米国の思惑通り動いた
  • 陸軍の統制派はソ連(スターリン)の思惑通り動いた
  • 陸海軍の反目や組織内の内ゲバが激しく,日本の本来持っている力を弱めた
  • チャーチルは背後で米国やソ連を英国に益があるようにうまく動かした
  • 先の戦争に対する認識に関し,現代の日本人は誤っている部分がある

 『官僚の~』の部分や,その他の一部に関しては,概ね同意する部分があります.

 私が本書を読むのを途中で投げ出したくなったのは,所謂『陰謀説』が書かれているからではありません.陰謀説は読んでいて面白いし,そういう見方もあるのだなという知識も付きます.書かれていることを無批判で信じ込んでしまったら問題ではありますが.そういう意味では,『活字になっている = 信憑性がある』と思っている人が本書を読んだら非常にマズイものがあると思います.特にこういう人に対しては,本書はタイトルや帯の文章から見ると,淡々と調査結果を積み上げて行き,実際の所どうだったのかを真面目に検証・研究している学術的な本であると思い込ませてしまう可能性が高いので危険.

 どのような書籍・論文であっても,多少は著者の思想信条的なものが介入する余地があるのは認めます.しかし,ここまで強引に話を展開されてしまっては,真面目に学術的に研究をしている人達の成果を踏みにじるものと言えるのではなかろうかとも思います.

 と,書くだけではよく分からないと思うので,いくつか引用しつつ検証.

○レーダーは日本人が発明!?

p.147より引用
レーダーは、もともと、東北大学の八木秀次享受が発明して実用化したものである。
だが、軍部は、採用しなかった。特許庁と商工省が、「電探(レーダー)は発明特許としてみとめがたい」と、特許の申請を取り消したからである。

軍部が「敵に居所を知らせるようなもの」と、レーダーの導入をはねつけたのは、特許庁や商工省が特許申請を抹消したものを採用すると、担当者の責任が問われるからで、官僚化がすすんでいた当時の軍部には、レーダーを導入する柔軟性さえ失われていたのである。

 如何でしょうか?

 衆知,公知な事実であれば,出典や具体的内容を省略して記述するのもアリだと思います.が,本当に本書に書かれていたように,レーダーは東北大学の八木教授が発明し,実用化した物なのでしょうか?以下,出来るだけオンラインで閲覧可能な記事を適時引きながら検証してみましょう.

 まず,八木教授が発明をしたのは,八木アンテナと呼ばれるアンテナ(正式には『八木・宇田アンテナ』)です.『レーダー』今もTV受信用アンテナ等として広く使われており,よく屋根の上に乗っているのを見掛けます.各家庭でこれをレーダーとして利用しているわけではないことからも分かる通り,これはレーダーそのものではありません.レーダーの構成部品でもある『アンテナ』です.なお,『レーダーのアンテナ=八木アンテナ』でも無いことにも注意してください.

 そしてレーダーは,強力で安定した一定の波長の電波を発振可能でなければなりません.これに用いられていた重要なパーツが,マグネトロンです.1927年に分割陽極型マグネトロンが岡部金治郎により開発されていますが,マグネトロンそのものは,1916年にGE社の研究所で,Albert W. Hullにより発明されました.そしてこれもレーダーそのものではなく,構成部品の一つです.

 そして八木博士がレーダーを発明したという事実は見付けることが出来ず.では,本書に書かれている,八木教授が特許申請し,『特許の申請を取り消された』電探の特許とは何のことでしょうか?少し調べてみたのですが,分かりませんでした.

 ちなみに八木アンテナの基本である電波指向方式の発明は,国内外共に特許を取得しています.また,件数は辛うじて2桁程度ですが,実際にいくつかの特許出願をし,そのうちの一部は審査の結果拒絶理由通知がされ,意見書等を提出するという経験をさせてもらっている私の経験から言うと,『発明特許としてみとめがたい』という文言で特許庁から拒絶されることは想像しにくい(『昔は違った』という話はあるかもしれませんが).『発明として認めがたい(新規性,進歩性が無い)』という理由で拒絶されるのであれば分かるのですけど.でも,別に軍事利用の場合は,新規性・進歩性が無くても使い物になればそれで十分ですよね.

