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2007年10月 3日 (水)

福知山線5418M 一両目の真実

たまたま『あの』福知山線の一両目に乗車し,あの痛ましい事故に遭遇し,そして幸いにして生還した人の目から見たあの事故.

 2005年4月25日に発生した『あの』列車脱線事故のことを覚えている人は多いと思う.この日,私は家を出る前にテレビを点けたら速報が流れており,流れはじめた『列車が信じられないような形になっている』映像を食い入るように見た覚えがある.そして出勤後,その電車を使っているであろう人の席まで行き,無事出勤していることを確認してホッとしたりした.

 最終的に乗客106名,運転士1名の死者を出したこの痛ましい事故は,単なる脱線事故ということで終わらず,様々な所に波紋を広げた.そしてこれまであまり知られていなかった問題をも芋蔓式に引きずり出し,白日の下に晒したりした.

 

wikipediaの記事を読めば,事故後も含めた経過等,様々な情報を得られる.個人的には,この事件を通じ,JR西日本の企業体質や,居合わせた同社社員のモラルに対して非常に大きな疑問を持った.また,今ひとつ腑に落ちない所のある報告書にも少々疑問を感じている.



 そして本書は,マンションに突っ込み,凶暴な力によって飴のように貼り付いてしまった『あの』1両目に乗っており,奇跡的に生還した方が書かれた本.最初は何故あの電車に乗り合わせたかの話から始まるのだが,私がたまたまそこに居合わせても違和感を感じないようなごく普通の日常的な光景に思える.そして事故発生.事故直後の列車内は目を覆うばかりの惨状である.著者の表現能力のうまさもあり,写真など1葉も無くても,その痛ましさは伝わってくる.いや,正確には,私が想像できるのはせいぜい実際の数百万分の一程度であろうけれども.

 刻々と変化する状況を読み進めるにつけ,最終的に救出されることが分かっていても,「ガンバレ!」と,心の中で叫んでしまう.そして列車から救出されたときの開放感と安堵感.その後の病院での憤懣やるかたない気持ちすら著者と共有出来てしまう.

 文章は比較的冷静に,かつ淡々と書かれているのだけど,その裏にある感情が滲み出し,文字を追うことにより直接心に染みこんでくる感じだ.実際に体験した人が書いていることによる迫力なのかもしれないが,感情を非常に強く揺り動かされる部分が多い.

 また,本書は単に体験を書き連ねたという性質の本ではない.著者は廃線跡を廻る旅を趣味としており,列車に対する造詣も深い.そのため,詳しい人ならではの事故に対する考察や事故防止に対する提言も書かれている.

 事故のことは,ともすれば時間と共に話題に上らないようになり,風化してしまうのかもしれないが,私も著者と同じように,努めてJR西日本の今後を見ていこうと思う.

 なお,本書の内容は,Web上でも読むことが出来る.ただし,本書の印税は交通遺児のために寄付されるとのことだ.



 余談だが,昨年たまたま仕事で乗った北陸線で,つんのめるような急速な制動や激しい振動,異音に見舞われたときには流石に恐怖した.鹿をはねたけれども走行に支障はないとのことで,10~20分程の停車の後に再び動き出したのだが,完全に停車するまでは生きた心地がしなかった.

 普段は殆ど考えることは無いのだが,日常生活の中で,「他者」に自分の命を預けているシチュエーションの何と多いことか.そしてその「他者」がどのような人なのか,どのような組織で運用されているのか,何かあったときにどのようになるのかに関して,あまりにも知らないことが多い.

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