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2017年8月 9日 (水)

かーそる 2017年7月号 特集『書く道具と 書く動機』を読んで

創刊号のレビューを書いたのは既に半年以上前.非常に面白い内容,そして長期的な試みであるように感じただけに,『早く次号が出ないかな』と,首が伸びまくる状態でした.そして首の長さがキリンになりつつありましたが,『2017年7月号』としてようやく出ましたヨ,そして今号も面白かったですヨ,ということでご紹介.

 

興味深いテーマ

第二号の特集ですが,『書く道具と書く動機』です.

『書き方』ではなく『書く動機』という変化球にグッと来ましたが,長くなりそうなので『書く道具』に関して.

これは文房具クラスターやデジタルガジェットをこよなく愛するクラスターの人達が感心を持つテーマです.そんなわけで,本文を読む前に感じたことを正直に書くと,『日和ったな!シャァ!』という思いです.読者の裾野を広げるために,ある意味無難な路線に走ったのだと感じました.

でもこれは私の勘違いでした.

普通のモノ系の雑誌でしたら識者がモノを紹介,例えば『私の愛用のペンは○○社の□□.書き味が滑らかで思考を止めません』的な,広告と見間違うような内容の紹介記事の羅列であったりしますよね.はたまた,モノをネタに掘り下げ,脱線し,様々な蘊蓄が語り尽くされて…という文字の多い本であったり.あ,ワタクシ,後者の本は大好きです.そんなわけで,本号中で るう女史も紹介されていた片岡義男のこの本とかこの本は大好き.『万年筆インク紙』は出版されていたことすら知らなかったので,紹介されていたのはとても有り難かった.で,Amazonでポチッ(笑)

そうそう,片岡義男と言えば,『彼のオートバイ、彼女の島』等の小説の印象が強いですよね.私も年季の入ったバイク乗りなのですが,乗り始めたのは片岡義男の小説とバリ伝の影響が強いです.あと,彼のオートバイ…の映画の方も凄くって,主人公のイケメン兄ちゃんが(今だと難波で金融業を営む方の映画主人公のイメージが強い)竹内力だったり,ヒロインが原田知世のお姉さんで,国内初デビューでいきなりヌードで登場したりとかインパクトが強い作品でした…閑話休題.

で,最初の記事がポメラの記事だったため,ガジェット愛が語られ始めるのかな…と,思って読み進めたら,ジェットコースターでした.

序盤,ポメラのモデルの歴史の話から始まるのですが,これはジャブのようなものでした.ジェットコースターで例えると,位置エネルギーを溜めるために頂上まで登る過程のような感じ.登り切った後は一気に急降下.水平ループや垂直ループ,キャメルバック等多彩な技で楽しませてくれました.

そうそう,これが『かーそる』節.モノの表層的な部分をお上品に体裁良くまとめるのでは無くて,ザクザクと大胆に様々な切り口をこじ開けて考察し,そして執筆者の得意なフィールドで含蓄溢れる話が始まり,そして終わる頃には何だかよく分からないけど,色々と考え・考えさせられることによる適度な頭の疲労と,何とも言えない満足感が得られるというパターンです.それにしてもポメラの話がレイ・ハラカミの話しに飛ぶとは…素晴らしい.

匂いと音楽は言葉で表現しにくいので,『伝説のSC-88Proマスター rei harakami』(実に素晴らしいまとめページ!!)に貼られている動画を再生し,レイ・ハラカミ氏の偉大さを感じて下さい.ほんと,良い曲ばかり….

で,技術系クラスターの人向けに,ここでポメラD200にLinuxをインストールして…なんて感じで脱線したくなる思いではありますが,1つめの記事を読み終えた瞬間に,既に『今号も星5つだな』と,予感がした次第です.

変わった雑誌

『変わった』は『平凡な』の反対の意味なので,褒め言葉です.

前回も書いたけど,商業誌は基本的に一方通行のメディアじゃないですか.そして中間的な所に同人系のメディアがあるのかなという気もするけど,基本的に情報を与える側と与えられる側でバッサリと分けられる.読者が『俺の考えも聞いてくれ~』と,なっても,与える側を介さないと読者コーナーにすら載らないし,扱いも小さいのが一般的.

しかしこの雑誌では『ひびきあい』と題し,第二特集に匹敵するような密度で創刊号に対する読者の反応とその後のやり取りを掲載しています.

電子書籍も含めて『書籍』は基本的に,パブリッシュしたらコンテンツは固定じゃないですか.その一方で,ネット上の文章は適時書き換わる/書き換えられるし,『リンク』という形で他にも繋がる.そして相互に影響し合いながら動的に変化して行く.そういう意味では,プラットフォームとしてはネットの方が良さそうに見えます.

しかし同じ事について書かれた文章を読もうとした場合,経験的にはネット上のものよりも書籍化されている物の方が良質な情報であることが多い.

