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2013年12月10日 (火)

攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispersを観てきた

IT系の仕事をしている場合,『この知識は必須だよねw』と,言われる,少し特殊な…偏った分野の知識があります.

別に業務遂行上絶対に必要となる知識やスキルというわけではないのですが,何かと比喩表現に使われることがあって,元ネタを知らないと『???』となったり,同業者の会話に入っていけなかったりするので,ある意味,この業界でのサバイバルのためには必須の知識かもしれません.

例えば米国では『スタートレック』であり,『スターウォーズ』です.

コンピュータ系の趣味人/仕事をしている人とSF好きはかなりオーバーラップするため,SFのド定番のこれらドラマ/映画のフリークの人口が多いということでもあります.

尤も,これら映画が古典になりかかっているような気がしないでも無く,次第に世代交代が進んでいるような雰囲気もあります.若手にはジャパニメーション人気も凄いし…が,両作品共に新作映画が公開/予定されているため,今後も新たなフリークを生産し続けることでしょうね.

で,日本の場合はと言うと,『ガンダム』,『エヴァ』,そして『攻殻機動隊』ですな.異論は認めません(笑)

前者二つは超メジャーなんだけど,攻殻機動隊を知らない人も居ると思うので,少し解説.

元々は士郎正宗作のコミックがカルト的な人気を誇っていたのだけど,押井守監督の映画で大ブレイク.ウォシャウスキー兄弟に大きな影響を与えて MATRIXが出来たり等,国内よりも海外に与えた影響が大きいかも.

で,その後,神山健治監督のシリーズ物としてSTAND ALONE COMPLEXS.A.C. 2nd GIG が出ました.

あらすじはと言うと,全ての物が電脳ネットワーク化された社会,人間の体は『義体化』され,脳が直接ネットワークに繋がる世界.そこで引き起こされるサイバー犯罪や国家的陰謀etcを,総理直轄の独立組織である公安9課が…って話.社会情勢等の世界観や背景も細かく作り込まれており,単なるドンパチするアニメでは無く,オトナが見るアニメに仕上がっています.特にIT系の人はニヤニヤしながら観ることが出来ると思う.

このブログを読んでいる人は既に観ている人が多いと思うけど,まだであれば,購入するなりレンタルするなりして観て下さい.マストです.

それにしても…『これから観てみる』って人がうらやましいなぁ.一連の作品のインパクトを,真っ新の状態から体験出来るわけだから…おまけに格安で….一連の物をDVDで揃えるのに一体いくらかかったことか…それも数年後には廉価なBOXが出て,更にはBD BOXだと!?バンダイめ!!  が,後悔はしていない.十分に楽しめたから.

で,今回『攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers』(公式)を劇場で観たわけだけど,これは一連の作品のプロローグという位置付けの作品で,公安9課が出来るまでの物語になります.

これまでの作品では,初っぱなからネット上でのクラッキングとハッキング,やがて義体の腕力や火力に物を言わせて…って感じで,最初から飛ばしまくった展開が多かったけど,ARISE はちょっとおとなしめ.基本的に1時間物の各話完結なので,強大な敵が出しにくく,そしてまだ公安9課の組織化前なので,あのアクの強い面々が出揃って戦いに挑むという感じでも無い.そして制作陣も変わっているので,押井節とか神山展開ともかなりカラーが変わっている.

そして一応メインは,DVD/BD販売のOVAという位置付けです.そのため,上映している映画館が少ない上に2週間限定の上映.なので,劇場で観たい人は今週中に行って観て下さい.私は例によって先週の東京出張の際に,新宿バルト9で観ました.平日昼間なのに(*)凄い混みようで,攻殻人気を伺わせました.

『絶対に映画館で観るべき』とまでは言いませんが,攻殻好きな方は劇場で観て,その独特な雰囲気を味わうのが良いでしょう.劇場でのみもらえるリーフレットがあったり, border 1,2共にパンフレットを買えたりしますので,入手したい/出来なかった方も是非.

