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2007年7月16日 (月)

異端の空

秋水,零戦(零式艦上戦闘機),ユングマン,零式水上観測機,二式大艇,研三,震電.

 全て航空機の名前だと分かったとしたら,結構知っている人.6機以上ピンと来たたら結構マニアな人.表紙を見て『これは絶対買わねば』と思ったら,かなりディープな人ではなかろうか.

 本書は,ある程度マニアの人対象に旧軍機で人気投票をしたら,上位を独占しそうな機体の話のみで構成されている.日本人であれば『零戦』は大半の 人が知っていると思うけど,それ以外の機体も非常に(特殊な?)ファンが多い.秋水は初飛行時に墜落しているし,震電は数回の試験飛行のみしかしていない 等,実戦で活躍していないのにも関わらずである.

 少々マイナーなユングマンと研三,メジャー過ぎる零戦を除いて簡単に紹介すると,以下のような感じ.

秋水 日本の潜水艦である伊29がドイツから持ち帰った『メッサーシュミットMe163(コメート)』の資料の一 部(大半は海没)を元に開発されたロケット戦闘機.当時の日本は加給機を製造する技術力が無く,空気の薄い高空で満足な性能が発揮できるエンジンを開発す ることが出来なかった.そんな中,燃料は僅か4分しか持たず,燃料が切れた後はグライダーのように滑空で基地に戻らざるを得ないが,最高速度800km/ 時,1万メートルまで約3分で到達という予定性能から,秋水はB29迎撃の切り札と期待されていた.
 『1945年7月7日午後4時55分…。日本発のロケットは陰りはじめた空に離陸した』(帯より引用)

零式水上観測機 元々は戦艦のカタパルトから発艦し,弾着観測を行うために開発された航空機.レーダーが実用化される前の艦隊決戦で は,各艦はまずは試射を行い,上空に待機している観測機から『近い』『遠い』『もうちょい右』のような感じの連絡をもらって照準合わせをした後に全力砲撃 に移るのが一般的であった(ちなみに日本帝国海軍では大口径砲徹甲弾は着色弾にしていたため,外れた際の水柱には色が付いた.また,区別可能なように艦毎に色分けされていた).また,敵機の迎撃に遭う可能性もあるので,そこそこの空戦性能も求められていた.が,零式水観に求められ,また,実際に付与された性能はそんなものではなかった.複座(2名乗る),フロート付き(海上で離発着出来るようにするための浮舟)でおまけに複葉機という,一見時代遅れかつ鈍重な機体に見えるが,偵察だけではなく,敵戦闘機の格闘戦や爆撃までこなした.戦闘機のほか,零戦でさえ撃墜が困難であったB17の撃墜記録まで持っている.

二式飛行艇 胴体が船のような形をしており,洋上から離発着が可能な『飛行艇』と呼ばれる機種に分類される機体.日本で数少ない4発 機(発動機を4つ持つ機体).九七式飛行艇の成功を受け,より高性能を求められた機体で,当時の列強の水準を凌駕する性能を持っていた.全長28m,全幅 38m,自重約18t,航続力は22型で8223kmもある.偵察,爆撃,輸送等に従事していたが,魚雷を積んでの雷撃も可能なように設計されていた.

震電 前翼型と呼ばれる特殊な形をしており,通常のレシプロ機とは逆に,プロペラが機体の後ろに配置されている.その近未来的なフォ ルムのため,一目見たら忘れられないであろう.本書表紙の写真はこの機体.最高速度750km/時を期待されており,秋水と共にB29迎撃の切り札と目さ れていた.一見ジェット機かと思うような独特の形,重武装,高性能(ただし,期待されていたスペックでは…であるが)のためファン多し.数回の試験飛行は 行われたが,全力飛行する前に終戦に.

 マニア垂涎の機体の話を集めた書籍であるなぁ…と,よく分かると思います.よくまぁここまで集めて下さいました.

 で,内容はというと,関係者のインタービューや史料等を元にし,諸々の経過や現実の姿を明らかにしていくといった感じで書かれています.ある意味,仮想戦記的な痛快なものを求める人にとっては少々物足りないかも.ただ,中々お目にかかれない話やエピソードは山盛りです.

 個人的に印象深かったのは,秋水の試験飛行等に,さる新興宗教の神託が司令を通じて重大な影響(墜落の遠因と呼べるほどの)を与えたこと.そして 秋水墜落の直接的原因となった燃料タンクの構造は,組み立てミスではなく,設計段階からそうなっていたものであり,これが設計ミスか仕様かは未だに議論が あるという話.また,震電の(途中まで)殆ど一人の熱意で開発が進められていたというエピソードも非常に興味深かった.そして,搭乗員採用時に観相学によ る手相の見立てが重視されていたという小話も驚きでした.

 光人社NF文庫は大抵読んでいる私ですが,文春文庫にこういった良書(シリーズ)があったとは最近まで知りませんでした.搭乗員の自叙伝とはまた違った面白さがあります.

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コメント

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投稿: シマコ | 2007年8月 2日 (木) 01時13分

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