 ちなみに『ペテン』をもじって『ペテント』と呼ばれるような特許もありますし,必ずしも『特許になっている=良い技術』というわけではありません.そして特許として認められてしまうと,その内容は公開されてしまうほか,その独占的な利用は期限付きになってしまいます.そのため,企業秘密や軍事技術に関わる場合は,むしろ積極的に特許出願しない場合もあります.

 そしてレーダーの研究は,1930年頃から行われていた電離層の観測の際に,航空機の通過で観測が妨害されたことが切っ掛けとなって開始されたと言われています.そしてWatson-Wattが1935年に"The Detection of Aircraft by Radio Methods"を発表し,飛行機探知の公開実験に成功しています.詳しいレーダー開発に関する歴史は,このページこのページをご覧になると良いでしょう.非常に勉強になります.

 以上のような話を踏まえますと,本書に記載されていた『レーダーは、もともと、東北大学の八木秀次享受が発明して実用化したものである』という一連の話は事実誤認であると思うのですが,如何でしょうか.

 また,前述の引用部分のセリフの内容から考えるに,著者が書いている『軍部』とは,海軍のことだと思われます.だとしますと,伊藤庸二技術大佐の話抜きでレーダー開発関係の話をすることは出来ないでしょう.

 日本では,伊藤氏らが1932年から電離層定期観測を行っており,そしてその後のレーダーの開発に尽力しています.軍部が『レーダーの導入をはねつけた』のであれば,伊藤氏が海軍の艦政本部の外局である技術研究所で長年に渡って行っていた研究は何だったのでしょうか.あるいはこれとは別に,民間から何らかの製品の売り込みがあったけれども,軍部は採用しなかったという事実があったのでしょうか.謎です.

 なお,ここでは詳しく書きませんが,海軍のレーダー開発等の話に関しては以下の書籍が詳しいので,興味のある方は御一読をお勧めします.研究分野に籍を置く人にとっては,何やら他人事に思えない話も多いでしょう….

参考文献1:日本の軍事テクノロジー―技術者たちの太平洋戦争
参考文献2:海軍技術研究所―エレクトロニクス王国の先駆者たち

 この他,レーダーは「敵に居所を知らせるようなもの」(*)や「暗闇で提灯をつけるような物」という発言があったという話を散見するのですが,そんな意見を言った人はいないという話もあり(上記の参考文献2に載っていた覚えがあります),この発言ありき&発言があったがためにレーダー開発が遅れたと考えるのは危険だと思われます.そういう意味では,このような発言を,『誰が』『どの会議で』発言したのかを知りたい所です.

 当時既に英独米がレーダーを駆使しているのは日本でも知られていたわけで,仮に特許の話や担当者の発言が事実であったとしても,レーダーや逆探を研究しなくても良いという結論に到った理由としては弱いように思われます.私はむしろ,研究資金の獲得(予算の割り振り)の力学が作用し,より実戦的な方面には手厚く.そしてレーダー研究のような,キーテクノロジーになる可能性はあるけれども実用化・戦力化の可否に疑問がある方面に対しては,予算があまり割り振られなかったのではないかと思います.

 また,往々にしてこのような分野は,目に見える成果が出にくいこともあり,成果の評価がしにくい.そして成果の評価がしにくいということは,その部署の管理職の評価にも直結しない場合がある.すると既に他ポストで十分な発言権を持っており,政治力を持っている実力者が,異動してこのような分野の統括ポストに就くことは少ないかと思います.大抵は生え抜きの研究者が管理職ポストに就くことになると思うけど,研究者や技術者で政治的スキルのある人は多くない印象がある.現在の日本の基礎研究の分野でも,似たような話は多いですよね.

