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2008年4月 5日 (土)

情報は1冊のノートにまとめなさい

『情報の使い方,活用法,整理術に関する新たな発見,発明をした!』と思うようなことがあったとしても,実は車輪の再発明だったりする可能性が高い.

情報を集め,加工し,使用/処理し,蓄積する作業に関し,如何に効率良く・効果的に行うかが探求されて来た歴史は長い.そのため,再発明になることは致し方ないことだと思う.少しマクロ的に見るならば,この探求作業は人類の文明の歴史そのものと言っても良いくらいだろう.

では,ミクロ的に見たとして,文房具や書類の活用術,整理術の場合はどうだろう.これらに関しても,実に多くの人々が様々な試行錯誤によって編み出した技の蓄積があるので,かなりの確率で車輪の再発明であったり,マッシュアップ的なコンビネーション技である場合が多い.

もっとも,最近はデジタル機器やネットワークを取り巻く環境がガラリと変わったせいで,単なる媒体を変えた組み合わせ技が,全く次元の異なる技に昇華される場合もある.また,忘れ去られていた手法が,ある程度のインターバルを経た後に,再びブームになるという場合もある.ロストテクノロジー -それも実に有用な- のリバイバルといった感じに.

今回紹介する書籍は,そういう意味では非常に微妙な感じの本であった.

一応きちんと書いておくと,『車輪の再発明的な部分が多い』と一刀両断するのが本エントリーの趣旨ではない.Amazonのレビューを読んで頂ければお分かりになると思うけど,多くの方が本書に書かれている内容に感銘を受けており,そして評価も高い.また,Amazonのランキングで上位に入っていることからも分かる通り,その影響範囲は極めて広いと言っても良いだろう.

いくら秀逸な手法が存在していたとしても,多くの人に知られていなければ,(残念ながら)存在しないのとあまり変わらない状態になってしまう.そういう意味で,本書が果たした役割は非常に大きいと言える.

しかし,過去に編み出されていた手法ということは,当然先駆者が居るということである.さらには大勢の人の試行錯誤の結果として,当該手法に改良が加えられ,磨きがかけられている場合もある.『温故知新』も重要だ.

本書に書かれている内容を大雑把に要約すると,

  1. ポケット一つの法則
  2. 時系列の保持
  3. 日付情報とタグ情報の作成,テキストデータ化,PC/携帯での管理

といった感じでであろうか.

ポケット一つの法則』は情報管理でよく言われていることだし,『時系列の保持』は『「超」整理法』をはじめとする書籍で,既に広く啓蒙されている手法.そして『日付情報とタグ情報をデジタル管理』に関しては,書斎がいらないマジック整理術で紹介されている書籍を辿ると色々と出て来る.

そのようなわけで,私が『本書に対して感じた新規性はどのポイントですか?』と問われたとすると,骨子の部分ではあまり無かったと答えるかもしれない.しかし,

  • A6ノートを使う
  • チマチマ書かず,バンバン使って数日で使い切って次のノートに行ったらよろしい
  • 写真,資料,チケット,スケジュールシート等何でも貼り込む.A4資料は4つ折り+周りを少しトリミングで貼り込む
  • ポケットは2ページ毎の紙を加工して作る

辺りは『なるほどなー』と唸らされた.

また,風呂場でのメモ術をはじめとするTIPS(ライフハック)も,かなり参考になるものが多い.そして余談だけど,著者が『これだけは欲しい文房具』(用意しておくと便利な文房具)と紹介している物は,『俺発見!』と思ってしまうほど,自分と被っているのに驚いた.

さて,著者が過去に『色々試したけど-』というキャプション付きで,ノートの写真が載っていたのだが,その中にはMoleskine Pocket,Moleskine Reporterが入っていた.

おそらく上記の『資料の貼り込み』や『ポケット』の辺りは,Moleskineの使い方からヒントを得た物だと思う.ただし,Moleskineはページ数が多いこともあり,ベタベタと貼り込むみ過ぎると(ゴムバンドがあるとは言え)膨らみ過ぎて使いにくくなってしまうきらいがある.このような点を,『ページ数の少ない物を使う&廉価なA6ノートをバンバン使い切る』ということでクリアしている点は,『逆転の発想だな~』と,感心した.また,このような理由から,本書で紹介されているような用途には,ページ数の多い無印の文庫本ノート(の厚い方)等は向かない.普通は『少しでも多くの情報を携帯する』ということで,ページ数が多い/収納力の高い物が好まれる傾向があるのだけど,まったく逆だということだ.

では,どういったノートが良いのだろうか.本書に書かれている理由を尊重し,A6サイズのノートで適当なものを(拙宅の文房具倉庫の中から :-))探してみた.

A6n1 KYOKUTOの『KTA6』(40枚/80ページ)の10冊セット.

