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2011年8月22日 (月)

映画:『ヒマラヤ 運命の山』を観てきた

と,いうことで,『ヒマラヤ 運命の山』を観てきました.

この映画の題材は,ナンガ・パルバットのルパール壁初登頂の話.1970年にアタックしたドイツ隊で起きた実話です.

主人公はラインホルト・メスナー.当初計画に無かったアタックで,弟のギュンターと共に登頂に成功するものの,下山中に遭難.しかし彼らの次に送り出したアタック隊が登頂を成功させた後,ドイツ隊は彼らを見捨ててベースキャンプを撤収.ただでさえ急峻な岩壁や底深いクレバスのために危険極まりない8000m級の山の中に,ザイルはおろか装備を全く持たない状態で放り出され,吹雪に叩かれ,雪崩に巻き込まれながら絶体絶命の中を下山する…と,いう壮絶な話.そしてこのときに実の弟を失いますが,周りからは『弟を見捨てて下山した男』というレッテルを貼られます.

『俺が,俺が』な行動を見せる主人公の性格や,隊のリーダーであるヘルリヒ・コッファーとの確執,二人の遭難を見ながら見捨てたセカンドアタック隊の2人という辺りがストーリー展開を深い物にします.

 

いつもであれば,『まだ観ていない人も居るんだし,ネタバレは…』とか思ってしまうのですが,この映画はストーリーを書いても全然問題ないでしょう.何故かというと,この話は既に広く知られていることですし,映画の主題はストーリーではないんです.

重要なのは,『話としては知ってるんだけど,実際はどんな感じだったの?』という所.この映画は,スクリーンに映し出される凄まじい映像と臨場感で,その辺りを実に良く観客に教えてくれます.

最初はヒマラヤの美しい景観にウットリするかもしれません.そして映画の中盤では,雪山登山をした経験の無い人でもガタガタと震えが来て,『劇場内の冷房が強いよ!』と,錯覚するかもしれません.

映画『岳』のときは,『エンターテイメントだから』って感じで諦めていた部分が多かったのですが,この映画は違います.その辺りでガンガン来ます.その分ハリウッド映画のように,ヒーローが現れて『俺に任せろ!』って感じでトンデモ展開して全て解決&ハッピーエンドという映画でもありません.実話/事実は重く,ハッピーな人は出ません.

ちょっと残念なのは,こういう世界をもっと映画の中で観たかったな…って辺りだけど,流石に撮影が危険過ぎるので映像化は難しいだろうなぁ.

あと,これから見る人向けの話としては,この映画だけ観て,ラインホルト・メスナーを語るのは危険ということ.彼は素晴らしい/凄まじい実績を残している登山家であるし,全てに生還し,今も生きているという何事にも代えがたい結果を残している.しかし,『人間的/性格的にはどうよ?』と,いう点がよく話題に上るし,彼の著作の独善的な部分は批判されていることが多い.

そしてこの映画の中で批判にさらされているリーダーは,既に亡くなっている.また,『見捨てた』とされる一人はマッターホルンで亡くなり,もう一人は自殺している.なので,メスナーへの反論が出来ない状態.メスナー氏は来日して映画の宣伝等を精力的にされていますが,この辺りを考えると,少々感情的にモヤモヤしてしまいます.映画を商業的に成功させないといけないので,周りが担ぎ出しているって部分もあると思うけど….

このような話を書くと,芸術家と同じで天才は個性的な人が多く,特にアルピニストは自我が強くて当然であるという意見が返って来るかもしれない.しかし,日本が誇る探検家,植村直己は実に温和な性格であったと聞くし,探検家としてのスキルだけでなく,そういった面も高く評価されていた.なので,性格とスキルは必ずしも連動しているわけではないと思うんだ.

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