(*)発言の意味する所をそのまま説明すると,レーダーを使用する場合,探知側は必ず電波を発しなければならない.すると被探知側は,自分に向けて電波が発せられていることを知ることにより,敵の存在を探知することが可能となる.また,探知側は反射波を捕えてはじめて敵を補足することが可能なわけで,電波の減衰を考えた場合,一般に非探知側は探知側よりも遠距離から敵の存在を知ることが可能となる.この原理を応用し,敵の発したレーダー波を探知する装置を逆探と呼ぶ.独軍のU-Boat(潜水艦)に取り付けられたビスケー湾の十字架が有名.

 以上のように,レーダーに関する記述を検証してみると,非常に怪しい内容でした.しかし,引用したような自信たっぷりな断定口調で書かれると,大抵の人は記述内容を信じ込んでしまうのではないでしょうか.危険です.そして『ん?』と,引っかかりを覚えた場合でも,真偽を調べようにも出典等が全く記されていないため,調査や検証は困難です.場合によっては,『昔そういう話を聞いた覚えがある.出典は分からない』というレベルの話が多いのかもしれませんし….特に本書の場合,巻末に参考文献一覧表のようなものすら用意されておらず,この手の書籍としては,不自然さすら感じます.

 以下,もう一つだけ例を挙げてみることにします.なお,ここに書かれている『山本』とは,『連合艦隊長官の山本五十六』のことです.

○連合艦隊長官 山本五十六

p.104
山本は、真珠湾攻撃にむかう途上、宣戦布告が遅れないか、そればかり心配していたと言う。

 真珠湾攻撃に山本長官は向かっていません(機動部隊に同行していません).山本長官は,瀬戸内海桂島に停泊中であった,連合艦隊旗艦の『長門』に座乗して指揮を執っていました.

p.105
山本は、戦死するまで、軍令部に赴くことも、前線の指揮官を呼ぶこともなく、旗艦に腰をすえ、カジノのディーラーが配られたカードをながめるように、じっと戦況を見ているだけだった。

 ミッドウェーには,大和に乗って自らも出撃している筈ですが….機動部隊後方500海里ではありましたけど.ただしこの場合も,『旗艦に腰を据え』と言えなくもないですが….

 また,戦況を見ていただけということは無いと思います.ミッドウェーでもいくつか指令を発しています(本人直接かどうかは判断できませんが)し,軍令部と作戦方針で度々揉めたようですので,本当に赴いたことが無かったかは疑問です.

p.107
山本は、アメリカに傍受されていることを承知で、あちこちに、飛行予定を打電している。死因も、機銃創や墜落による外傷ではなく、小銃による自殺だった。

 『旗艦に腰を据えて(中略)戦況を見ているだけだった』と書かれていた山本長官が,2ページ後には自ら前線基地へ視察&激励に出ている(苦笑).

 電文は,暗号化されたものが打電されています.また,超VIPが来られるということで,遺漏無きよう関係各所にタイムスケジュールを打電するというのは,それほど不可解なことではないように思います.何某かの陰謀が渦巻いていたというよりも,むしろ,戦地にいるにも関わらず,安全な地域にいるのと同じように振舞うという失敗を犯したという見方の方が自然に思います.

 具体的には,長文の打電や打電数の増加は好ましくないということに対する配慮不足(暗号が解読されやすくなる&何らかの動きがあることを悟られる),そして結果的にではありますが,暗号が解読されていたのでスケジュールが全て漏れていたという事実,そして時間に正確に動いてしまった(山本長官は非常に時間に正確な性格であったという話もある.一般を書くと,危険が存在するのであれば,直前になってあえて予定から時間をずらしたり,ルートを変更するようなことが行われたりする)ということが悪く連動してしまったということです.

 また,スケジュールの打電に関して,どこ宛にどのような内容で打電するかまで一々長官の裁可を仰ぐとは考えにくい.これは私の想像ですが,この背後には,長官に失礼の無いように…失敗が無いように…と,あたふたとスケジュール調整する中間管理職の姿が連想されませんか?政治家が視察に行くときの周りの状況と同じような感じではないかと.