1冊当たり61円で購入.
A6n2 KOKUYOの『ノ-221B』(48枚/96ページ)の3冊セット.著者が使っているのと同じ.

1冊当たり68円で購入.
A6n3 marumanの『spiral note』(50枚/100ページ)の3冊セット.リングノートとしてファン多し.リングが小さいので嵩張りにくいのも良い.

1冊当たり69円くらいで購入.

この辺りなら合格点だと思う.価格も安い.これならガシガシ使い捨て感覚で使っても勿体無く感じないかもしれない(なお,本当に勿体無い行動は,『勿体無いから』と思って使わないことである).ちなみに,KYOKUTOのノートは,紙質に問題は無いが,製本に若干の不安がある.

ただ,使う人の職業/使い方にも依ると思うのだが,どの程度の関連資料を持ち歩けるかという点に関して考えると,本書で提案されている手法は少々弱点があると思う.また,1つのタスクを完了するまでの期間や,完遂するために必要となる情報量もA6ノート1冊では厳しい場合もある(*1).

(*1)かと言って,打ち合わせのときに『過去の情報を閲覧するかも』という理由でA6ノートを何冊も会議室に持ち込むのは流石に気が引ける.

例えばA6ノートに貼り込める資料には限界がある.『ノートと別に管理したら良い』という話になると,本書の勧める一元管理から逸脱する危険性が出てくる.また,テキストデータ化した,『どのノートに何が書かれているかという』インデックス情報は持ち運べるとは言え,検索の結果『現在携帯しているA6ノートの35冊前のノートに書かれている内容が今必要です』ということが出先で分かったとしても,どうしようも無いわけで….

この問題を解決するためには,必然的に管理・蓄積方式のデジタル化&ネットの利用を推し進める必要があると思われる.この辺り,著者に解決策に関するアイデアをお聞きしたいなと思うのだけど,残念かな,著者はナナロク世代以降の方だけど,デジタルの扱いがやや苦手に感じているような雰囲気が行間からそこはかとなく感じられる.

例えばインデックスとして作成したテキストファイルの扱い方(*2).

(*2)Amazonのレビューにも類似の指摘があったけど,このような構造のデータであれば,テキストデータとして扱うよりも,表計算ソフトやカード型DBで扱った方が良いように思う.

このファイルは適時編集作業を伴うアップデートが必要なのだけど,一昔前の書籍では,『編集は必ず一ヶ所で行うこと.またはオリジナルファイルの入れ物は必ず1つで』ということが書かれていた.このように書かれていた理由は,複数のコピーが同時に存在し,かつ,複数の環境で編集した日には,ブランチや版管理が煩雑で収拾が付かなくなるから.でも,SmartPhoneにコピーが入っていたら,出先の喫茶店で細切れ時間を使って少し整理を…なんてことをしたくなるよね.家に帰ってからDesktopPCで/このUSBメモリ挿してNotePCで編集を…なんて制約があるとキツイ.

私はこの辺りの問題も含めて解決するために,個人的な自分用wikiを上げており,インターネット経由でどこからでも利用できるようにしている.メモはどちらかと言うと一時的なバッファ的に利用しており,必要な情報は適時wikiに転記して蓄積している.今のところそれほど多くは無いけど,ドキュメントスキャナでスキャンしたデータ等も入れている.

そして編集作業はオンラインで行っている.オリジナルデータは必ずwiki上にある=情報を一元管理できるし,Webブラウザが利用できればどこからでも利用できる(無論,ブラウザ搭載の携帯からも).当然ながら全文検索も出来るし,必要であればデータを分類したりカテゴリ分けしたりすることも出来る(*3).

オフラインで利用する等の理由でローカルに落としておきたい場合は,テキストまたはPDFとして保存しておく場合もある.ただし絶対にオフラインで編集は加えないようにしている(編集直後のアップが前提の場合は除く).

(*3)情報整理で『カテゴリ分けしない』理由の一つは,誤ったカテゴリに突っ込んでしまって見付けにくくなったり,そもそもカテゴリ分けする労力が勿体無いからだ.だが,電子的なデータであれば,どこに放り込んでおいても検索可能になるため,デメリットは無視出来る程に小さくなる.むしろ,カテゴリ分けを行った方がメリットが大きい場合すらある.
 例えば『住所録』と『出納簿』を同じ(wiki)ページに書いてもメリットは無く,むしろ別のページに分けて置いた方がアクセスし易くて良いだろう.当然ながらこのようにページを分けたとしても,横断的な検索が出来る.

