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2008年1月 7日 (月)

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊

 出版から4年も経っている(2004年刊)にも関わらず,未だに本書に書かれているのと同じ轍を踏んでいる会社が多いような気がする.

 やはり『人は石垣人は城』だし,企業でこれを維持するのは人事制度に他ならないであろう.

 ご存じの通り,日本企業は終身雇用で年功序列という人事制度で長い間来ました.ある程度安定した企業に入社出来れば,今はしんどくても頑張っていればそのうち報われる/楽になるって感じの平和な制度とも言えると思うのですが,しかしこの制度は理想的な永久機関ではありませんでした.会社が大きくなり続けて雇用が増大し続けている間は問題ありませんが,業績の悪化等に伴って雇用を絞り始めると,途端に様々な問題が発生します.まぁ所謂年金システムが抱える根源的な問題と同じですな.理想的にはピラミッド型を維持しないといけない.下の層が居なくなった/小さくなった瞬間に危機に陥る.まるでネズミ講のように…

 本書では,『富士通』という名の通った巨大企業が,業績悪化が切っ掛けになり,『終身雇用』という人事制度をを大幅に改革した結果,どのようになったのかということが生々しく語られています.おまけに著者は,制度に翻弄された一般社員側ではなく,制度を作り,使う側の人事部門の人.著者や新制度の被害者(?)の恨み辛みが,ページの各所より滲み出て来るようなドロドロした本です.

 本書に書かれていた,富士通が採用した制度を要約すると,以下のような感じ.

  • 期の始めに各人に目標を書かせる&管理者と面談
  • 期の終わりに当初の目標の達成度を確認&管理者と面談
  • 達成度に応じて各ランクに分類.なお,各ランクには全体に占める人数の割合が予め定められている
  • 各ランクに応じて給与を増減

 一見マトモそうに見えるけど,この制度をそのまま運用するとエライことになります.詳しくは本書を読んでみてください.やはり評価するのもされるのも人といった所か…

 私は富士通の中の人ではないので,本書に書かれていることは基本的には他人事なわけだけど,私が勤める会社でも数年前に『成果主義』ということで人事制度改革が行われました.現状を見ていると,本書の内容に頷く部分も多い.案外,本書に書かれているのと全く同じような人事制度を現在もやっている会社は多いんじゃないかな.

 改めて書く必要も無いと思うのだけど,この手の制度は往々にして『人件費の抑制』のために行われており,そして制度的には『評価者が必ずしも正しく評価出来るわけではない』ことに問題があるように思う.

 特に後者は深刻で,大きな企業になるほど,決定権を持つ最終評価者が評価対象の各人の顔はおろか仕事内容も知らないし,場合によっては(報告)書類に書かれている内容すら理解出来ないこともあるだろう.そして『見える化』のために数値化を行うにしても,直接利益をもたらすことのない部門はどう評価すれば良いかの判断に困るだろうし,ましてや,異なる評価尺度を並べられたときに(例:片方は金額ベースの営業成績,片方は発表論文数等),いかにして優劣を決め,そしてどのように客観性や説得力のある説明を加えられるのだろうか.非常に難しいと思う.

 ちなみに本書が出版された後,富士通の人事制度は様々なアレンジが加えられたと聞くし,社長がこの件に関して全社員にメールを流したという話も読んだことがある.そりゃもちろん実施前に検討し尽くし,間違ったことは最初からしないのが一番だろうけど,間違ったらそのことを認識し,良い方向に変えていくということは大切だろう.そういう意味では,何事に関しても,Plan-Do-See というサイクルをうまく回すのは非常に重要で,著者が愛していた富士通はギリギリのところで踏ん張っており,完全に死んではいなかったと言っても良いのではないんじゃないかなという気がした.

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