 そして昔は『機上で壮絶な戦死』と言われていた山本長官の最期が,『死体検案書』や『死体検案記録』,その他様々な証言が出てきたことにより,実に多くの説が出てきました.そして死因に関しては現在複数の説があり,『自殺』と断定されているわけではありません.そういう意味では,『小銃による自殺だった』と断定的に書かれるのであれば,もっときちんとした論拠,ないしは出典を明示する必要がありましょう.

 個人的に一番引っかかるのは,自殺には『小銃』を使用したと記述されている部分.小銃を用いて自決するのは大変(銃口を顔/顎に付け,ブーツを脱いで引き金を足の指に引っかけて引く!? あの38式/99式小銃を?特に38式なら,銃身長から言って,とても難しいんじゃ…)ですし,その小銃は誰が機内に持ち込んで行ったものでしょう?仮に長官が自決を試みるのであれば,携帯している拳銃を使う方が自然ではないでしょうか?

参考になりそうな文献: 山本五十六の最期―検死官カルテに見る戦死の周辺

 この『山本長官の最期』の話に関しては,本当に様々な説があります.撃墜された一式陸攻に搭乗したのは影武者だったとか,実は山本長官は米国のスパイであり,このときに密かに脱出してガダルカナル(!!)の米軍基地に逃げ込んだのだとか等々,陰謀説も百花繚乱です.

 と,このような感じでして,読んでいて『たまに』ではなく,殆ど毎ページ,それも多いときは1ページ内で何箇所も引っかかる部分がある本でした.例に挙げたような小さな話から戦略的な大きな話まで,実に様々なスケールの話で引っかかりがありました.

 なお,私の立ち位置としては,技術力や資源,生産力等のトータルでの国力に差がありすぎたため,日本は負けたと考えています.開戦初頭のように,局所的に戦術的な勝利は得られるでしょうが,長期戦になると明らかに不利でしょう.そのため,短期決戦&早期講和の可能性がなければ,勝つのは厳しかったと思います.著者の書かれているような『絶対国防圏』を長期持久しようにも,通商路破壊戦をしかけられれば,対潜能力の乏しい日本は一時期の英国以上の辛酸を嘗めることになるでしょう.実際に先の大戦においても,フィリピンが日本軍の勢力範囲下であったときに於いても輸送船に甚大な被害が出ています.

 ここで話を止めてしまうと『これは酷い』だけの話になってしまうので,以下,もう少し一般的な話にすることを試みてみます.

○理想的な本の書き方/書かれ方を考える

 私が本書の書かれ方に関して,マズイなと感じたものの一部を挙げると,以下のようになります.

  • 論拠として提示している物の出典が不明
  • 各記述に関し,他者の意見なのか自分の解釈なのか表現が曖昧
  • 仮説なのか事実/定説なのかを厳密に区別して書かれていない
  • 複数の捉え方が可能であったり,複数の意味を持つ言葉を用いる際に,きちんと定義を行わずに使用(抽象的な概念のまま説明し,議論がぼやける)
  • 信憑性に疑問を抱かされるもの(仮説等含む)を論拠としつつ議論を積み上げる

注)一応補足すると,「全てがダメ」というわけではなく,大部分の記述に上記のような問題を抱えているということです.例えば参考文献が一切挙げられておらず,引用した際にも出典が書かれていないのだけど,出典を推測することが可能な情報が載っている箇所もあります.

 著者がその道の専門家であり,信頼度が伴っていれば,ある程度目をつぶることが出来る(説明不足であっても,「この人が言っているのであるから信頼に足る」と解釈出来る)ことはあるでしょう.しかし,例え著名人であっても,この効果を免罪符とせず,可能な限り調査を行い,その結果得られた新たな事実や,これまで議論されてきた内容等を積み上げ,その上で自分の仮説を論証するという手法を採るべきであると私は考えます.

 本書の場合,このような真実の追求に対する真摯な姿勢が見えず,まずは結論ありき/主張ありきであり,そして著者にとって非専門の分野であるにも関わらず,調査をきちんと行わずに何となく知っている都合の良い材料を並べて…的に見えてしまいます(実際には,私が伺い知れないような膨大な調査を行った上で,執筆されているのかもしれませんが).

