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2015年12月14日 (月)

小型Bluetoothスピーカーを色々試す(4):音の比較

前回予告した通り,今回は一連のスピーカーの周波数特性を調べてみます.

とは言っても,無響室で校正済みの機器を使用して…というものではなく,手元のiPhoneを使って手軽に行う方向です.当然ではありますが,そもそもiPhoneのマイクの周波数特性は悪そうだし,今回の結果はあくまでも参考程度ということででご勘弁を.

使用するアプリはe-scope 3-in-1というアプリで,AppStoreで240円で購入出来ます.かなり高機能で遊べるので,音に興味がある人にはオススメなアプリです.

で,このアプリには『FFT同期スイープモード』というのがありまして,リアルタイムで周波数特性を測定できます.動作としては,特定の周波数をスイープしながら再生し,マイクから拾った音をFFTかけ&音圧をチェックしてプロットしていくというもの.

今回は,このモードでスイープ時間100として実行しました.

下は計測中画面.低音からスイープし,マイクで拾った音を緑で表示.履歴を赤でプロットしていきます.

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大事なことなのでもう一度書きますが,専門的にやるとしたら手間も時間もかかりますし,何よりも設備が必要です.今回の結果は,目安と言いますか,傾向を見る場合はこのくらいで良いかな程度で見て下さい.

ここで予備知識.

ヒトの可聴域は20~20kHzとされています.そしてこの範囲の周波数特性がフラットであれば,『素性の良いスピーカー』ということになります.しかし,イヤホンやヘッドホンも含め,そういった製品はほぼ無いと言って良いんじゃないかな(少なくとも私は見たことが無い).

今は昔,現在は某大学で教鞭を執られてる某教授が,巷の様々なメーカーのヘッドホンの周波数特性を調べ上げておられまして,それをレポートにまとめていました.これを見せて貰ったことがあるのですが…何十万もするようなモニタヘッドホンであっても結構フラットでは無いのだなぁと言う感想を持ちました.

ただし,『特性をフラットにしたいけれど難しい』という理由だけではなく,メーカーが綺麗な音として聞こえるようにするための味付けとして,意図的に特性を歪めている場合もあります.主にリスニング系.具体例を挙げると,低音が豊かだと迫力を感じ,高音が大きいと澄んだ音に聞こえますよね.ドンシャリ系がその尤もたる物です.

そして人間の聴覚の話をすると,同じ音圧の音を聞いたとしても,周波数によって音の大きさの感じ方が異なります.『等ラウドネス曲線』で画像検索すると出てきますが,3kHz付近が最も敏感で,小さな音圧でも大きく聞こえ,低い周波数は相当大きくしないと同じ大きさに聞こえません.また,個人差もあるし,加齢によって高い音が次第に聞こえなくなって来ます.

と,いうことで,同じ音でも人によって聞こえ方は変わるし,聞いたときの感じ方も違います.そのため,一概に『良い音/悪い音』と言い切ることが出来ません.同様に,スピーカーも(よっぽど良い物/酷い物は別として),『これは最高だ』と言い切ることが難しいでしょう.

で,話し戻って測定方法ですが,iPhoneのヘッドホン端子から有線接続し,再生音量はiPhone側で同じレベルに統制し,スピーカーから3cm程離した正面にマイクを向けて計測するといったもの.まぁ色々と手抜きですが,目安なんでご容赦を.

***

まずは前回紹介したAnkerのポケットサイズ

1.5kHz付近が若干凹んでいるように見えますが,思ったよりもフラット.高音は10kHz付近まで伸びており,低音の方は500Hz以前が下り坂といった感じ.

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次は前々回紹介したTaoTronics TT-SK05

最大の音圧がAnkerのグラフと異なっているので,グラフのパターンの方を注目して見て下さい.

こちらもかなりフラットなのですが,1kHzと7kHz付近に谷間がある一方で,高音は12kHz付近まで伸びています.そして低音は300Hz付近以前が下り坂.

Ankerよりも低音も高音もよく出ている印象があったのですが,測定データ的にも概ねそれが現れている感じです.

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そして次はこちらで紹介したUE Mini Boom をスピーカー正面から測定した場合.

実にフラットで良い感じですね.低い方も高い方もすごく伸びています.

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で,Mini Boomの正面ではなくて上で測定するとこんな感じ.高音がグダグダになります.

やはりスピーカー正面が音の特等席と言えるでしょう.

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そして参考までにAltec Lansing Orbit iMT237AA .このスピーカーの音を最初に聞いたときには凄まじく感動しました.

