ミリメシおかわり! 続―兵士の給食・レーション 世界のミリメシを実食する
レーションに限定した話に戻すと,古くは前線近くにフィールドキッチンを進出させ,そこで調理したものを配給していました.しかし現在は,火砲の発達による火器の長射程化や,機動力のある機械化部隊によって実現可能となった電撃戦により,各兵士が個人で携行可能なレーションが必需品となっています.そして第二次大戦の頃は「配食が行えないときの食糧」という部分もあったわけですが,現在は長期作戦中,連食し続けることも可能な携行食糧として開発が進められています.
軍事利用の最先端テクノロジーが民生品に転用され,広く一般に使用されるようになった…と,いうケースは枚挙にいとまがないわけですが,食品関連技術に関しても例外ではありません.例えば「瓶詰」はナポレオンが軍用食の保存方法に関して公募した際に発明されたものですし,「缶詰」は瓶詰で編み出された手法をより進めた物で,初期には主に軍用食に利用されていました.そして今インスタント食品で広く使われているレトルト食品やフリーズドライも軍用携行食用に研究されていたものです.
軍用食の場合,輸送を容易に行うために軽量小型でなければならず,また,兵士はハードな行動を行うため,カロリーおよび栄養バランス的にも高い完成度が求められ,そして戦場では食は唯一の楽しみ…と,いうわけで,味や見栄えも良い物でなければなりません.「食い物の恨みは恐ろしい」というわけではないですが,「戦艦ポチョムキンの反乱」(腐った牛肉入りスープが反乱の切っ掛けになった)のように,食べ物が切っ掛けでエライことになるとまでは行かなくとも,マズイものを食べ続ければ士気低下で戦闘力も低下することになるでしょう.
と,いうわけで,本書は「世界各国の軍隊はどんな物を食べてるの?」ということがカラー写真で紹介されている書籍です.本書は2巻目になるわけですが,何とP38カンオープナー(缶切り)付き.これを表紙に貼り付けてあるのですが,本を閉じたときに盛り上がったりしないよう,最初の方のページはL字型のページにくりぬいてあったりしてます.凝ってるなぁ.でも,ページめくりにくい.
前書もそうでしたが,やはりカラーで見ると食欲がそそられます.前書を読んだときには急に「SPAM」が食べたくなり,SPAM買いまくり&食べまくりしてしまいました.ホントはMREに行きたかったけど….
余談ですが,SPAMで超お薦めなのは「うす塩SPAM」.SPAMと言うと好意的な話は殆ど聞かないのですが,この製品の味は私のツボに入り,1年近く毎朝食べ続けました.その後,カロリーのことを気にして連食は避けるようになりましたが….

うす塩SPAM (楽天リンク)
で,本書の内容&構成はと言うと,Amazonのレビューにもある通り,個人的にもちょっと…と,いう部分があります.
最近はネットで調べ,その内容をあまり吟味せずに使うというということも横行しているようですが(*),活字媒体にする場合,当事者への取材,もしくは一次資料,それが入手できない場合は信頼に値する資料を当たって事実を確認して…ということを行って欲しいなぁと思ったりもします.未だに活字信仰は根強いものがあるので,盲目的に内容を信じる人も多く,影響力は大きいのではないかと.読者側の問題も多分にありますが.(同氏による『U.S.ミリタリー雑学大百科―アメリカ陸軍軍装・装備コレクション・ガイド』はマニアックな良書だと思うんですが…)
(*)注:本書がそのように書かれていると言っているわけではない.また,本書の内容を全否定しているわけでもない.
そのようなわけで,本書に書かれている他国のレーションの紹介には「ムムッ?」と,感じる部分も多々あるわけですが,逆に取材等をしっかりしている部分に関しては,とても良い内容に思います.具体的には,陸海空自衛隊の給養部門や在日米軍の取材記事.この部分だけ取り出し,もっと突っ込んで密度を高めれば,とてつもない良書になったんではなかろうかと思います.
そう言えば,潜水艦の食堂の写真も掲載されていたのですが,案外広いんだな…と,ちょっと驚きました.ここは他の方と逆の印象かもしれませんが.あとこの写真,写り込んでいる重要な計器類,よーく見るとボカシがかかっているのでご確認あれ.
ミリメシ,もしくは本書に興味がある人は,以下の書籍やページも読むと,色々と楽しめるかもしれません.
![]() 『戦闘糧食の三ツ星をさがせ!―ミリタリー・グルメ』 ミリメシブームの原点とも言える書籍.超お薦め |
|
![]() 『戦闘糧食の三ツ星をさがせ!―ミリタリー・グルメ』 上記ミリメシブームの原点とも言える書籍の新装版 |
|
![]() 『世界のミリメシを実食する―兵士の給食・レーション』 本書の前作 |
お薦めのWebページへのリンク: THE戦闘糧食
| 固定リンク
コメント