 自分の意見や主張を他者に説明する際には,たとえ結論が正しいものであっても,そこに到る道が誤っていれば,全て誤りと評価されることになっても文句は言えないでしょう.第一,途中の議論がどうでも良いのであれば,結論だけを書けば済んでしまう.『○○は□□だ』ってだけ書けば終わり.


 しかし…こういう執筆に対する姿勢って,例えば学校でもビシビシ鍛えられる所だと思うのだけど,このような考えは一般的ではないのでしょうか….

 例えば大学のゼミとかで,「○○は□□です」なんて安易に言おうものなら,

  「その根拠は?」
  「それは君がそう思うだけじゃないの?」
  「孫引きではなく,一次資料に当ってみたの?」←これは結構キツイときがある(汗)
  「その説は近年否定されている筈だけど.きちんと最近の動向も調査してるの?」
  「結局何が言いたいの?新規性はどこにあるの?」

 なんて辛辣なツッコミを,大勢からマシンガンのように撃ち込まれるシチュエーションは大いにあり得ると思うのですが….

 とは言え,私も専門外の書籍を読んでいて,『うっかり信じ込まされてしまった』ことはよくあります.そんなわけで,内容/分野によっては,一般向けの出版物にも査読制度(注:検閲制度にあらず)を導入して欲しいなぁと思ってしまうときがあります.

 ただ,査読者選択の問題とか(例:当該分野の査読者としては素晴らしいけど,著者と利害の対立があるとか),お金や時間の話など諸々問題があるので,実現は難しいでしょうね….『内容に関して第三者が査読済』というのを付加価値的に使えたり,その際には『査読者:○○』という感じで著名人の名前を使わせてもらえれば,ある程度セールス用に権威付けとかも出来ると思うんですけれどもね.現在店頭に積まれている本の帯に書かれているような,著名人の推薦文が同様の役割を果たしている場合もあるかと思いますが,『お金もらって書きました』とか,『知人・友人としてメッセージを寄せています』という印象を受ける場合も多いかと.

 話は少し飛びますが,Blogの場合は元々双方向メディアですので,公開後になりますが,コメントやトラックバックが査読者からのコメントと同様の役目を果たしている気がします.いや,読者はそのやり取りまで追えるので,論文の査読システムよりも強烈かもしれません :-).既に実践されている方もおられますが,書籍を刊行した際に,そのフォローアップ用として何らかのサイトやページを開設し,双方向性を持たせるようにしても面白いように思います.もちろん,このようなサイトが管理者に都合の悪い意見は削除しまくる…のような管理方針だと意味ありませんけどね…

 今回は非常に長々と書いてしまいましたが,『結局は受け手側のメディアリテラシーが重要』って話になるのかもしれません.出版物だけでなく,TVでも同じ問題があると言えるけど.

 それにしても…ここまでAmazonのレビューが自分の感覚とずれていたことは初めてです.

[2007/11/17追記]
 念のため,もう一度ざっと目を通してみたら,序章に以下のような記述がありました.

p.16
 本書は、書籍や雑誌記事のほか、ネット情報も参考にさせてもらった。多くのひとから教えをうけ、そのなかには、子どものころに聞いた父や教師の話までふくまれている。
 参考とさせていただいた原典は、個人的意見や体験以外、際限がないので、しめさなかった。歴史的事実や定説、人物の発言やふるまいについても、原典引用を不明にすることを目的としたリライトは最小限にとどめた。
 本書は、東京裁判史観から自由な人々との、事実上の合作で、著者はアンカーライターをつとめたにすぎないことを申し添えておく。

 すっかり見落としていました.著者自らが原典を明らかにしないということを宣言してました.

 それにしても,『際限がないので,しめさなかった』という理由は如何なものかと….また,『原典引用を不明にすることを目的とした…(後略)』と,ありますが,引用を行う場合は公正な慣行に従う必要があります.詳しくは,例えばこのページを参照のこと.著作権法で言うと,第32条や第48条が関係してくるかな.著者の中で,『参考』と『引用』の線引を,どこでしているかは分かりませんが…

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