データ的には,高音がかなり上の方まで伸びると共に,8~10kHz付近に山が出来ています.これがキラキラした澄んだ高音に聞かせるための,メーカーの独特な味付けなのかもしれません.

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次は既に新機種が出ていますが,Bose SoundLink Mini.巷では『小型BTスピーカー買うなら,目を瞑ってこれを買っとけ』というくらいの評判なわけですが,個人的には,不自然な低音が好みに合わず,BOSE製品の中では苦手な部類です.

データで見ると,低音が激しく出ており,思いっ切りブーストしていることが分かります.また,高音の方はかなり上まで出るのですが,かなりバタついています.

BOSEっぽくない味付けなので,他のBOSEブランドの音が好きでも,このスピーカーに関しては一度聞いてみてからでないと購入するのは危険だと思う.

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参考値としてデスクトップ用のLOGICOOL  Z120BW

凄まじいコストパフォーマンスなスピーカーなのですが,これは『安い割に音が綺麗』という意味では無く,『えーっ,この音がこの額で!?』という感じです.

実際にデータを見ると,素晴らしく上の方まで出ています.実際に聞くと解像感も高く,そして高音がキラキラしていて綺麗な音です.特性的には多少の山や谷がありますが,変にいじってない感じで自然な音に聞こえます.

ただ,筐体の大きさの関係もあって,低音は少し不足気味.

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で,ちょっと気が向いたので,3機種ほどiPhoneからのBluetooth接続で試してみました.なお,有線接続で行った実験とは異なり,ガッチリした机の上にスピーカーを置いて実験しています.

まずはAnkerのポケットサイズ

有線接続で計測したときと比べ,低音も高音も落ち込みが早くなっています.

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次にTaoTronics TT-SK05

800Hz以下の低音の傾向が,Ankerとほぼ同じになっている点が気になります.実験条件の差ということで触れましたが,スピーカーの設置場所に関係した特性(?)なのかもしれません.

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最後にTDK A20BK.防水&2個セット&2つ同時接続するとステレオ再生可能で音場が広がって綺麗~というスピーカー.モノラルだと『ふ~ん』という音質ですが,ステレオにした途端に広がる開放感には感動します.人の感覚って意外と単純なモノですな.

コストコで激安だったので,夏頃に購入.

で,こちらも低音がこんな状況かつ,高音は他の2つに比べてかなりバタついています.

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まとめ.

まず,e-scope 3-in-1についてプッシュさせて下さい.

このアプリは凄まじく便利な上,結果にも一定の妥当性を感じました.また,iPhoneとこのアプリの組み合わせは,スピーカーの傾向を知るという意味では手軽だし,意外と実用的なものかなという印象.同好の士はこのアプリを購入するべきです.マストです.絶対です.

そして肝心のスピーカーの傾向ですが,

  • 正面から聞く分には,UE Mini Boomが自然かつ綺麗.でも,正面から外れると高音が激しく減衰する&籠もったような音になる
  • Ankerのポケットサイズはやはり低音が弱い.しかし高音はそこそこ伸びている
  • 重低音派にはBose SoundLink Miniが最良の選択だが,ズンドコが苦手な人が敬遠したくなる程の強烈な低音ブースト
  • TaoTronics TT-SK05は低音も高音もそつが無く,優等生的な音

と,いった感じでしょうか.

そしてBluetooth接続で行った実験結果の解釈ですが,

  • 低音に関しては,設置場所の影響がかなり大きい
  • SBCコーデックのせいで音が悪くなる.特に高音がバタ付くと言われており,実際にそのような傾向が見えた

辺りでしょうか.

一応書いておきますと,SBCは聴覚モデルを利用した圧縮のため,これを使ってスイープ音のような特殊な音を再生するのはどうかという気もします.別のコーデックで試してみたい所です.

で,やはりBluetoothで音楽を聞くとしたら,コーデックとしてAACやaptXにスピーカー・端末双方が対応していないと,『本当に綺麗な音』の再生は難しいのかもしれません.そしてSBCではスピーカーのポテンシャルも生かして切れていないかもしれません.

『思ったよりも音が悪いなぁ』なんてときは,一度有線接続してみましょう.同じスピーカーでも違った音に聞こえてくるかもしれません(端末側のDAがショボイともっと音が悪くなるかもですが…).

そんなわけで,最近の出張先の作業机の上にはTaoTronics TT-SK05が置かれ,音楽を奏でています.この大きさでこの音は素晴らしいですよ~.

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