(*)『余裕のある仕事だねぇ』って突っ込まれそうなので一応書いておくと,この後,夜に某所に現地入りし,翌朝4時頃まで作業.そしてその後宿に形だけ戻って9時から打ち合わせって感じのタイトなスケジュールでありました.明日からまた新宿なんだけど,打ち合わせがメインとは言え,それでもかなりタイトになる予感…今回は映画は無理かなぁ….

***

で,スタートレックやスターウォーズは,一部を除いて非科学的かつ非現実的なSF世界な話なのだけど,攻殻機動隊はそうでもありません.いや,士郎正宗作の予言が現実の物になりつつあると言うべきでしょうか.

まずはノーベル賞の候補と言われ,今年は紫綬褒章を受賞された川人さんらの書かれたこの記事を読んでみて下さい.話の内容は2010年時点の物ですが,専門外の人であっても,とても理解しやすくまとめられています.

話の骨子は『ロボット工学3原則』と同様,BMI(Brain Machine Interface)にも倫理的な規定を設けるべきであるということで,『BMI倫理4原則』を提案するというものです.そしてその中で,現在のBMIの状況や近い将来実現するであろう事柄が解説されています.攻殻機動隊の世界の話と絡むのは後者です.

『義体化』した体を動かすためには,非常に柔軟かつ精巧に『考えている通りに動く』体が必要になります.現在既にロボット義手/筋電義手が実用化されており,表面筋電をピックアップし,指先を靴紐を結んだり卵を掴んだり等出来るほどに動かすことが出来るようになっています(動画).

原理はシンプルです.筋肉を動かそうとすると,そこに電位が発生します(正しく書くと,電気信号によって筋肉が動く).例えば左手で右手の肘よりも少し先を掴み,右手首を前後に捻ると,特定の動きに対して特定の筋肉が動いていることが分かると思います.

筋肉を動かす信号は脳から発せられ,神経を通じて筋肉に伝わっています.そしてこのときの微弱な電流は皮膚表面にも漏れ出て来ています.ここに電極を貼り付けて1000程度増幅すると,『表面筋電位』というものを計測することが出来ます.

これを義手に応用すると,筋電を元に,対応したモーター/人工筋肉を動かせば良いわけです.そして事故等で対応する部位を失ってしまって本来の場所の筋電を取れない場合,『別の部位を動かそうとするとこの指が動く』のようなことをリハビリし,脳の再プログラムを行うわけです.

動かせるのは自分の体だけではありません.BMIハウスのように,脳活動を計測して外部機器を動かすことも実現していますし,別の体を遠隔で動かすことも可能です.先の記事にも書かれている通り,デューク大の猿の脳から取り出した信号を解析してインターネットを介して日本に送り,研究所内のロボットを遠隔操作するという実験が2008年に行われています.

これって原理的には,草薙少佐が遠隔で義体を動かしていたのと一緒ですよね.ほら,SFの世界が身近に.

そして『何を見ているか/イメージしているか』を脳から取り出すための要素技術も研究されています.ホリエモンが絶賛していたマンガでも最後の方で触れられていたけど,脳から知覚映像を読み出したり,fMRIスキャンで睡眠中に見ている夢を解読する技術も発表されている.

更には脳に記憶チップを埋め込んで海馬の記憶能力をアシストする技術が開発されつつあったり,ネズミの脳が対象だけど,人工的に記憶を書き込む実験にも成功している.なので,攻殻の中でよく出てくる,『記憶をバックアップ』とか,今回のARISEでよく出てくる『記憶を書き換えられる』ってことも原理的には実現可能になりつつあるって感じですな.

# 私もこの分野に全くの無関係では無いので,あまり無責任なことは書けないけど….

まだまだ乗り越えなければならない研究的なハードルは多いし困難な壁だらけだと思いますが,攻殻機動隊の世界がもう数十年で到来しそうな感じがして,夢が広がります.

東倉さんが蒔いた基礎研究の種があちこちで芽吹き,大きな花を咲かせつつあるように思います.

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