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2007年9月22日 (土)

裁判官の爆笑お言葉集

数ヶ月前に話題になった本.読了後時間が経ちすぎていたのでエントリーを書くのを躊躇っていたのだが,実は今が旬な話題のような感じもしてきた.

 弁理士とは仕事の関係で顔を合わせる機会が多いが,弁護士や検事,裁判官が関係するようなヤヤコシイ話になったことは今の所無い.幸いなことである.しかし,善良な一市民として慎ましやかな生活を続けていれば一生無関係かというと,必ずしもそうではないだろう.確率としては必ずしも高くはないと思われるが,自動車事故と同様,自分に非があるか否かにかかわらず巻き込まれてしまう場合もあるだろうからだ.

 法曹界の人に身近に触れたり,その世界の中を垣間見るこ機会は私の場合はこれまで皆無に近かったわけであるけれども,最近はそうでも無くなってきた.裁判が「判決」としてではなく,弁護人の「弁護プロセス」が何かと世間を賑わせることが多く,マスメディアに採り上げられることが多くなってきたのが原因だ.

 放送局は視聴率を上げるという目的があるので,様々なバイアス,例えば「つまらないことでも面白おかしく/激憤を感じさせるべくトコトン派手に見せる」という編集・演出を行っていることもあるので,意味解釈には注意が必要である.しかし,そういった点を考慮した上でも,どうも「あちら側」の方々の感覚は私(/私達)とは違うのかなぁという違和感を感じることがある.違和感というのは,所謂「先進的文化人」とかいう思想的なベクトルではなく,思考プロセスに近い所で.

 無論,話題になるのは特異なケースの場合が多いので,私が違和感を感じているのは,法曹界の一部の人に対してであるとは思うが.

 法曹界の方は流石に賢い方が揃っているので(皮肉ではない),非常に専門的に深く論理を構築していることが多いように思う.でも,少し引いて見てみると,「そこではなく,もっと他を掘るべきでは?」とか,「こっちのことを忘れてませんか?」とか,「話が噛み合ってませんよ」と,思うときがあるんです.無論,何らかの駆け引きや結論を出すために,意図的に為されているのかもしれませんが.例えば弁護対象の利益のために,荒唐無稽で非論理的な主張をせざるを得ない場合があることは理解できるし,有利な土俵で戦うために,わざと論点をずらしたりすることも作戦としては分かる.でも,局所的には弁護対象の利益になっても,全体的には不利益になる場合があるのではないかとか,弁護士の誘導/入れ知恵がどこまで許されるんだろうかとか,色々と考えさせられることは多いのです.


 閑話休題

 司法の中の人(元,中の人含む)等が著した書籍はいくつかあるが,私が知る範囲で書くと,何らかの問題提起であったり,裏事情の暴露である場合が多い.美辞麗句に彩られた自画自賛の一般書など誰も読みたくもないであろうから,この方向性になるのは納得が行く.そして大抵の場合,諸々の問題の原因は「世間知らず」というところに帰着する.関係者/同業者ばかりの環境の中で純粋培養し,おまけに外界との接点が少ないため,世間一般の感覚から乖離していくという話に行き着くのである.あと,「とにかく激務.忙しい」という話も共通して語られている.

 普通の会社でも,勤めを続けることにより会社のカラーに染まる部分はあるわけで,この説明は納得が行く.何が正義であるかとか(倫理観),何をどのように考えるべきかとか(思考プロセス),行動規範とかも,こういった環境から大きく影響を受けるんでしょうな.おまけに激務で疲労困憊している状況では,何事も無批判で受け入れやすい状況に陥りやすい(逆に攻撃的になる場合もあるけど).そんなわけで,仮に世間一般の考えと異なることであったとしても,それを是とする環境で長期間生活していたとすると,染まってしまう可能性は否定できない.どのような組織であったとしても.

 で,話を戻して本書に戻ると,人間として非常に純粋な部分がそのまま出てきたような言葉も多い.普通の人は人を諭すときにも気恥ずかしくてとても言えないような言葉も出ており,ある意味清々しい.こういったところには,(良い方向での)「純粋培養」という言葉が妙にピッタリ来くる.

 ご存じの通り,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」,所謂「裁判員制度」により,今後は密接な関係を築く可能性があるかもしれないわけで,これまで無関心であった人も,あちらの世界や人達にも関心を持っておいた方が良いかもしれない.

 そういう意味では,本書は非常に読みやすく,裏読みするととても深い部分もあるので,とっかかりとしては非常に良い本だと思う.

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