最後にまとめ的な話をすると,本書は情報管理・蓄積・アイデア醸造の手法に関する入口としては,間違いなく良書だと思う.ただし,著者も書かれているけれど,他人の方法論をそのまま踏襲するのではなく,自分の用途に合わせて アレンジすることにより,自分にとって使い易いものにすることが重要だ.本書を読まれた方には,本書を読んで納得し,書かれていた通りに実践して終わりではなく,その先にあるものも色々と探求して欲 しいなぁと思う.

この辺りの話はまた改めてエントリーを書こうと思うのだけど,本書を読んで得るものが多かったと感じた方は,『アイデアのつくり方』,『知的生産の技術』 辺りを読んでおいても損は無いと思う.これら2冊は古典として分類されるかもしれないけれど,バイブルと言えるものだから.

そして私が今最も注目している&重宝している手法は,PoIChowmマインドマップ (すっかりビジネス書の定番になっちゃったけど…)だ.これらに関しては,また機会があれば改めて書こうと思う.

# リンク張ってくれてありがとう>PoICの中の人

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コメント

この手の話題は、1人1人が違う「個」である以上、全人類がロボットにでもならない限り、「聖書」のような情報管理本は生まれないのでしょうね(笑)。

ちなみに、整理つながりですが、ここ数年、人類の文明から生まれるあらゆるもの、たとえば音楽にしても映画にしても、何にしても「出尽くした=焼き直しになっている」感が強く、悶々としていたのですが、先日、「編集工学」を提唱された松岡正剛さんが、全く同じようなことを言われていて、早速、著書を数冊購入したのですが、興味深いものでした。

残念ながら、まだ編集したあとに生まれてくる「何か」は、明確に現れていないようですが、久しぶりに新鮮な空気を吸った、そんな思いでした。

ところで、tadachiさんは、「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」という本はご存知ですか?

アメリカの調査会社「ギャラップ」の元会長と社員が書いた本ですが、本をよく読んだあと、WEB上のテストを1度だけ受けられる仕組みになっていて、この結果が、なかなか興味深いものでした・・・。

本としてみると、1600円という価格は決して安くはないのですが、テスト付きであることを考えると、悪くはない(笑)。

最後になりますが、私も「マルマン」のリングノート愛用者です。
やはり、リングノートは、1枚1枚が扱いやすいと思うのですが、私の場合は、家計簿と簡易スケジュール帳に使うので、「31行」指名買い!となり、これが意外と作っているところが少ないのです・・・。

あっ! 今、写真を見て気がついたのですが、なにやらtadachiさんはテンキーレスのキーボードを使われているように思いますが、そのあたり、こだわりのほどは如何でしょうか・・・。

私は、本当は欲しいキーボードがあるにもかかわらず、(なつかしの)Gateway製のキーボードが、購入から10年にもなるのに存命の為、購入できず、「早く壊れろ」と、念力を送る日々です。

本体は3年でお亡くなりになったのに、キーボードとディスプレイ(しかも、19インチのCRT!)だけ絶好調って、いったい・・・。

※超長文の為、改行入れませんでした。 すみません。

投稿: との | 2008年4月 6日 (日) 02時00分

>この手の話題は、1人1人が違う「個」である以上、全人類がロボットにでもならない限り、「聖書」のような情報管理本は生まれないのでしょうね(笑)。

そうなんですよね(笑)
実は今一番求められているものは,『整理法の本』ではなくて,『整理法の本の整理本』なんじゃないかという気がしています.個別の手法そのものよりも,それらの繋がりや関係こそ実は重要で,過去に出版/提案された整理法を体系的にまとめることが出来れば,その本質的な物に触れることが出来るんじゃないかなと感じているのですが…

大学の先生が書いた『「超」整理法』は別として,何故か一般書(本書も含む)は参考文献をバサッと削り,その本がどんな位置付けになっているか把握しにくい体裁になっているのが多くて,とても残念に感じています.

# ご紹介頂いた「さあ、才能に目覚めよう」は早速ポチりました(笑).届くのが楽しみ.

それとキーボードの件ですが,拘りまくり(笑)です.
このキーボードはBTC 5100Cという物で,英語配列のメンブレンタイプのミニキーボードです.調べてみたら,'98年に購入してましたが,高価なものではなく,最初は4千円くらい,最終的には2千円くらいでワゴンセールになっていたものも購入しました.

型番で検索すると色々と出てくると思いますが,私もこのサイズ,キータッチに惚れ込んでおりまして,当時3本程予備を購入し,今も使い続けています.HHK等も試したのですが,5100Cを超えるフィーリング(私の感覚とのマッチングですが)を得られるものが今の所見付かっておりません.
5100Cはとっくの昔にディスコンになっており,同メーカーから踏襲した廉価な製品も出ておらず,そして手持ちの品も壊れ始めているので,どうしようかと悩んでおります(結構焦っています).生産性に直結するものですので問題は深刻です…

投稿: tadachi | 2008年4月 6日 (日) 10時39分

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