その一方で,最近話題になっていたけど,『ネット上の良質な情報が少なくなり(&S/N比も悪くなり),かと言って(数は売れないけど内容は素晴らしいという)良質な本も殆ど出版されなくなって来ていて,結果,良質な情報は何処にも無くなってしまった』なんて話もあります.

実際,この状況は技術系の人は切実に感じていると思う.昔は1冊1万円近くする本を買えば載っていたであろうニッチかつ難しい情報をネットで探しても見付けられないし,そもそも本当に辿り着けるのかすら怪しい.かと言って本屋に行っても,今時そんな儲からない本を出す酔狂な出版社は少ないわけで,これはこれで求める情報が載っている書籍に辿り着けるか怪しい.なかなか世知辛い世の中になりましたな.

と,少々脱線気味なりましたが,(少なくとも昔は)書籍の方が良質な情報が載っていた理由は

  1. 編集者や共著/他の執筆者の適切な介入
  2. コンテンツが固定されて永遠に残ることをプレッシャー/動機付けとする,十分な推敲 

辺りかなと思います.そしてこれらが無いと,一定以上の質を維持するのは難しいのかなという気もします.

このような視点で本誌を見た場合,非常に良い所を突いている感じがします.具体的には,

  • 書籍用に練られたコンテンツ
  • 執筆陣と読者の絶妙な距離感.反応を返しやすい
  • ネットでの反応を吸い上げて情報の二次生産を行うエコシステムが機能

辺りでしょうか.

ネット上のメディアでも出来ないことはないと思いますが,敢えて電子書籍を介することにより,よりうまく機能するシステムになっているような気がします.

『かーそる』に感じる熱量

創刊号のレビューでも書いたのですが,『かーそる』には,とんでもない熱量を感じるんですよ.

普通の雑誌の場合,編集者がお題を述べた後,執筆陣が順番に粛々とバトンを渡すリレー形式で進むじゃないですか.ところが『かーそる』では,合図と同時に執筆者全員が一斉に走り出し,全員でがむしゃらにゴール目指して走っている感じがするんですよ.更には,観客席に座っていた人までもが熱にあてられて『俺も』『私も』と,走り出してる.そして面白いことに,同じコースを走っている(同じテーマを書いている)はずなのに服装も走り方もバラバラ.でも全員がゴールを走り抜き,そこで止まらず場外乱闘…もとい,書き足らないからネット上で続きを書くぞ…みたいなバイタリティ.

そして読んでいるときの距離感が,ブラウン管…もとい,液晶の向こう側の出来事を冷静に見ているという感じでは無く,もっと身近かつ熱さを直に感じるのも一般の商業誌と違います.読み終えた後では無く,読みながら『今すぐ私も動かないと!』と,いう気になります.まるでライブ会場に居て,気が付いたら椅子から立ち上がっていて…という状況のように.

『書くこと』について書いてみる

『書く』って楽器を演奏したり絵を描いたりするのと同様,表現手段とか方法の一つじゃないですか.でも,『話す』ことと同様,一般にあまり深く考えられていない気がします.やはり身近過ぎる表現方法で,何も考えなくても何となく出来てしまう(気がする)からかもしれません.

例えば将棋ってあるじゃないですか.今年は藤井聡太四段の連勝記録が注目されていましたけど,プロになることを目指さなければ,誰でも手軽に遊べる『ボードゲーム』ですよね.ルールはそれ程複雑ではないので,小学生低学年でもちょっと教えればすぐに指せるようになる.でも,『ルールを知っていて指せる』と『指して勝てる』は別.定跡・戦法・手筋を勉強して自分でも考えて…という感じで指さないと,一定以上のレベルの人には勝てない.知らんけど(笑).

何となく『書くこと』に似てますよね.

文字を書けて文法知っていれば何となく書けるけど,それだけじゃ何も伝わらない.先人達の書き記した書物を読めば,話のネタの引き出しや表現力が豊かになる.そして書き方の方程式を知ればリズム感が出るし,著名人達の書き方を学べば自分の個性的なスタイルを確立出来る…かもしれない.そして勝てるかもしれない.

え?書くこと・話すことは勝負じゃないって?

書くこと・話すことを武器として使うときってありますよね.例えば相手を説得したり動かしたりというシチュエーション.このときは正に勝負.こんな本が売れまくっているくらいなので,このようなシチュエーションで悩んでいる人は多く,実戦的に使えるテクニックはそれなりの需用あるようです.

ただ,身近に存在するのはそういった殺伐とした場だけではなく,勝つことはあっても誰も負けないシチュエーションも多いですよね.例えば相手を愉快な気分にしたり慰めたりする場合は,(うまく行けば)みんな勝者だ.

『書くこと』や『話すこと』っていうのは,自分の手なり口が紡ぎ出した言葉が,相手の目や耳から入って染み渡り,中で化学反応を起こして相手の何かを動かすわけです.北風と太陽の寓話のように,無理矢理外部から…ではなく,言葉が内面的に働いて自主的に動く原動力になる点が重要.なので,相手の化学式に合わせた言葉という物質を投入しないと化学変化が起きないのです.そして狙い通りに化学反応を起こし,腹の底から笑わせたり,感動させたときって『やった!』って爽快な気分になりますよね.私の『書く動機』はこういった部分にあるような気がする.

話を『かーそる』に戻すと,そういう部分がとても上手いんです.読んでいて気分が良くなる.

例えばインタビュー記事の中で,文章の構造を音楽に比喩する部分があるのだけど,唐突に『バロック』という単語が出て来ます.少し意識高い系の雑誌の場合,『普通知ってますわよね』的な文脈になっていたり,欄外にコラムとして書かれていたりするでしょう.でも『かーそる』では,インタビュアーが分かりやすく説明してくれます.それも不自然な解説が始まる感じでは無く,平易な言葉で心地よく.染み渡り,そして知識の血肉になります.

実に読者の気持ちに対する配慮が行き届いています.そういえば,ある学会の論文投稿規定の中に『失礼な書き方をしない』という項があり,『広く知られているように…』という書き方がNGになっていました.理由は『科学的では無い(根拠が曖昧)から』ではなく,『知らない人に失礼だから』ということでした.

そんなわけで,精神的に安心して読み進められる『場』と,心地よく諸々を考えさせてくれるメロディ,そして多彩なバックグランドを持つ執筆陣が披露する様々なネタで実に心地よくなれます.

読書家ってホント,知識の幅が広くて面白い話をよくご存じだし,専門家は自らのフィールドの専門的な話を一般向けに分かりやすく興味を持ってもらえるように伝える腕がある方が一定数居るので,そういう人達が執筆陣として集まっている雑誌は実に読み応えがあります.

『究極の行間』について

最後にAmazonのレビューに書き切れなかった『行間』ことについて.

人と会って話をするときって,前もってその人のバックグラウンドを調べたり,その人の専門分野について勉強したりするじゃないですか.でないと,本題に入る前に時間を浪費したり,色々と目が曇って話の本筋が見えなくなったりする.そして実際に話し始めた後は,その人の仕草や雰囲気を観察したり,発せられる言葉の本意を考えたりしますよね.

例えば仕事の打ち合わせの時に,お客さんから『○○は出来ますか?』と聞かれたします.このときに大抵は『ハイ』と『イイエ』の何れかの答えを返すと思いますが,必ずしも質問の答えをすれば良いわけではないんです.何故お客さんがその質問をしたか,そしてお客さんが本当に欲しい物・したいことは何かを常に考えるべきなんです.

そのため,『出来ます.ただし,お客様が本当に必要な物は○○ではなくて□□のようなことではないですか?そして…』なんて展開もあり得ます.そして本当に必要な物をお客さん自身が認識していないこともよくあります.それを失礼が無いようにうまく説明して,実現する未来を想像したお客さんの目がキラキラし始めたら…みんなハッピーですよね.

別にこれは仕事だけではなくて,深い浅いはあるけれど,日常的にどこでもあるシチュエーションです.でも,結構無頓着な人も多い印象が….あ,一応書いておくと,この話は『空気を読む』とは全然違います.

で,会って話をする場合は身振りや表情,声のトーンなどのノンバーバルコミュニケーションで補完される部分がありますが,文章の場合はそのような情報はありません.そこに存在するのは『活字』と『行間』だけです.活字を追って得られない情報は,想像力を膨らませて行間を読むしかありません.

そして著者は常に読者を何らかの形で(良い意味で)誘導しようとしていますので,そういった著者の思いや意図,計算や考え等を想像しながら読み進めた方が,より多くの気付きや発見がある筈です.

『かーそる』では,『この書籍ではこんなことを考えて文章を構成し…』といった明日から使えるテクニック的な話をはじめ,裏話的なバックグラウンドまで披露されています.ある意味,過去に読んだ書籍の行間の答え合わせを,著者自らの解説で出来るわけです.普通は出来ないことなので,これは面白い.

と,いうことで,書評を書くつもりが話が発散しっぱなしですね(^^;

読めば読むほど奥深いので,なかなか書評的なまとめは困難ですが,『考えることが好きな人』や,『新しい知識を得ることが好きな人』はとても楽しめる雑誌だと思います.

そしてその一方で,手軽に試せる書く環境の整え方や道具の記事もあります.硬軟両方からグリグリ来られるので,読んでいて休まる暇がありません(笑)未読の方は是非読んでみて下さい.得られるものが沢山あるはずです.

そのようなわけで,次号も期待しています.

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